娼婦としての才能
※世話人視点になります。
※男性の性的な表現があります。苦手な方はご注意ください。
※少し残酷な表現があります。苦手な方はご注意ください。
思い出すのは、小鹿亭に来たばかりの頃のぎこちないセラの笑い顔だ。
あのバカ貴族に対応できるように見た目がそこそこよくて我慢強い者を採用するため、軽く髪を引っ張り恫喝するような面接をして、1番耐えられそうな者を選んでいるらしい。
全ての孤児院にあるあの絵本の王子様にでも憧れたのか、俺と同じように少しでもいい生活がしたかったからなのか。怖かっただろうに、セラは見事中級である小鹿亭への就職をもぎ取った。…いや、選ばれてしまったというべきなのか。
まぁ記憶をなくしてしまった今となっては過ぎた事だ。これからの事を考えなければならない。
朝食の後にジュリにオーナーの言葉を伝えると案の定しぶい顔をされたが、覚悟はしていたのだろう。ジュリは自分も側に控えて教えると言い出した。
セラとしても1番信頼しているだろうジュリが一緒に教えてくれるなら心強いはずだ。実際、初日は相当困惑した様子だったからな。
セラがずっと困り顔で練習しているのを見て、慣れている筈の俺まで心苦しくなったものだ。
2度目からはセラも多少慣れてきたようで勉強は順調だった。俺はほぼ見ているだけだったが、セラも安心してジュリから教えを受けている。
しかし、客の相手をする時はセラは1人で、男の相手をする事になるのだ。いつまでもジュリが相手では、本当の意味での練習にはならないだろう。
そう思いジュリに出ていくように行ったんだが…説明が足らな過ぎたようだ。ジュリが激しく抗議したせいでセラまで怖がってしまった。
ジュリと一緒に説明して何とかセラには納得してもらえたようだが…練習の相手はジュリがいいと駄々をこねられてしまった。俺の事は断固拒否だった。
…悲しくなんて無いさ。落ち込んでなどいない。
今はセラがしっかりと働いて行ける様にするのが最優先だ。
練習道具を装着したジュリを相手に、セラはいつもと違いなんだか楽しそうに練習しているのが少し…モヤモヤとするが。
…しかも上手い…
玉を切られてから殆ど興奮することの無くなった俺のアソコが反応するのを感じて、困惑と焦りと共に我に返った。
どうやら俺は、セラが棒を美味そうに舐めしゃぶり、相手を性的に挑発するような目線、色気を纏ったその表情に思わず見惚れていたようだ。
そしてセラの相手がジュリではなく、俺だったら、と。そう考えていた事に驚愕した。
確かにセラに教えたのは、小鹿亭の1番の稼ぎ頭であるジュリだ。
だが、まだ教え始めてからたった数回だぞ。教え方が違うだけでここまで成長に差があるものなのか…いや、それは違うか。
俺が思わず見惚れてしまった事からしても、ただ棒を舐めるという点においては、セラの実力はおそらく大人顔負けだろう。
だがそれは、信頼していて好意を持っている者が相手であった場合限定だと考えるべきだ。
しかし僅か5才で相手が限定的であるとはいえ、これだけできれば充分過ぎるほどだろう。今でこそ小鹿亭で1番の稼ぎ頭になったジュリだが、7才の頃の勉強ではここまで相手の欲情を誘うような表情などできなかった。
セラには間違いなく娼婦としての才能がある。
誰が相手でもその実力を発揮できるようになれば、ジュリにとってのジンムカ様のように、セラにもいい貴族の身請け先が見つかるかもしれない。いや、むしろ奪い合いになるんじゃないか…
そんな思考に気を取られていて気付くのが遅れてしまったが、いつの間にやらジュリの様子がおかしくなっていた。
セラがげほっげほっと咳込んでいるのをジュリは楽しそうに、まるで良い金蔓を見つけた悪徳娼婦のような、欲に濡れた怪しい表情で先を急かしている。
…これは不味いやつだ…
ジュリがセラの事で度々暴走するのは知っていたが、今回は今まで見てきた中でも特にヤバい気配がしている。
案の定落ち着けと声をかけると、今まで見た事がないすごい表情で睨み付けてきた。が、セラに怖がられるぞと付け加えると我に返ったようだ。さっき俺がセラに断固拒否されていたのを思い出したんだろう。
まったく…嫌な事を思い出させやがって…だがまぁ、これでジュリも少しは反省しただろう。
予定の時間にはまだ少し早いが、今日の練習はもう充分だろう。…と思ったんだが、ジュリから泣きのもう1回が入った。
ジュリにまた暴走されては堪らない。ダメだと言おうとしたが、俺が答える前にセラが承諾してしまった。
セラ…今のジュリがなんかヤバそうだと分からないんだろうか…まだ5才のセラに気付けと言う方が酷か…ジュリが暴走しないように見張っておかなければ。
とはいえジュリは座って大人しくしていると言うし、大丈夫だろう。
…と思っていたんだが。
「ジュリ!もう終わりだ!」
「うるさい!今いい所なの!!」
「セラが苦しんでるんだぞ!?」
「まだ大丈夫!!邪魔しないで!!」
何がまだ大丈夫だ!全然大丈夫じゃない!!
