どんな事だって耐えられる
書いてて気が付きました…これは…日常パートじゃ…ない…!!(前回の前書きに書いたの嘘になりました!!ごめんなさい!!)
そして前話の後書きに次話はジュリ襲来のその後と日常パートになると書きましたが、その後の部分が思った以上に長くて…このページだけじゃ終わりません…
前話でセラがジュリに性的にボコられるシーンが終わったので(個人的に)重いパートから開放された気分でいましたが、まだまだ暗いシーンが続きます…
「いっ…〜〜~…!!」
身体を襲う地味な痛みに目を覚ます。
「セラ!!おきた!!」
「…セラ…セラ…」
クルカラとジュリの声がする。なんだか懐かしい。
目を開けようとしたところ、両目が痛くて開けられなかった。
目の中も外も痛い。目が開けられないのは、どうやらまつ毛が目ヤニでくっついて固まっているらしい。
ヒリヒリと痛む右手で固まった目ヤニを少しずつ剥がす。
本当は両手で目を擦ろうとしたが、左手が何かに固定されていて右手しか持ち上げられなかったのだ。
「セラ、おきてる??だいじょうぶ??」
クルカラが心配そうに聞いてくる。
「うん…おきたけど…め、いたい…どうなってるの??」
「えっと、あのねセラ。せわびとよんでくるから、ジュリのロープほどいちゃダメだよ??やくそくできる??」
ジュリのロープ…ほどいちゃダメ…??
「ど、どういうこと??」
状況が全く理解できない。ロープってなんだ??
目の周りは目ヤニで固まってて目を開けられないし、左手は何かに固定されてるし、全身のあちこちがひりひりして地味に痛い。
ジュリの声は聞こえるけれど、セラ、セラと呟いている声がするだけで他に何も言ってこないのはどうしてだろう。
仕方なくクルカラに再度説明を求めたが、クルカラはもう一度「ロープはぜったいにほどいちゃダメだからね!!」と言い残し、急いでどこかへ行ってしまった。
ようやく片目の目ヤニは全部取れたが、相変わらず目が痛くてほとんど開けられない。
もう片目の目ヤニを取りながら、何かに固定されている左手を動かしてみると…
もにゅもにゅ。
なんだ!?左手をもみもみと揉まれる感覚が伝わってきたぞ!?
「ジュリ、なの??セラのて、さわってる??」
「…セラ…セラ…」
あの〜、ジュリさん??僕の声、聞こえてませんか??
ジュリは僕の名前を呟くだけで、答えを返してはくれなかった。
ただ、声が聞こえてくる方向から考えるに、僕の左手はジュリが握っていると考えるのが妥当だろう。いたた…目ヤニの塊が大きすぎてまつ毛が全部抜けちゃいそうだ…
左目の目ヤニと格闘しつつ、身体を起こす。
痛みの走る右目をうっすら開けて辺りを見回すと、ここはまだジュリの相手をしていた客室だったようだ。
そして肝心のジュリは…
…え??
こすこす…
目が痛いのに、思わず目をこすって2度見してしまった。
ぼんやりと見える視界に映ったのは、椅子に座った状態でロープでぐるぐる巻きにされているジュリの姿だった。
…見間違いじゃ…ない…のか。
「じゅ、り??なに、どう、したの??」
聞かなくてもわかる。拘束されているのだろう。
ジュリが望んで縛り付けられたわけじゃない事くらいはわかるが、自分でも意味の無い質問だと思いながらも聞かざるを得なかった。
身体は胸の下からお腹にかけて椅子の背もたれにぐるぐる巻きにされ、腕も椅子の肘掛けに固定するようにぐるぐると拘束されている。
少し唖然としてしまったが、まずはジュリのロープを解いてあげなくちゃ。
そう思って立ち上がったが、ジュリが僕の左手をガッシリと握りこんでいて離してくれない。
「ジュリ、て、はなして??」
「…セラ…」
「て、はなして…ロープ…あっ」
そういえばクルカラがロープほどいちゃダメって言ってたな…寝起きでぼんやりしていたから忘れてた。これの事だったのか…
しかし、ジュリは僕の名前を呼ぶだけで返事をしてくれない。こっちを見てはいるのに…僕の声が聞こえていないのか??
