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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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21/102

きっと絶対大丈夫

※ジュリ視点になります。

「世話人は意地悪だ」の続きからになってます。

主人公が分からないまま過ごしている期間の説明回のような内容です。

 セラが目を覚まさないまま4日目となり、ようやく目を覚ましてくれたことに安堵した私はどうやらセラに抱きついたまま眠ってしまっていたようだ。


 クルカラがスープを持ってきて起こしてくれた。


 どうやら私が昼寝をしている間に昼食があと少しで完成する頃合いの時間になっていたらしい。

 クルカラはもうすぐスープが出来上がるからとしばらく待たされたせいで、せっかく出来たてのスープを持ってきたのにセラがまた寝てしまったとちょっとむくれている。


 私はというと、セラが目を覚ましてくれた安心感からか、お昼寝をしたからなのか分からないけど、心も少しスッキリして食欲が戻ってきたような気がする。


 まだセラがどうなるかはわからない。もしかしたら…記憶がなくなっているかもしれない。

 それでも、セラのことは絶対守っていくつもりだ。絶対医者になんか連れて行かせるもんか。


 私は一番上の姉様なんだ。しかもここ2年ほどは他の姉様たちより一番指名が多くて偉いぞとオーナーからもよく褒められるくらい、小鹿亭には貢献している…らしい。

 我儘を言うとオーナーに嫌がられるかもしれないけれど、私が言えば少しくらいは配慮してくれるはず。


 決意を新たにしながらお昼ご飯をすまし、食器を片付けて世話人に話しかける。


「セラが次いつ目を覚ますかわからないし、スープをすぐ用意できるようにしておいてほしいの」

「ああ。セラの分はこっちに寄せてある」


 世話人もそのつもりだったのか、セラの分のスープはもう小鍋に分けていて温め直せばすぐ出せるようにしてくれているらしい。


 世話人にありがとうと伝えつつ、みんなは庭に、私はセラのいる部屋に戻った。


 セラはまだ眠っている。クルカラも部屋に戻ってきていたけれど、「私は午前中にお昼寝をしたからもう大丈夫よ、ありがとう」と伝えるとクルカラは嬉しそうに走って庭に遊びにいった。


 特にすることもなく、ぼーっとセラの寝顔をみる。まだアザも腫れも残っているけれど、セラ本来の可愛い面影がだいぶ戻ってきたと思う。ふと、さっきキスをした時のセラのちょっと苦しそうな顔を思い出して胸がドクンと高鳴った。


 さっきはどうしてあんなことしちゃったんだろう…最初はセラが喉渇いているだろうなって思ってキスしてたはずなのに、途中からは何故か胸がドキドキして、よくわからない気持ちのままキスに夢中になってしまっていた。


 あんなのはよくないよ…セラだって苦しそうだった。でも…もっとキスしていたいって気持ちが心の中に小さくぐるぐるしていて…今もセラの唇を見てると…吸い寄せられそう…ダメダメ、セラが嫌がるようなことをするなんて絶対ダメなんだから。うぅ…


 そんな自問自答をしながらふと気がつくと、すぐ目の前にセラの顔があった。


 はっと息をのんで顔を離す。

 いつの間にか顔を覗き込むように近づいてしまっていたみたいだ。


 …さっと部屋を見まわす。部屋の中は私とセラだけ。扉も閉まっている。

 よかった…誰にも見られてない。


 なんだかわからない感情が胸の中でぐるぐるしていてもどかしい。

 少しだけならキスしても…いいかな?ちょっとだけなら大丈夫よね?…と、セラの唇に優しくキスをして、離れる。


 ドキドキする…顔が熱い。私…どうしちゃったんだろう…


 一回だけじゃ満足できなくて、またキスをして、離れる。窓から誰かに見られていないかな、ってチラチラ確認しつつ…私何やってるんだろう…でも…やめられない。


 優しくキスするだけだったのが、唇をハムっと優しく咥えたり、ちょっと舐めてみたり。

 キスをしては離れて…なんてことを繰り返していたら、みんなが扉の方に歩いてくる足音に気がついて、大慌てでセラの唇の周りに付けてしまったよだれをばっと拭う。


 ちょっと乱暴にしちゃって痛かったかも…ごめんね、セラ…私、悪い子になっちゃったのかな…


 みんなが扉を開けて部屋に戻ってくる。


 胸がドキドキしてて顔がすごく熱い…もしかしたらさっき目が覚めた時のセラみたいに顔が赤くなってるのかもしれない。


 私はセラの方を見たままみんなに顔を向けることができなかった。


 ミルカがそんな私の様子を見て、私を後ろから抱きしめてくる。


「一度目が覚めたんだから、きっと大丈夫よ。泣かないで。心配しなくてもまたすぐ目を覚ましてくれるわ。ジュリが言ってたんじゃない。セラは強い子、でしょ?だからきっと絶対大丈夫よ」

「……そう…よね…ありがとうミルカ」


 一瞬、セラにキスしていたのがバレたのかと思って飛び上がりそうになったけれど、どうやら私がセラを心配して泣いていたんだと勘違いさせてしまったらしい。


 ちょっと罪悪感を抱きつつ、バレなくてよかったと安心しながらミルカにお礼を言った。

 みんなが帰ってきたと言うことは、そろそろ夕方なのだろう。


 窓の外を見ると日差しが柔らかくなっていた。


 帰ってきたみんなが今日はどんな遊びをしていたのか聞いていると、セラが身じろぎしているのに気がついた。


 目が開いてる。セラが起きた!


