もうだめだぁぁ…
ここの所忙しくて投稿遅くなりました!!
中途半端な量なので少し長めです。
「ねえねえ早くあそぼっ!!」
「どうやるのー??」
「アッポたべたい…」
大まかな説明を終える頃には、みんなすっかりゲームに乗り気になってくれていた。
「じゃあねー…さいしょはリビアンたちから!!あつまって、みんなせなかをむけて??」
「背中を…こうですか?」
12才組のリビアンたちは4人なので、みんなが内側に背を向けるように、それぞれ四方を向くように少し間隔をあけて立ってもらう。
「みんなで、1から5のすきなかずのゆびをたてて、かけごえにあわせてふりむくの。えーっと…」
そういえば掛け声が必要だったな…考えるの忘れてたや…
普通に、いっせーのーででいいかな?
…うーん、毎回はちょっと長くてだるいか…せーのっせ、とかにするか。
「みてて。せーのっせ!!ってやるの。ふりむくまで、ほかのこのすうじ、みちゃだめだよ」
背中合わせで互いが見えない状態で立ち、『せーのっ』の部分で指を立て、『っせ』の部分で一斉に振り向く感じだ。
「なるほど。よくわかりませんがとりあえずやってみましょうか。皆さんいきますよ!!」
「ふはっ、リビアンちょーせっかちじゃん。まいいや、早くやろっ」
「いきますよー!!準備はいいですね!?」
「「「「せーのっせ!!」」」」
みんなが大きな声で掛け声をあげ、一斉に振り向く。
出た数字はそれぞれ…1、3、5、5、だ。
「げっ、リビアンと一緒じゃーん」
「お揃いですね!!仲良しの証拠です!!…それでセラ、この後はどうするのでしょう?」
リビアンと同じ5を出したキリッカが嫌そうな顔をしているけど、ルールを聞いたらもっと嫌な顔するんだろうな。
「だしたすうじを"たしざん"して、そのかずだけマスをすすめるの」
「えーっと、じゃあ1+3+5+5は…」
「…14マス?」
「おー!?あたしとリビアンナイスー!!」
さっきまで"げっ"とか言っていたのに仲良さそうにハイタッチしだすキリッカとリビアンには申し訳ないが、勿論そんな単純なルールではない。
「えっとね…おなじすうじがでたのは、なくなっちゃうの」
「なくなっちゃう…えっ?」
「うげっ。ちょっとー、なんであたしと同じ数字だしてるのさー」
単純に出た数字の足し算なら、みんなが5を出すつまらないゲームになってしまうだろう。ダブりはアウトなのだ。
…ただ、例外もある。
「2、3、4、5は、おなじすうじだとなくなっちゃうけど、ふたりが1をだすと、10になるの。でも、さんにんが1をだしたらなくなっちゃうよ」
「…なんで1+1が10になるの?」
「くっ…私が1を出しておけばこんな事には…1番上の姉様なのに…!!」
「調子のんなー。あたしとちょっとしか変わんないくせにー」
基本ダブりはアウトだが、1だけは例外だ。2人が1を出した場合、それを10とカウントする特別ルールとなっている。但し、ダブりOKの1でも3人がダブるとアウトだ。
1さえ出していれば勝ててしまう、つまらないゲームになってしまうからね。
「あと、つぎのばんのとき、1かいまえにだしたすうじはだしちゃだめー」
それと同じ人が同じ数字を連続で出すのもアウトだ。背中を向け合う前に前回自分が出した数字を宣言して、それ以外の数字を出すよと申告し合う形にした。
同じ数字しか出さない子が出てきたら、それはそれで面白くない。
ゲームのルールをまとめると…
チームごとに1〜5の数字を出して足し算した分だけマスを進めるが、1以外でダブりが出た数字は消えてしまう。1がダブると10になるが、1が3つダブるとこれらも消えてしまう。そして、同じ人が同じ数字を続けて出すことはできない。
そうしてマスを進んでいき、集めたメルでアッポを買い、ゴールを目指す。
その他にマスによって様々なイベントが発生するものの、大まかにはこんな感じのゲームだ。
マスを進めるシステムをどうするかが1番の悩みの種だったが、悩んだ甲斐もあっていい感じに作れたと思う。
すごろくをしたいのに、ここにはサイコロがない。周囲にいい感じの小石があれば数字を刻めばよかっただけだが、ここにはそれすらなかった。
