私たちを守るために
※ジュリ視点になります
※このページでは悲しい描写があります。
苦手な方はその次のページへ飛ばしてしまっても物語の内容的にはあまり影響ないかと思います。
次の日の朝ご飯の時間になってもセラは目を覚まさない。
私はみんなが朝ごはんを食べ終わるまでセラを見ていると言ったのだけれど…
「お前は1番上の姉さまだ。いいか?お前はセラのことだけじゃなくみんなの事もちゃんと見なくちゃいけない。そしてみんなの見本になるような振る舞いをしなくちゃいけない。それにセラはずっと見ていなきゃいけないわけじゃないんだ。…心配なら早く食べてセラの元に戻るといい。いいな?」
そう言われてしぶしぶ世話人について行って朝食をとる。
ちなみにセラの側にはクルカラがついていて、目が覚めたら教えに来てくれるらしい。
「クルカラは1ばんしたのねえさまだから、ジュリとちがってセラのことみてるー♪」
そう宣言して、世話人にため息をつかれて無視されていた。
むぅ…私も1番上の姉さまじゃなければ…でも1番上の姉さまだったからセラを連れていかれなくて済んだわけで…むむむ。
悶々としながら急いで朝食を食べていると、クルカラが何かを大声で言っているのが聞こえ、すぐに食堂の扉が勢いよく開かれた。
「ジュリ!!セラ起きた!!」
私は掴んでいたパンを放って急いでセラの元に走った。
みんなも私と同じ気持ちだったのか、みんな走ってついてきた。
「セラ!!」
勢いよく扉を開けてセラを見ると、セラも少し顔を起こして私を見てくれた。
ああ、セラ…生きてた…本当に生きてた…よかった…セラ…
私は溢れだした感情のままにセラを抱きしめようとして、お腹が何かに引っかかって抱きしめようとしたまま止まった。
???
なんだろう…と下を見てみると、私のお腹にセラの手が伸びてあたっていた。
セラも私を抱きしめようと手を伸ばして、ぶつかってしまったのかな。
そのまま腕をひらいて背中側にまわしてくれればぎゅってできる体勢だ。
改めて抱き寄せるようにもう一度引き寄せようとしたけれど、セラの腕はまるでつっぱり棒のように動かなかった。
???
ふとセラが俯いているのに気がついた。
もしかして…拒絶されてる?
そう思った瞬間、涙が溢れてきた。
「…セラぁ…ごめん…ごめんねぇ…」
私が泣いたからか、みんなつられて泣き出してしまった。
セラはモーラス様に乱暴されて、記憶までなくしてしまった。ずっとうなされて苦しんできて、ようやく意識がもどったら、今度は私のせいで…ううん、私たちのせいで死んでしまいそうになって…
もしかしたら、セラにとって私は世界で1番嫌いな人になってしまったのかもしれない。
モーラス様の記憶なんて無くなってて、苦しくて痛いことをしたのは私だけ…なんて思われてたとしたら…
そんなの嫌…そんなの耐えられない…私はセラのことが大好きなのに…
嫌わないで…セラ…やだ…やだよぉ…
「セラぁ…セラぁ…」と泣いていると、ふいにグッと押し返され続けていたお腹への反発力が消え、ふわっとした温かさが私を包んだ。
なんだろうと思い目を開けると、セラが抱きついていた。
私にセラが抱きついていた。
セラが……私に……
気づいた瞬間、私は無我夢中でセラの事を抱きしめ返していた。
セラに嫌われてなかった。もう二度と抱きしめられないと思っていたのに。
でも、セラが抱きしめてくれた。許してくれた。
私がセラを大好きなように、きっとセラも私のことを大好きなんだ!!!
ちょっと抗議したかっただけで。きっとまだおしゃべりできないから、抱きしめるのをおあずけすることで、怒ってるんだよって言いたかっただけなんだ。
でも私がいっぱい反省したのがわかって、抗議はおしまいになった。だから抱きしめてくれた。もう抱きしめて大丈夫。もう離さない。ずっと一緒にいるの。セラとずっとずっと、一緒に暮らすの。
ずっとずっと…ずっとずっとずっとずーっと!!!!
抱きしめながらセラの匂いをいっぱいに吸い込んで堪能していると、セラが可愛くそれでいて苦しそうな声で「…ジュリぃ…」と呼ぶ声が聞こえてきた。背中もペシペシ叩かれている。
可愛いなぁ…なんて思った瞬間、私は思いっきり力を入れて抱きしめていたことに気がついて慌てて力を抜いた。
…やってしまった…嫌われてないよね…???
