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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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20/103

そろそろ現実に戻る時が来たのかもしれない

 美味しそうな匂いの残る食堂にはジュリとミルカ、他に青い髪と緑の髪の女の子2人と僕の5人だけが残っている。


 みんなお盆を片した後は僕たちを残して部屋に戻されてしまったのだ。

 何かあるんだろうか。


 僕はいつものようにジュリにおんぶされながら、もしかして食後のトイレに行くのかな?と思っていると、庭の井戸のところに連れられていった。


 もしかして体を拭いてくれるのかな。


 …そういえば目が覚めてから今日まで体を洗っていない。ふきんとかで拭かれてすらいない。

 今まで気にしていなかったけれど、僕は相当汚いことになっているんじゃないだろうか…


 髪とかガッチガチになっていそうで想像するだけでも恐ろしい…


 僕は自分の髪に向かって伸ばした手を、途中でおろした。

 世の中には知らなくてもいいことがあるのだ。きっとこれも、そのうちの一つだろう。



 井戸から少し離れた所に降ろされて、女の子たちが話をしながら桶を準備しているのを眺めていると、さっきの男の人がやってきた。


 男の人は井戸から勢いよく水を汲んで、女の子たちが準備した大きな桶に入れていく。ポンプ式ではなく、縄を引っ張ってバケツを引き上げる昔のタイプだ。相当な力仕事だと思うんだけど、それを軽々と行っているからすごい。


 そういえばこのガタイのいい男の人以外に男性を見たことないんだけど、ここに男はこの人と僕しかいないんだろうか。


 水を汲む姿をすごいなぁとぼんやり眺めていると女の子たちの準備も終わったのか、みんな一斉に、なんの躊躇もなくワンピースを脱ぎだした。


 え!?ちょ、男の人の目の前だよ!!!??


 僕も一応男だけど…記憶喪失な子供設定だからまぁ論外として…

 でも、水を汲んでくれてる男の人は完全に大人だよ!?気にならないのか!!??


 少女たちはパンツなんてもちろん履いていない。ワンピースをすっぽんと脱いだらもう一糸まとわぬ真っ裸だ。


 そんなあられもない姿の少女たちは僕のことも水汲みの男の人のことも眼中に無いようで、ジュリとミルカ、緑髪の子と青髪の子の2人1組になって小さな手桶で大きな桶から水をすくい、ペアの子の体に水をかけながら布きれで擦り、お互いを洗いあいっこし始めている。


 石鹸…なんてないよね…そりゃそうだ。


 この流れだと、僕は男の人と洗いあうんだろうか…さっきスープ飲ませてくれたのもこの人だし。ちょっと嫌だな…


 いや、今までが恵まれすぎてたんだ。女の子たち、それも美少女に囲まれて撫でられたり、抱きしめられたり、舐められたり…


 改めて思い返してみると、異常としか言いようがない。


 事故にあったのを幸運だったとはとてもじゃないが言えないけれど、目覚めてからの日々は、一言で言うならハーレムそのものだった。


 身体も小さくなっていたし、全身にひどい怪我を負って苦しかったけれど、彼女たちは見ず知らずの僕に愛情と優しさを目一杯注いでくれた。



 …僕はそろそろ現実に戻る時が来たのかもしれない。



 …男の人はまだ大きな桶の他にも瓶に水を汲んでいて忙しそうだな。

 もうしばらくは少女たちの水浴びを眺めているとしよう。


 …ごくり。


 4人の中で1番目を引かれるのはやっぱりジュリだ。

 綺麗な金色の髪、白い肌、緑の瞳、すらっと伸びた肢体に、胸にはほかの子たちより大きな膨らみ。

 時折身体を洗う腕に押されてむにゅうっとひしゃげるも、その度に腕からちゅるんと飛び出し、ツンと張った先端から水飛沫を飛ばす。


 そのまわりには赤、青、緑の髪色をした3人の妖精たちが小さなつぼみを揺らしながら、水をかけあい戯れる。

 僕の目の前にはそんな、まるでなにかの物語に出てくるような幻想的な光景が広がっている。


 まぁ身体を洗っているだけなんだけど。


 綺麗なものは詩的な表現をしたっていいじゃないか。


 そうこうしてるうちに身体を洗い終わったのか、1組ずつこれまでとは別の、1人で抱えるにはちょっと大きめの桶を持ってきた。


 桶に少し水を入れて混ぜたあと、ジュリがその桶に頭を突っ込み、ミルカは桶の中から灰色の何かを掬ってジュリの頭の上にかけ、ジュリの頭や髪に灰色の何かを揉み込むようにしている。