そこで考えたのが、出した数字の足し算をするという内容だ。
これなら〇+〇の簡単な足し算より、少し複雑な〇+〇+〇の暗算の練習にもなるはず。
今でこそ、僕とアイビスが毎日壁に書き殴って計算しているからそれなりに計算できる子が増えてきたけど、ここの子たちは1、2、3と数を数えることはできても、足し算引き算といった計算をする事が今まで全くなかった。
もしかしたら、計算という概念を知らない子も多かったのかもしれない。
そのため12才になっても、足し算も引き算も全くできない子がほとんどだったのだ。
勉強は無理やり詰め込まなくていい。少しずつでもいい。
ちょっとずつ色々なことを覚えていけば、何も知らないまま大人になるより、将来取れる選択肢はきっと増えるはずだと信じるしかない。
「4マス進んで〜、まるっ」
それぞれの班には別々の色の色石を持たせている。
進んだところに優しく〇を書き、目印としておくのだ。次に移動する時はボロ布で擦って消してから先に進む。
「つぎはセシルたちね」
「ええ〜!?」
12才組が終わったら、次は11才組だ。そう思って声をかけたところ、周りからブーイングが飛んできてしまった。
「セシル!!何出すかすぐ決めて!!今すぐ!!」
「セシルの番が来ちゃったら…ずっと次に進めないよー…」
「う〜ん、何を出そうかな…」
セシルはくねくねとした濃い緑の髪の毛が特徴的な、のんびり屋さんな女の子。
毎年アッポの収穫時期は彼女がどのアッポを収穫するか超長時間悩むので、いつまでも自分の番が回ってこずトラウマになっている子も多いようだ。
今の11才組の中では一番の稼ぎ頭で、来年は1番上の姉さまになる予定らしい…が…
「はいはい、並んで並んで!!」
「あわわ…」
「よーっし、並んだね。いい?1から5まで、どの数字を出してもいいんだからね。適当に選んで、せーのっせで振り向くんだよ?大丈夫だよね?」
「うーん…」
「うん、大丈夫!!やるよー!!」
周りの子がセシルの背中を押して半ば強引に位置につける。
11才組の子たちは全部で3人なので、3方向を見るように背中を向けて位置についた。
悩む暇もないように、なし崩し的に進めてしまおうという事だろう。
まぁ、掛け声に合わせて1〜5本の指を立て、振り向く。それだけの事。深く考える必要も無いはずだ。
「じゃあいくよー!!」
「「せーーのっ…せっ!!」」
「…あれー??」
少しゆっくりめの掛け声。振り向く2人と…だいぶ遅れて振り向くセシル。
「もうやってたのー??」
そういうセシルの手は…指が立っていなかった。
「うぅ…知ってた…」
「ゆっくりでもいい…ゆっくりでもいいから…せめて…せめて指だけ…立てておいてもろて…」
「うわぁぁああぁぁ!!順番が回ってこないよぉぉぉ!!」
「もうだめだぁぁ…ゲームが進まないよぉぉ…」
「うーん、どの数にしよっかなぁ?」
うなだれる11才組。絶望に染まる周りの少女たち。
そんな中、いまだになんの数字にするか悩んでいるセシル。
阿鼻叫喚に包まれる状況を見て、僕は自分の浅慮さを思い知った。
周りの声もなんのその、悩みだしたら止まらない。そんなものすごくマイペースな子も世の中にはいるのだ。
多少のトラブルはあったもののゲームは順調に進み、最初のお店屋さんマスに止まるチームが現れた。
「ここは、おみせやさん!!きょうははじめてだから、セラがおみせやさんするね」
「お店屋さん…セラわかる??見たことないんじゃない??」
「だいじょぶ!!」
他の子に指摘された通り、僕はこの世界のお店を直接見た事はない。
しかし、お店の様子については知っているのだ。
小鹿亭から抜け出す予定はまだ無いが、いつ抜け出しても大丈夫なように一般常識やお店の様子など、ウィルから細かく聞き取り済みである。抜かりはない。
「へいらっしゃい!!」
「「へい…??」」
あれ??反応が鈍いな…
八百屋さんらしく勢いよく元気に声をかけたのだが、みんなに首をかしげられてしまった。
ウィルは確かに"いらっしゃいませ"とか、"へいらっしゃい"だとか、市場は呼び込みも多くて賑やかだと言っていたはずなのだ。
まさか…僕が何も知らないからって話を盛ったのか…!?