「ジュリ…ジュリ??聞こえてる??ねぇ…」
「…セラ…」
何度声をかけても、うわ言のように僕の名前を呼び続けるジュリ。
その姿に言いようのない不安が押し寄せてきて、僕はジュリの頭を抱き込むように右腕だけでぎゅっと抱きしめた。
「ジュリ…セラいるよ…ここにいるよ…ジュリ…」
ボサボサになってしまった髪を撫でる。
うっすらと香油のいい香りがして、小鹿亭にいる時よりも手入れはされているようなのに、ここにいた時よりも荒れてしまった髪に心が痛くなる。
「ジュリ…いたっ!!」
胸にぎゅっとした痛みが走る。
ジュリの荒んだ髪に心を痛めていたのは事実だが、心の痛みとは全く別の物理的な痛みに思わず身体を離すと…僕の胸の上に赤黒い痣ができていた。
「あぁ…セラ…せらぁ…」
ジュリがヨダレを垂らしているのを見るに、恐らく吸い付いたのだろうと思われる。
………
今更ながら、クルカラが必死にロープを外さないでと叫んでいた意味が理解できた…と、思う。
ロープ外してたら…僕…ジュリに食べられちゃってたんじゃないか??
いやいや何を考えているんだか…と心の中で自分の考えを否定するも、虚ろな目をしながらセラセラと呼び続けるジュリの様子に本能的な恐怖を感じてしまう。
とりあえずこんな状態のジュリを放っておくわけにもいかず、かといって離れるわけにもいかず…
ジュリに吸いつかれないように口元から肌を離しながら抱きしめる。
ジュリを癒してあげたいが、吸い付かれるのは勘弁願いたいという複雑な心境にどうも心が落ち着かない。
吸い付かれるとすごく痛いし…僕の長い髪の毛がもしゃもしゃと食べられているのは我慢するしかあるまい…
そうしてクルカラと世話人が来るのをしばらく待っていると…
「セラ!!無事か!?」
バタンと大きな音を立てながら扉が開き、世話人とクルカラが入ってきた。
無事かとはなんだ?とツッコミたい所だが、まぁ、僕は無事といえば無事だな。問題はジュリのほうだ。
「せわびと…ジュリ、へんになっちゃった!!」
「ああ…元からだが、更に酷くなっているな…」
深刻そうな顔でサラッとジュリをディスる世話人に唖然としてしまう。
元からとか…そんなことはなかっただろうに。
「そんなことより、一先ず離れなさい」
「えっと…」
そうしたいのは山々だけど、ジュリに手をがっしり握られてて離れられないんだよね…
それよりも、なぜジュリがぐるぐる巻きになってるのか説明が欲しい。この状況は一体なんなんだ??
「ジュリ、ロープでぐるぐるしてるの…なんで??」
「危険だからだ」
世話人はジュリから離れようとしない僕の様子に諦めたのか、持ってきた濡れタオルで僕の顔や身体をぐしぐしと拭いてくれる。
あちこちが染みて痛い…
ジュリが危険なのは知ってるけど、そうじゃなくてさ…そうだ!!僕が気を失っている間に何があったのか聞いてみよう。
「えっと、セラが…ねてる?あいだ、なにかあったの??」
「ジュリ、こわかった…」
クルカラはソファーの後ろに隠れながら、こちらを心配そうに見ている。
そういえば…クルカラは僕を守るためにジュリの魔の手にかかり、倒れてしまったんだった…
去年は僕が寝る前にほぼ毎日やられていた事だけど、クルカラは初めてだったはず。
あの気を失う瞬間は…命の危険を感じるのだ。
クルカラにとっても相当な恐怖だったに違いない。
「クルカラ…まもってくれてありがと…」
クルカラは守りきれなかった罪悪感があるのか暗い顔で俯いてしまったが、コクリと頷いてお礼の言葉を受け取ってくれた。
「いつまでもブザーが鳴らないから、終わりの時間を待って急いで部屋に踏み込んだんだが…危ない状況だった。守ってやれなくてすまない」
世話人もその場にいなかったというのに、暗い表情で謝ってきた。
危ない状況ってなに…こわい…
あ!!そういえばジュリから魔力が流れ込んできてて…それを押し返すのに必死で…あれ??今は…何ともない…??
身体の中の魔力もいつも通りだし、ジュリと繋いでいる左手からも特に何も流れ込んできていない。
…僕は夢でも見ていたんだろうか??
「ジュリに終わりだと告げても聞かず、挙句に暴れだしてしまってな…少々乱暴になってしまったが、どうにかセラからジュリを引き剥がしたんだが、セラが…いや、ジュリがセラの手を離そうとしなくてな。仕方なく迎えが来るまで縛っておく事になったんだ」
…なる…ほど…??
そういえば気を失う前にジュリが手を伸ばしてたけど…あれ?よくよく思い出してみると…ジュリの背中に世話人が乗ってて…取り押さえられてた…ような…
あの時、手を伸ばさなければジュリが椅子にぐるぐる巻きに拘束されることも無かったのか…??