 急いで顔を覗きこみたい気持ちをグッと抑え、驚かせないようにゆっくりと顔を覗き込む。


 目が合った。セラはぼーっとしているのか表情に変化はない。目が覚めてくれて嬉しいけれど、私がわかるか、記憶をなくしているのか確認するのが怖い。

 私は不安な気持ちが声に出ないように気をつけながら、いつもの私みたいにセラに話しかける。


「セラ、おはよう。私がわかる?ジュリだよ」


 話しかけても、セラは何も答えてくれない。


「セラ、私がわかる?」


 もう一度話しかけてもセラは困ったような、戸惑っているような表情をしている。

 やっぱり記憶がなくなってしまったんだ。そう確信した瞬間、セラをモーラス様の所に向かわせたあの時のことを思い出して、胸がギュッと締め付けられて苦しくなった。


 セラの目の前で泣いちゃダメ。考えちゃダメ。セラは目を覚ましたんだから。もう大丈夫だから。もう大丈夫なんだから。


 少し頭を振って気持ちを切り替え、セラに微笑みかけた。


「大丈夫…大丈夫よ…セラ…」


 きっともう大丈夫。辛くて苦しい記憶なんてなくなった方がいい。記憶がなくなってよかったんだ。


 そう自分を誤魔化し、セラのおでこにキスをしてセラのためのスープをとりに向かった。

 本当は誰かに頼もうと思っていたのだけれど、あのままあそこにいたら泣いてしまいそうだったから。


 厨房に行って世話人にセラが目覚めたことを伝えると、すぐにスープをよそってくれた。

 夕飯が出来上がるのに合わせてセラの分も温めてくれていたらしい。


「スープを飲ませ終わったら夕食の時間だ。みんなを呼んできてくれ」


 そうぶっきらぼうに言う世話人の表情はいつもより少し優しい。どうやらほっとしているみたいだった。世話人はセラについて何も言わないけれど、多分、ちゃんと気にかけてくれているんだと思う。


 世話人はいつもぶっきらぼうでちょっと怖い感じの人だ。

 それに、私が初めて小鹿亭に連れられてきた時も1年間この世話人から普通の「お勉強」を受けたので、その時の苦手意識もあるのかもしれない。

 今小鹿亭にいるみんなはこの世話人の「お勉強」を受けているから、多分みんな世話人を怖い人だと思っているんじゃないかな。


 ジンムカ様とお話している時、世話人がいつもむっとした顔をしてて怖いとぽろっとこぼしてしまったら、世話人は娼館の用心棒として悪い人たちから私たちを守るために強くて怖い見た目の人が選ばれるんだと教えてもらった。あの怖い顔で私たちを守ってくれてたんだと知ってからはあまり怖く感じなくなったけれど、私達にはもう少し愛想が良くてもいい気はする。


 ふと世話人から受け取ったスープを見てみると、具がほとんどない。もしかして意地悪してるのかしら…そう思って世話人をじとーっとした目で見ていると


「…はぁ…セラはしばらく寝たきりだったから、消化にいいものを用意した。野菜はすり潰して入れてあるし、飲み込みやすいようにトロミもつけてある。意地悪してるわけじゃないからさっさと持っていけ」


 と言われてしまった。


 どうやら思っていたことがそのまま顔に書いてあったらしい。

 改めてスープを見てみると、確かにすり潰した細かい何かが沢山混ざっているみたいだ。


 疑ってごめんなさい。

そういえば、主人公視点とジュリ視点で書かれている時間感覚が違うと思った方もいるかと思います。

主人公は寝て起きたら次の日になっていた、という感覚だったりしますが、実際には数日寝たきりで目が覚めていなかったりします。寝ている間にどれだけ時間が経ったのか、健康な状態で5時間や8時間とか通常の睡眠時なら体感で何となく分かりますけど、大怪我を負っている状態で長時間以上目を覚まさなければ、24時間でも48時間でも同じように「長く寝てた気がする」程度にしかわかりませんからね。周囲にカレンダーでもあれば別でしょうけれど。

セラの体感とジュリの説明が違うのはそうゆう理由になっています。

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