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私はジュリ

ここから少しの間、金髪の少女・ジュリの視点となります。

(金髪の少女・ジュリ視点)


 私はジュリ。今年で12才になる。


 孤児として孤児院で過ごしていたけれど、将来美人になりそうだと言われてこの娼館・小鹿亭に引き取られてきた。


 私だけじゃない。

 ここにいるのはみんな、孤児院から引き取られてきた子ばかりだ。


 小鹿亭は女児専門の娼館で、5才から12才までの女の子たちがいる。そして13才になると同時に、大人専門の娼館へと移動するのだ。


 女児専門の娼館に限ったことではないけれど、娼館はそれぞれ6つにランク分けされている。


 庶民向けの最低級、庶民向けだが少し高級志向の低級、商人や実業家などそれなりにお金を持っている人達向けの中低級、小金持ちの商人や下級貴族向けの中級、中級貴族向けの上級、上級貴族と王族専門の特級。


 私のいる小鹿亭は中級ランクで、小金持ちの商人や下級貴族向けの娼館らしい。



 娼館の娘は最終的にお貴族様に見初められて買われていくのが1番の幸せなのだけど、私にもそういうお相手がいる。

 私が8才の頃から何度も指名してくれている中級貴族のジンムカ様だ。


 ジンムカ様は私の知らないことを沢山教えてくれる、とってもすごい方なのだ。


 そんなジンムカ様でも私を買おうと小鹿亭のオーナーに交渉したところ、恐ろしいほどの大金が必要で、とてもじゃないがあんな金額は用意できなかったととても悲しんでいた。


 私は今まで買われていく子を見たことはないけれど、女児専門の娼館から娘を買う場合、大人専門の娼館の女性より金額が驚くほど跳ね上がるらしい。そして基本的に女児専門の娼館では上級や特級ランク、または低級や最低級ランクの娘しか買われないそうだ。


 上級、特級ランクは大貴族や王族の愛人として。低級、最低級は小金持ちの商人の愛人や、一般庶民の嫁候補として買われることもあるらしい。


 一方で大人専門の娼館では一部の例外を覗いて、年齢を重ねるほど金額は下がるそうだ。


 ジンムカ様は私が大人専門の娼館に移って手の届く金額になったらすぐ迎えに来てくれると約束してくれた。


 私の人気が出て競争相手が増えると困るから、どうか他のお客様には無愛想にする様に頼まれた事もあるけれど、そうゆう訳にもいかないのでジンムカ様にはいつも謝ってばかりいる。

 ジンムカ様は私のそうゆう素直な所も良いと仰ってくれるけれど、お客様によっては怒って暴力をふるう人もいるので注意しないといけない。


 ジンムカ様と同じように、私を買いたいと言ってくれるお客様は結構いるのだ。


 私も他の子たちと同じように5才でここに連れてこられ、これまでたくさん男の人の相手をしてきた。その中でもジンムカ様は1番優しくしてくれて、いろいろなお話をしてくれる。この人とずっと一緒にいたいと思う。


 私にとって特別な人。


 大人になったらどうか、早くジンムカ様が迎えに来てくれますように…



 今日は誕生日で、みんなの年齢がひとつ上がる日。

 そして1番上の姉さま達が大人専門の娼館に移動する日でもあり、新しい子たちが小鹿亭に来る日でもある。


 みんなの食事におかずが1品増え、いつもよりちょっぴり贅沢ができる日だ。

 それと同時に、近いうちに良くないお客様が来るとわかっているから、毎年不安が忍び寄りはじめる日でもある。


 今日から私は12才、小鹿亭では1番上の姉さまだ。私の他にも同じ12才の子はいるけれど、お客様からの人気の順で私が1番上の立場になるらしい。


 今年はどんな子が来るんだろう?みんなとても楽しみにしているけれど、私は不安のほうが強かった。


 お姉さま方を見送ったあと、今日はお客様が来ない日なのでみんなでお庭にでて追いかけっこして走ったり、大きな声でおしゃべりしたりとみんな大騒ぎだ。


 私も不安を消してしまいたくて、いつもより目一杯はしゃいで遊んでいっぱい笑った。


 お客様がいる時は部屋から出てはいけないし、騒いでもいけない。一日中お客様がいない日は珍しくて、それだけでもちょっと楽しい気分になる。


 しばらく遊んでいると、世話人と呼ばれている大柄な男の人が新しい子たちを連れてきた。

 毎年3人から6人ほどが連れられてくるけれど、今年は3人みたい。


 1人目はクルカラ。ショートにした茶髪に茶色い目、少し痩せているけれど興味津々にあちこちを見まわしていて、活発そうな笑顔をしている。


 2人目はオープル。ピンク色の髪に薄ピンクの目、ちょっとぷっくりした身体つきで、可愛らしい顔つきをしている。みんなに見られて恥ずかしいのか、照れているみたいだ。


 3人目はセラ。珍しい黒髪?と思いよく見たら濃い紫髪のようで、胸まで伸ばしている。薄い黒に近い紫の目をしていて、初めて見る色だった。小柄な体つきで不安そうだけれど、がんばって笑顔を作ろうとしているのがわかる。


 …もうわかってしまった。


 今年の犠牲者は、セラだ。


 私は胸が苦しくなったけれど、変わってあげることはできない。

 せめてその日まで精一杯優しくしてあげよう。

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