なんか申し訳ない…
僕の全身を拭き終わった世話人は1度タオルを水に濡らして絞り、今度はジュリを拭きはじめる。
顔をぐしぐしと拭かれたジュリの目が突然カッと開かれ、鋭い目付きで世話人を睨みつけた。
「ッ!!イヤ!!離れないから!!」
ジュリの突然の大声に驚いてビクリとしてしまう。
「あっ、えっ!?セラ!?えっ、えっ??セラ??あっ、ああ!!うそっ!?」
まるで今の今まで僕に抱きしめられてる事に気が付いていなかったような反応をするジュリに、僕の方が混乱してしまいそうだ。
さっきまでずっと僕のほう見ながら名前呼んでよね??
「…ジュリ??だいじょぶ??」
「ああ、セラ…ええ、大丈夫よ!!ずっと一緒にいるからね!!」
あ、反応してくれた!!さっきまで呼びかけても答えてくれなかったのに…
すんすん匂いを嗅ぎながら頬ずりしてくるのがちょっと怖いけど、無反応よりはずっとマシだ。
「ロープ、いたくない??」
「ええ、大丈夫。セラがいてくれるもの」
僕がいなければ痛いのか??
微妙に話が噛み合っていないような気もするけど…大丈夫ならいい…のかな??
「ジュリ、いい加減その手を離したらどうだ?セラが痛そうだ」
「手…イヤ」
繋いだ手をチラリと見て僕の身体に顔を隠すように押し付けながら、不貞腐れたようにイヤと呟くジュリは素直に可愛い。
だが正直に言うと、ギュッと握りこまれていてとても痛い。これは早々に何とかしなくちゃいけない問題だ…
あ、そうだ。
「せわびと、それかして」
「ん?タオルか?」
「セラがジュリのこと、きれいにしてあげるの」
「え??セラが??え??」
僕が世話人からタオルを受け取り、ジュリの身体を拭く。
「ジュリ、て、はなして??きれいにしよ??」
ジュリの身体を拭きながらお願いすると、一生離してもらえないんじゃないかと思うほどガッチリ握り込まれていた手がすんなりと解けた。
身体を拭いてあげるとニコニコとして嬉しそうだし、きっとジュリは離れ離れになるのが嫌なのであって、一緒にいられるのならくっついていなくても大丈夫なんだろう。
その様子を見て世話人は深く深ーくため息をつき、話し始める。
「ジュリ、迎えが来ている。それが終わったら帰りなさい」
「…イヤ」
「…本来なら、時間が来たらすぐ帰らなければいけないんだ。ジュリも知っているだろう」
「…セラのいない生活なんて…もう耐えられない…
か細い声で呟いて俯き、手持ち無沙汰になった手で僕の髪をギュッと握り込む姿に心がきゅと痛くなる。
1年ずっと一緒に過ごしてきたが、こんなに弱々しいジュリを今まで見たことがない。
きっとこんなにボロボロになるまで働かされて、やっと今日休みが取れたのだろう。そうじゃなきゃもっと前に会いに来ていたはずだ。
そして今日帰ってもまた、すぐに働かされるのかもしれない。
…なんとか助けてあげることはできないんだろうか。
「…ねぇ、セラ!!一緒にここを出ましょう!?」
「えっ!?」
「なっ!?」
ジュリが伏せていた顔をばっと上げ、突然とんでもないことを言い出した。
ここを抜け出し、安全な場所に逃げる。
それは僕からも提案したかったことではあるが…ここには今、世話人がいる。今その話題は不味い。
「セラも外に出たがってたでしょう!?一緒に外に出て、一緒に暮らしましょうよ!!」
「…セラ、本当なのか?」
うひぃ…世話人の目が恐い…
否定すればきっとジュリは傷付くだろう。かといって否定しなければ、世話人を通じて僕をここに連れてきた人達に脱走しようとしていることがバレるかもしれない。
ど、どうしよう…
「私、セラがいてくれればどんな事だって耐えられるの!!だからお願い!!一緒に行きましょう!?」
「じゅ、ジュリ、おちついて…」
「だ、だめー!!!いっちゃやだっ!!」
今まで静かだったクルカラがようやく事態を呑み込めたのか、突如としてタックルをかましてきた。
よろけた弾みでジュリが握っている僕の髪がグイッと引っ張られ、強い痛みとともにブチブチと嫌な音を立てる。
「いっっ!?つぅ…おち、おちついて!?ジュリも、クルカラも、ちょっと、おちつこ!!」
「あっ…あっ…セラ…ご、ごめん、なさい…」
「やだ!!いっちゃやだぁ!!セラがしんじゃう!!」
いたたた…うぅ、ごっそり抜けたな…ジュリの手が無数の髪の毛に包まれててすごく気持ち悪い見た目になってる…
「クルカラ、ね?おちついて??だいじょぶだから…」
「うぅ…ううぅ…やだよぉ…」
「セラ…一緒にいきましょ…お願い…」
泣き始めてしまったクルカラにつられたのかジュリまで泣き出してしまい、どうすればいいのかほとほと困ってしまう。
世話人はずっと睨んでるし…ど、どうしよう…




