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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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かくしておいたの

「あー!!アッポ落ちてる!!!」


 次の日、朝一番に真っ先に庭先に出たクルカラの悲痛な叫び声が辺り一面に響き渡った。


 僕とオープルもその声につられて急いで小屋から飛び出すと、アッポが何個か地面に転がっているのが見えた。


 昨日熟していたのを採り逃したのかもしれない…朝からしょんぼりとした気分になってしまった…


「びっくりした…クルカラ、大丈夫よ。セラとオープルも悲しそうな顔しないで。あれは今日のデザートね」


 !!


 そうだ、落ちてもその日のうちに食べればいいんだった。


 僕達3人は転がっているアッポの元まで走っていき、それぞれ回収してきた。真っ白のアッポが朝露に濡れて光っており、とっても美味しそうだ。


「朝ごはんにアッポでるかな?」


 食いしん坊のクルカラらしいつぶやきだったが、まぁ朝からは出ないだろうな。デザートが出るのはいつも夜ご飯の時だ。


「ふふっ。朝ご飯の時は出ないわね。さあ3人とも、拾ってきたアッポは落ちた用のカゴに入れて来てちょうだい。朝ご飯が冷めてしまうわ」

「「「はーい」」」


 その日からアッポの収穫が本格的に始まった。


 1つの木に3つハシゴをかけて、全方位から一気に収穫を進めていくようだ。みんな揺らして落とさないように慎重に収穫を進めている。


「プツッてとれた!!」


 ちょっとクルってしただけでほんとに簡単に採れてかなりビックリした。

 これじゃ少し揺すっただけで落ちるのも納得だ。


 僕とクルカラもハシゴに登らせてもらって思う存分収穫を楽しむ。


 こっちのアッポをクルッ、あっちのアッポをクルッ…あ!!また採れた!!


 昨日他の女の子たちが収穫していた時よりもだいぶ熟してきたのか、かなりのハイペースで当たりを引いている気がする。


 とはいえ僕達は背も腕も短いのでアッポを入れる腰に下げたカゴを下の人に渡すことが出来ず、3個収穫したら降りて次の人に交代することになったけど。


 みんな食べるのも好きだけど、自分で収穫するのも大好きなのだ。


「早く早く!!」

「そこっ!!木に寄りかからないで!!アッポが落ちちゃう!!」

「早くかわってー」

「わわっ!?アッポ落ちてきた…」


 ハシゴの下は交代待ちの少女達がひしめいていて熱気がすごかった。


 オープルはというと、昨日ハシゴに登ったのがよほど怖かったらしい。ハシゴに登るのを首を横にブンブンして断固として拒否していた。


 かわりに今日はビグルミの収穫と、揺れて落ちてしまったアッポの回収に精をだしている。


 近くに落ちたアッポを走って取りに行き、大事そうに両手で抱えて落ちたアッポ用のカゴに入れに行く姿はなんとも可愛らしいものだ。


 ちなみに白い実だけじゃなく赤い実の方もよく落ちるのだが、そっちはアッポの木の近くの見晴らしのいい所にまとめて置いている。


 こうしておくと、ちょくちょく鳥たちが回収していくらしい。



 そんな収穫日和で穏やかな日々を過ごしていたある日の昼過ぎ。


 僕とクルカラは今日のハシゴを使っての収穫(アッポ3個)を午前中に早々に終え、暇を持て余していた。


 日課のお花も書き終えたし、収穫もしたし、走り回って遊んだ。


 息を切らしながら次は何をしようかと話をしていたところで、見晴らしのいい所に集めておいたアッポの赤い実が目に留まり、休憩がてら寝転がりながら色鮮やかな赤色のアッポと時折飛んでくる鳥達を何となしに眺める。


 今日も鳥たちは近くで寝転がっている僕達を警戒することもなく近付いてきて、アッポの赤い実のヘタ部分を咥え嬉しそうに何処かに飛び去っていく。


 …あの鳥達は壁の外から来てるんだよな…外はどうなっているんだろう。


 周囲には少女達の楽しそうな声が溢れているが、耳を澄ませてみると遠く壁の外から人々の威勢のいいかけ声や笑い声が少しだけ聞こえてくるのだ。


 たまにガラガラと荷車か何かを引いているような音もする。


 早かったり遅かったり。


 その時々によって色々音が違うので、人力の荷車かな?馬か何かで引いている馬車かな?なんて考えたりしている。


 想像することしか出来ないからね。


 …それにしても…平和だなぁ…


 日に日にふくよかになっていく鳥達をぼんやりと見守りながら、あの鳥は食べられるんだろうかとぼんやりと考えていた時、オープルが周りを気にしながらコソコソと近づいてくるのが見えた。


 どうしたんだろう?



 僕とクルカラの隣に寝転がったオープルは、どこか真剣な表情で少しモジモジしている。


「…セラ、クルカラ」

「…なぁに?」


 オープルが小声で話しかけてくるので、つられて僕も小声になってしまった。


「…あのね、みんなにはナイショなんだけどね」

「…うん」


 内緒話か。なんだろう…今まで内緒話なんてしたことないかもしれない。…いや、あったな。クルカラがイタズラしようとするのをジュリにチクったことがあった。


「…あっちの木のうしろに、赤い実をかくしておいたの」


 !?


 それまでちょっとウトウトと眠そうにしていたクルカラの目が見開かれ、勢いよくガバッと顔を起こす。

 周りをキョロキョロと気にしながら、クルカラも会話に参加してきた。


「…いつ隠したの?」

「…朝ごはん食べたあとに、みんなハシゴのぼるじゅんばんきめてたでしょ?あのときに落ちてる赤い実をかくしておいたの」


 あの時か!


 確かにみんなでわいわいしながら、これから収穫する木の上のアッポをみんなが見ていた。

 確かにあの時なら誰にもバレないかもしれない。


「…オープル、おてがら!」

「…いくつあるの?」

「…3つ」

「…みんなのぶん?」

「…うん」


 思わずクルカラと顔を見合わせる。


 たぶん僕も笑顔が隠しきれてないと思うけど、クルカラもすごい笑顔になってる。

 クルカラはよほど嬉しかったのだろう。僕を巻き込みながらオープルにぎゅっと抱きついた。


「オープル大好き!ありがと!!」

「しー!こえおっきい!」


 ハッとして周りをキョロキョロする3人。

 何人かこっちを見てクスクス笑っている子達がいたけど、すぐにアッポの収穫に戻っていた。


 あぶないあぶない…


「…見つからないうちにはやくいこう!」


 クルカラはもう我慢できないようだ。もちろん僕もだけど。


 3人でコソコソと立ち上がり、赤い実を隠したという木の所まで「こっちこっち」とオープルに先導されながら、少し屈んで音を立てないように移動する3人。


 …目立たないように無意識にみんな屈んで進んできたけど、傍から見たら逆に怪しい気もする…


 まぁいいか。


「…だれもついてきてない」

「…え…見てなかった…」

「…わたしも…」


 …2人とも赤い実が気になって周りを気にしてなかったらしい。今更になって辺りをキョロキョロ見回している。


 でも大丈夫。僕がちゃんと気にしてたからね。

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