セラの頭を掴み激しく上下に振りはじめた腕を無理やり引き剥がそうとしたが、力では叶わないと思ったのかジュリはセラの髪をがっしりと握りこみやがった。
激しく振られる手元からブチブチと嫌な音が聞こえる。
クソっ!どうしたらいい!?
そもそも世話人は必要に迫られた時を除いて少女達に触れる事を禁止されている。傷つけるような事など論外だ。
ジュリに落ち着くようあれこれ言うが…もはや俺の事など見えてないようだ。
とうとうセラが白目を剥いて痙攣し出したのを見て、それでも手を緩める気配すら無いジュリの様子にこれはもう無理だと思った。このままではセラが死ぬ。悠長に声をかけてるだけじゃ手遅れになる。
…殴れば正気に戻るだろうか。いや、手を出すのは本当の本当に最後の手段だ。
「ジュリ!!!セラを殺す気か!!??本当に死ぬぞ!!!セラが死ぬぞ!!!本当にいいのか!!??」
頼む…!正気に戻ってくれ…!!
俺の願いが通じたのか、セラの死んだ様に失神している姿をようやく認識できたのか。
ジュリがやっと手を止め、目を見開いて唖然としている。
「とにかく口から抜け!!手を離せ!!」
急いでセラを引き離し寝かせる。僅かにだが息をしてくれていた。よかった…本当によかった…
セラはかろうじて生きてはいたが、姿は大変なことになっている。顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだし、喉の奥を突かれ過ぎて吐いた挙句、吐きながらもずっと突かれ続けたのだろう。服が嘔吐物でびちゃびちゃになっていた。おまけに失禁までしている。
ジュリの服は…こっちもダメだな。腰から下が完全に汚れてしまっている。
俺は怒鳴り散らしたい気持ちを懸命に殺し、静かに、なるべく息を整えてからジュリに話しかけた。
「…ジュリ、言いたいことは色々あるが、まずは後片付けだ。服は洗わなければいけないから、ひとまず脱いでくれ。それから、セラの身体を綺麗にしてやれ。…できるか?」
「…できる…」
ジュリは…自分がやってしまった事に相当ショックを受けたんだろう。まるで目の前の光景が信じられないとでも言うような愕然とした表情をしている。
…ショックを受けるくらいなら初めからやるなよと思うが、飲み屋や娼館では気が大きくなり何事もやり過ぎてしまうというのはよくある事だ。
ジュリがこれ程までに暴走するとは予想もしてなかったが…酒を飲んでもいないのに…本当にどうしてこうなったんだ…
セラの服を脱がせ、軽くタオルで拭いてからベットに寝かせてやる。ジュリも服を脱いだ後に軽く下半身と足元を拭いてやりベットに避難してもらった。床はセラが失禁してしまった事で水たまりになっているのだ。
…いや、この状況で『セラがしてしまった』というのは可哀想過ぎるか。