…いや待てよ。
一瞬ウィルを疑ってしまったが、もうひとつの可能性に気がついた。
そもそもみんな、小鹿亭に来る前にお店を見た事があると言っても、本当にただ"見たことがある"だけなのでは?
それも、4才の頃だ。
5才になったと同時にここに連れてこられ、12才になってここを出ていくまで巨大な壁に囲まれて過ごし、1歩も敷地の外に出ない生活を送る。
そんな子たちがお店屋さんについて全く知らないのは当然だった。
ここは僕がお店屋さんとは何たるかをみんなに教えてあげなければならないか。
「おみせやさんはね、おきゃくさまがきたら、"いらっしゃいませ"っていうんだよ!!」
「…えっと、セラ。それはわかるのですが…さっきの、へいらっしゃい?というのは??」
「え??」
なんと、みんな"いらっしゃいませ"の事は知っていたらしい。
じゃあ何か?やはりウィルがあることないこと適当に言ってきたのだろうか?
"いらっしゃいませ"は通じる。"らっしゃい"も通じるようだ。
しかし、へいらっしゃいは…
「へいってなーにー??」
「なんだろ…」
「またセラが作ったんじゃない?」
「セラだもんね〜」
「ねー」
「ウィルがいってたの!!ほんとだよ??」
「ムキになってるのも可愛いー!」
みんな「セラはすごいねー」などと適当なことを言いながら頭を撫でてきて、人の話なんかちっとも聞いちゃくれない…
ぐぬぬ…ウィルめ…今度会ったらタダじゃおかないからな!!
「ゲームっ!!ゲームすすめよっ!!」
「あっそうだった!!セラはお店屋さんなんだっけ??」
みんなに正気に戻ってもらい、ゲーム再開だ。
「うん!!ここのおみせでは、アッポが1こまでかえるよ。ここにかいてるすうじのかずだけ、アッポをかえるの」
マスにお店のマークと数字が書かれていて、その数までアッポを買うことができるのだ。
「いらっしゃいませ。アッポは1こ500メルです」
「木の枝10本もってるよ?」
「きのえだじゃなくてメルね」
「あー、えっと…1本100メル、だっけ?木の棒でよくない??」
「よくないですー」
お金の使い方を覚えてもらうのが目的なので、そこはちゃんとメルと呼んでほしい。
「1個500メルだから、5本で1個?」
「10本あるから2個かえる!!」
「待って、ここは1個しか買えないって言ってたよ?」
「えー!?なんでー!?」
「きょうはアッポ、1こしかとれなかったの」
お金があっても、お店にアッポの在庫がなければ買えない。
「400メルしかない…」
「つぎのお店につくまでに、メルいっぱいためようね」
「うー…セラぁ…オマケして??」
「だめー」
あどけない少女から可愛くおねだりされると思わずオマケしたくなってしまうが、ぐっと我慢だ。
「もー!!じゃあメルちょうだい!!セラいっぱいもってるでしょ??」
「ズルはだめですー」
逆にお店にアッポがあっても、お金がなければ買うことはできないのだ。
「セラのけちんぼ!!」
「アッポたべたい…」
なんと言われようとズルはいけない。ゲームはルールを守って遊ばなきゃね。
今回は全店一律でアッポ1個500メルだが、みんなの学習度合いに合わせて今後はお店によって値段を変えたりしていこうとも思っている。
全ての店が同じ商品を同じ価格で、なんて。インフラや法整備が整っている現代でしか有り得ない事なのだ。
「ここの先、マスが別れてるよ??」
先頭を進むチームが分かれ道にたどり着いた。
「ここはすきなほうにすすめるの。どっちにすすむかえらんでね」
「うーん…どっちにする?」
「…長い方がいい…かも?」
「えー??こっちの方が近道だよ?」
「ほら見て、『ころんでアッポが2個なくなっちゃう』とか、『おかねをおとした!1000メルなくなっちゃう』って書いてるよ」
「「えー!?」」
そう。近道はアッポやメルが無くなったり、1回休みイベントがあるのだ。
しかし、デメリットばかりではない。
「あ、まって!!ここ!!『アッポのきをみつけた!アッポを5こしゅうかくしたよ』だって!!」