不安に思い、でもすぐに気づけてよかったと安堵した瞬間、ゴッっという衝撃と共に茶色い何かが突っ込んできたのが見えた。さっきまでの私と同じように大泣きしているクルカラが、セラの後ろから抱きしめて来たようだ。
すごい衝撃だったけど…セラ痛くなかったかな…クルカラを叱ろうと声を出そうとした瞬間、クルカラだけじゃなく周りのみんなも泣きながら突っ込んでくるのが見えて驚いて声が引っ込んでしまった。
まずい!!
そう思った時には既にみんなに抱きつかれていて、私を中心に周りからぎゅうぎゅうと押されていた。
「みんな苦しいわ!!離れて!!」
私は大声を上げるけれど、みんな大声で泣いていて私の声が届いていない。
このままじゃまたセラに苦しい思いをさせてしまう。
みんなの大声に負けないように私は必死に離れるように叫んだ。
ぐいぐい押されて息が苦しい。セラもきっと苦しいはずだ。
このままじゃまた昨日みたいに。
今度こそ本当に死んでしまうんじゃないか。
そんな不安が過ぎった時、上から大きな手がすっと伸びてきてまわりの子たちを押しのけながら、セラを持ち上げて救出してくれた。
見上げた先には、げほっげほっと咳をするセラを抱きかかえた世話人がいる。
よかった…生きてた…よかった…
セラが抜けたことで空いた私の胸にクルカラが「くるしかったぁ…」と泣きながら飛び込んできた。
そうだよね…私でも苦しいのに、まだ小さいセラやクルカラはもっと苦しかったよね…
「…昨日、同じことがあったな?」
クルカラの頭を撫でてあやしていると、世話人の静かな、普段よりも怖い雰囲気を纏った声が響いた。
みんなも異変に気がついたのか泣くのをやめて、世話人がセラを抱えている方を向き、固まる。
私も最初に見上げて、普段と違う怖い雰囲気を纏った顔を見てしまってからは顔を上げれなくなった。
怒った顔ではなかったけれど…なんていえばいいのか…真顔なんだけど、真顔じゃなくて…
怒りを通り越して真顔になったかのような…とにかく怖いオーラがでていて怖くて見れない。
全員が世話人に怯えている中で、世話人の説教が静かに始まった。
昨日も同じことがあったなと。
昨日説教されたことを忘れたのかと。
セラが死にかけたことを忘れたのかと。
しばらくセラを抱きしめることは禁止だと。
お前たちは信用できないと。
これからセラは俺の部屋で面倒を見ると。
…ちょっと待って欲しい。それは違うと言おうとして私は顔を上げた。
…が、今まで見たことがないほどの恐ろしいオーラを纏った世話人を見て、恐怖で喉が引きつって声を上げることができなかった。
みんな声も出せずに泣いていた。
私も反論したいのに声を出せず、静かに涙を流していた。
声を出したらもっと怒らせてしまう気がした。
もっととても恐ろしいことが起こるんじゃないかと思うほど、部屋の中が恐怖に支配されていた。
その説教が、ふいに止まった。セラが世話人に抱きついたのだ。
世話人とセラが見つめ合うと、セラはヒックヒックととても可愛らしい声を上げながら泣き出してしまう。
それを見て世話人の纏っていた怖いオーラが一気に霧散した。
「…みんな飯の途中だ。落ち着いたら食べにくるように」
そう言い残し、セラを抱っこしたまま部屋から出ていく。
…セラはきっと私たちを守ろうとしてくれたんだ。
泣いてしまうほど怖かったのに…それでも世話人から離れようとしなかったのはきっと、私たちを守るために違いない。
世話人の注意を引いてお説教が早く終わるようにしてくれたんだ。私のセラはなんて優しくていい子なんだろう。
…こうしてはいられない。すぐにセラを追わないと…でもまだ泣いている子もいるし、みんなを置いていく訳には行かない。私は1番上の姉さまなんだから。
私はミルカや落ち着いてきた子たちと協力してみんなを落ち着かせて回り、急いで食堂に向かう。
そこには、セラを膝の上にのせてスープをあーんしている世話人の姿があった。
イラッとした。