 頭を洗っているんだろうけど…あれはなんなんだろう。見るからに泥っぽいような…


 もう1組の少女たちも同じようにしているな。


 美容のために顔に泥パックをするのは聞いたことがあったけど、髪と頭に塗りたくるのははじめて見たよ…あれで本当に頭を洗ったことになるんだろうか?かえって汚れてしまいそうな気がする…


 ひとしきり頭と髪を揉むと、ジュリの綺麗な金色だった髪はすっかり灰色の泥にベッタリとまとわりつかれてしまった。


 …ところがだ。


 泥だらけになってしまった髪に手を何度か梳かせると、固まっていた泥がどんどん細かい砂になって落ちていき、最初よりも輝きを増した金髪が姿を現したのだ。


 しかもさっきまで泥にまみれていたはずなのに、髪がもうサラサラと乾いている。手ぐしで何回か梳いただけなのに…しっとりうるツヤ〜みたいなシャンプー&リンスのCMに出てきそうなくらいに綺麗だ。


 あの泥は一体なんなんだろう…


 見とれている間に今度はジュリとミルカが交代して髪を洗っている。

 ミルカの赤髪も赤く綺麗だと思っていたが、泥でもみもみすると、やはり少し汚れていたのだろう。泥が落ちるともっと綺麗になり、透き通るような真っ赤な夕焼けの空の色になった。


 2人が向かい合って髪をさわさわと整え合っている姿は、まるで金髪の女神と赤髪の女神が戯れているような、息を呑むような幻想的な光景だった。


 思わず見惚れていると、2人が僕の方に笑顔で近づいてくる。


 …全裸で。


 不思議で神秘的な光景を前に思わず魅入ってしまっていたが、常識的に考えて12才くらいの少女たちの水浴び姿をガン見するというのはいかがなものか。


 見えるように正面に座らせられていたというのはあるけれど…いや、僕は記憶喪失の設定なんだ。やましい事なんか無い。平然とした態度でこの場は乗り切ろう。


 …と思うのだが…如何せん発育のいい美少女2人が全裸で目の前にいるというこの状況にオロオロしてしまうのは、仕方のないことだろう…

 意識しないようにと思ったことで逆に意識してしまったのか、顔まで熱くなってきた…たぶん耳まで赤くなっている気がする…


 ジュリはそんな僕をみて悪戯っぽく笑いながら、僕の前でたわわな果実を見せつけるように前屈みになり優しく頭を撫でてくれる。


 うぅ…本当は僕のほうが歳上なのに…


 そう思えば思うほど恥ずかしさが増していく気がする…考えちゃいけない…記憶が無いフリしなくちゃ…

 心の中で恥ずかしさに身を捩っていると、ふいに僕の両手をミルカに掴まれ、バンザイの形に上げさせられる。


 突然のことに驚く暇もなく、間髪入れずにジュリが僕の着ていたワンピース(?)を見事な早業で剥ぎ取り、僕は一瞬で全裸にされてしまった!


「ひゃ!!」


 思わず両手で股間を隠す。


 ジュリとミルカは僕の反応が面白かったのかくすくす笑っているけれど、これは流石に問題があるんじゃないだろうか。


 そんな思考や感情は…次の瞬間には消し飛んでいた。


 僕の意識は自分の股間に当てた両手にすべて持っていかれていたのだ。

 別に、とんでもなく立派なモノが付いていた、とかでは無い。


 むしろ、無いのだ。


 手に伝わってくる感覚は、ペタンと、股間に沿うようにカーブを描き…本来あるべき出っ張りの感触が伝わってこない。


 何が無いのか。

 本来あるべきもの。あるはずのもの。


 僕は凍りついた表情のまま、どうにか顔を下げ、両手で隠れたソコを見た。


 見える範囲には一切の毛が生えていない。5、6才くらいの幼児体型なのだから当然だ。


 恐る恐る、両手を離す。


 手が震えていた。



 見えたそこには、ナニが無かった。




 あぁ…これはきっと夢だ…悪い夢だ。

 誰か夢だといってくれ…


 裸体の少女たちが舞い踊る幸せだった夢は、僕が夢から覚めて現実へと戻る前に、突如として悪夢へと変わってしまった。


 茫然としている僕の事なんてお構いなしなのか、ジュリとミルカの2人に桶の前に運ばれた僕はされるがままに全身を洗われていく。


 流されるままに身体を、髪を洗われる僕の思考の中に、ある記憶がふっと甦る。


 あれはいつだったか…


 そう、事故にあってからここで目を覚まし、ジュリに熱烈なキスをされていた時だ。

 あのとき半分投げやりに、半分冗談まじりに考えた事が、今更になって脳内にチラついて離れない。



 --ああ、神様…お亡くなりになったのは、僕ではなくて息子のほうだったのですね--



 …僕は神を呪った。

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