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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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本物のロリコン

「何も分からない純真な子どものフリ作戦」


 自分で考えておきながら、なんて安直な作戦なんだろう…というか作戦ですらない。実際にわからないことだらけだし、言葉だってわからない。つまり純真の部分以外はそのままだ。果たして騙されるものがいるんだろうか…


 …そう思っていたのだが、ジュリは大きく目を見開いたあと、突然泣き崩れて僕を強く抱きしめた。


 …ジュリさんちょっと…抱きしめる力が強いです…痛いです…しかも子どもとしては母性豊かな大きなふくらみが仇となり、息が…息が…とてもしずらいでふ…


 作戦は絶大な効果を発揮したようだ…なんて考えているうちに他の女の子たちも一斉に群がってきて、抱きついてきた。

 ジュリのように泣いている子たちも多い。


 でもそれよりも何よりも…圧が強い…!!!


 比喩ではなく物理的に!!!


 ジュリからの力強い抱擁に加えて、周りの数十人の少女たちが外から外から、まるでおしくらまんじゅうの様に感情のままに押し寄せてきて押し潰されている。


 このままでは潰れる…つぶれてしまう…本気で息ができない…くるしい…



 人によってはこれをご褒美だという者もいるかもしれない。

 小学生くらいの少女たち数十人に囲まれて抱きしめられての、圧死。


 これがアニメや小説でなら羨ましい死に方だと言う者もいるのだろう。僕だって幸せな死に方じゃんと笑ったかもしれない。だがしかし、今わかった。解ってしまった。


 当事者としては幸せも嬉しさも何も無く、ただただ圧迫による痛みと息のできない苦しさ、命が危険だという本能的な恐怖…それだけだ…


 あるいはそれは、僕が本物のロリコンでは無いから幸せを感じられないだけなのかもしれないが…


 バイク事故からの生還に加えて、やっと悪夢から解放されて意識がはっきりしてきた所なのに…僕はこんな事で命を落とすのか…いやだ…しにたくない…


 ああ…もう意識が…



 …だれか……



 たす……



 け……


 …



 そうして僕の意識は暗い闇の底へと引きずり込まれていき…消えた。




 ふわふわとした感覚にまどろみながら、僕の意識は覚醒する。


 目が覚めた時にはあたりは真っ暗で、もう夜になっているようだ。


 どうやら僕は生きているらしい。


 …死んでなくて良かった…今回ばかりは結構本気で死を覚悟したから…


 動かそうとした上半身がものすごくギシギシと痛くて怠いのは、強く抱きしめられたせいだろうか…酷い目にあった…


 周りではみんな寝てるようだし、僕も寝ておこうか…やれること無いし。身体中痛いし。

 ここの所ずっと寝てばかりいたから寝れるのかと思ったが、そんな心配をよそにスっと眠ってしまったらしい。


 ふと目を開けると、いつの間にか朝になっていた。


 部屋の中が静かだ…誰もいないんだろうか?と思ったが、視界の端に立ち上がったクルカラが見えた。


「ジュリ!!******!!!」


 そしてジュリを呼びながら外に走っていった。



 …なんかこの光景、前にも見たことあるような…


 もしかしてタイムリープ系か?なわけないだろう。なんて自分で考えて自分でツッコミを入れつつ。


 前回とは違ってバタバタと外から聞こえてくる大量の足音。


「セラ!!」「セラ!!」「セラ!!」


 バンッと扉が開き、みんなが一斉になだれ込んでくる。


 そしてジュリが1番に僕を抱きしめようとして…昨日の事がフラッシュバックしてしまった僕はほぼ無意識のうちに腕をのばし、ジュリに抱きしめられるのをガードしてしまった。



 一瞬、世界が止まった。



 ジュリがもう一度抱き寄せようと力を入れたが、僕の手は動かなかった。

 昨日、本気で死を感じたあの出来事は僕に若干のトラウマを植え付けていたらしい…


 気まずさでジュリの顔を見れない…


 受け入れた方がいいのはわかるんだけど、わかるんだけど…昨日の今日だし…正直、圧迫と窒息は怖い…この身体じゃどうやったって逃げられないってわかるから余計に怖い。


「…セラぁ…***…***……」


 あ、とうとうジュリが泣き出してしまった…

 ジュリに釣られるように周りの女の子たちも泣き出してしまった…


 …これじゃあ受け入れない僕が悪者みたいじゃないか…死にそうになったのは僕なのに…


 ジュリは僕の頭におでこを寄せ、ぐりぐりしながら泣いている。


 …ちょっとこの構図、傍から見たらすごい可愛いんじゃないだろうか。


 そんな不謹慎な事を考えるくらいには少し余裕ができた。

 いつまでもガードして泣かせ続けるのもさすがに悪い気がしてきたので、ガードをといてジュリに自分から抱きつく。

 抱きしめるのを拒否されて泣いてしまったのなら、こちらから抱きしめれば泣き止んでくれないだろうか。というかさすがにもう泣き止んでほしい…


 女の子の涙は心にくる。心に罪悪感をグサグサ突き刺してくる。涙は女の武器とかよく言ったものだ。


 ジュリはすぐ僕を抱きしめ返した。


 …いや、一度拒否したからだろうか。力強く抱き締めはじめた…うぐぐ…だから…力が強いって…痛い痛い…


 今回は僕から抱きしめたおかげで、顔が胸に埋まっていない。

 その代わりに首が胸に、本来なら柔らかい2つのふくらみにぎっちりと埋まって締められる形になっているが…苦しいながらもなんとか「…ジュリぃ…」と声を絞りだす。


 ついでに背中もペシペシ叩いた。


 死んじゃうから。今度こそ本当に死んじゃうから。気付いて…


 ジュリはすぐに気づいたのか力を緩めてくれた。

 ふぅ、これで一安心だ…と思った瞬間、後ろから何かに激突された。


 どうやらクルカラが泣きながら僕をジュリごと抱き締めて来たようだ。

 それに続けとばかりに、それまで周りで泣いていた少女たちも一斉に抱きついてきて…昨日のおしくらまんじゅうがまたも再発生した。


 みんな泣いている。昨日はそれほどでもなかったのに、今日に限っては号泣している子もいる。クルカラなんか大声出して泣いてる。


 もし昨日のあれで死んでいたら、彼女たちにとんでもないトラウマを植え付けてしまったんじゃないだろうか。


 死ななくてよかったと心から思う…本当に…


 そんな事を頭の片隅で考えるものの、僕は昨日と同じように命の危険を感じている。


 むしろ既に意識を手放しかけている。


 ジュリが焦っているような大声で周囲に何か言っているみたいだけど、周りのみんなの鳴き声が大きすぎてみんなに声は届いていないみたいだ。あぁ…だんだん声が遠くに聞こえるようになってきた…


 あぁ…これもきっと、誰かにとっては幸せな死に方なんだろうな…ガクッ

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