「ここも!!『すごいことをした!みんなからアッポを1こずつもらえる』だって!?」
「そこにとまると、みんなからアッポもらえるの。きょうは8チームだから、7こもらえるよ」
「すごーい!!」
「えー!!やだ!!ぜったいあげない!!」
「えっと、ゲームだから…」
短いコースにはデメリットばかりではなく、メルやアッポが沢山もらえるマスも少しずつあるのだ。
短いがハイリスクハイリターンなコース。
長いが可もなく不可もないコース。
早くゴールできればその分ボーナスがもらえるし、大きい数字で駆け抜ければ出遅れていても逆転が狙えるだろう。
さてさて、みんなはどうするのかな。
………
……
…
「ひぃ!?またかぶっちゃった!?1マスしか進めないー!!」
「…また…アッポ減っちゃう…」
「もうやだぁ…!!」
全部のチームが分かれ道を過ぎ、少し進んだ頃。
庭には少女たちの悲鳴がひっきりなしに響いていた。
意外なことに、今回はほとんどのチームが短いルートに進んだのだ。
アッポの大量ゲットに目が眩んだのか、いち早くゴールするためか。短いコースに意気揚々と進んでいくチームたち。
先発隊がデメリットマスに止まるのをクスクス笑っていた少女たちだったが、短いコースに進んだ子たちは先発隊の例に漏れることはなく…すぐに自身がデメリットマスの餌食となる番がやってくるのだ。
『こんな所、早く駆け抜けてしまおう』みんなが同じ思いで焦るせいで4、5の被りが頻発し、なかなか前に進めない。
目先の欲に目が眩むと、なかなか上手くいかなくなるものである。
この状況は決して意図していたことではないが、このゲームを機に堅実な考え方を養って貰えたらと思う。
「わあ!?セラのチームに追い抜かれちゃった!?」
「あれ!?ずっと数字被ってなくない!?」
牛歩の様なスピード感で他のチームが数字被りに苦戦している間に、僕たちのチームが先頭に躍り出た。
「このままゴールに一番のりだっ!!」
「あとちょっと!!がんばろっ!!」
クルカラもオープルも落ち着かない様子でワクワクした表情をしており、見ているこちらも思わずワクワクしてきてしまう。
もちろん目指すは一等賞だ!!
言うまでもないがこの快進撃は偶然ではなく、遊び方を知っている僕がいるからできている事だ。
…要するに、みんなには説明していないちょっとしたズルの様なものをしているのである。
僕たちのチームは僕、クルカラ、オープルの3人。
同じ人が続けて同じ数字を出すことができないルールなので、元々被り自体が起きずらいというのはあるが…誰かが1を出した後に1を出せば、ほぼ必ず1が被って10になるか、被りが出ずに多く進めるのだ。
まだ他のほとんどの子は"自分が前回出した数字以外に何を出そうか"だけを考える事で思考が止まっており、"他の子がどの数字を出すか"について考えたりはしていない。
そこら辺の経験の差が埋まるのは時間の問題ではあるが、最初のうちだけは思う存分勝たせてもらおう。
ゲームの発案者が弱いと…ちょっと恥ずかしいからね…
………
……
…
「いっちばーん!!」
「やったー!!わたしたちのかちー!!」
「やったぁ!!やったね!!」
「逆転できなかったかぁ」
「くっ…あと少しだったのですが…」
「まだ終わってないよ!!最後は持ってるアッポの数で決まるんだよ!!」
そんなこんなで初めてのすごろくゲームは様々な波乱を生み出しつつも、おおむね大盛況に終わった。
その後も連日ゲームは大盛り上がり。
1回のプレイにかなり時間がかかるので全員が毎回ゲームに参加する訳ではないけれど、お店役をしたがる子、銀行役としてお金の管理をしたがる子など、それぞれが好きな楽しみ方を見つけて思い思いに楽しんでいる。
たまにマスの効果を書き換えることでみんなよく文字を読んでくれるようになったし、読みと計算の勉強は順調だ。
たまにケンカも勃発するが、そこは喧嘩するほど仲がいいという事にしておこう。




