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異世界にTS転生した僕がサキュバスクイーンになった理由  作者: 望月優志


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世話人は意地悪だ

※金髪の少女・ジュリ視点になります

 セラが目を覚まさないまま次の日になってしまった。


 2日目も目を覚まさなくて、このまま目が覚めずに「医者に連れて」いかれたらどうしようと思うと、怖くて怖くて眠れなかった。


 3日目。

 眠ったままのセラが、少し痛がるような動きをするようになった。スープを少し口にふくませると、ゆっくりだけど飲んでくれる。

 セラ…がんばって…


 4日目。

 セラはまだ目を覚まさない。朝食時に寝不足でフラフラしている私をみて、世話人が少し昼寝をするように言ってきた。明日はまたジンムカ様の予約が入っているのだ。


 誕生日から続いた地方からのお客様もだんだん少なくなってきている。地方から王都へ来ていたお貴族様達が帰りはじめているそうだ。


 セラをずっと見ていたくて渋っていると、クルカラがセラを見ると言い出した。クルカラに続いてオープルまで。

 今日は夜しかお客様がこないので、誕生日以来の久しぶりに部屋の外でおもいっきり遊べる日なのに…


 ミルカが2人の代わりにセラを見てくれると言ってくれて、本当は外で遊びたかったらしいオープルは笑顔で外に飛び出して行ったが、クルカラは断固としてセラを見てるといって聞かない。


 そこまで言うならと、クルカラに任せることになったようだ。

 クルカラは世話人に「ジュリがすぐに寝なかったら言いに来るように」と言われていた。


 むぅ…こっそり起きてセラを見ていようと思ったのに。


 部屋へ戻ってセラの横に寝ようとしたら、クルカラに先に陣取られてしまった。仕方がないので反対側に行こうとしたら、手をとられてクルカラの横に寝るように言われた。


「ジュリはクルカラのよこー!せわびとがね、セラのよこにするとジュリねないからダメって言ってた」


 …とのことだ。


 私のことを思ってのことなのかもしれないけど、世話人を優しいと思ったのは間違いだったかもしれない。世話人は意地悪だ。


 むうっとしながらクルカラの横に寝転がり、セラの横顔を見る。初日に比べて腫れはだいぶ引いた。

 そろそろ髪も洗ってあげたいな…少しだけ寝たら…髪を……


 2日目も3日目も心配でろくに寝られなかったからか、私はあっという間に眠りに落ちた。



「ジュリ!!セラがおきた!!」


 その声に私は飛び起きて、隣のセラを見る。


 目が開いてる…あぁ…セラ…

 嬉しくて…嬉しくて…泣いてしまいそう…


 セラから私が見えるように、覗き込みながら声をかける。


「セラ…大丈夫?」


 セラは私のことを見てくれたが、ボーっとしていて返事がない。

 私は急に不安になった。今までも感情がなくなって「医者に連れていかれた」子たちがたくさんいたから。


「…大丈夫?」


 不安で声が震えた。


 するとセラは口を動かして何かを言おうとしたけれど、声が出なかったのかちょっと顔をしかめた。


 セラは感情がなくなったりしてない。大丈夫だった…私のセラは大丈夫だった!!


 セラがもぞもぞ体を動かそうとしているけれど、諦めたようだ。


 セラが目を覚まして、自分から動いてる。それだけで、私は安心と嬉しさで心があたたかくなった。


 いけない、セラが何かを言おうとしてるんだから、聞いてあげなくちゃ。


「…mi………zu……」


 何て言おうとしたんだろう…私はセラの言った言葉を口に出していた。


「mi…zu…?」

「mi…zu?」


 隣で心配そうにしていたクルカラも口に出していて、首を傾げている。私もつられて首を傾げてしまった。


 セラは苦しそうに息をしていて、そこで気がついた。昨日もスープを少し飲んだだけだったし、喉が渇いてるんだ。


 クルカラにスープを持ってきてくれるようにお願いする。

 今から綺麗なお水やスープを準備するのは時間がかかるだろうけど、喉が渇いたままだと辛いだろうし…口の中の掃除も必要なので、私はセラにキスすることにした。私の唾液で少しでも喉が潤えばいいんだけど…


 キスをして舌を絡める。

 セラが急に身体をビクンとさせて少しびっくりしたけれど、すぐ落ち着いたみたいだ。


 丁寧に、口の中全体が潤うように。

 ゆっくり時間をかけて。


 セラは少し息苦しいのか、ふっふっと息を荒くして頬も耳も真っ赤にしている。


 …かわいい…


 私は心がドクンと波打つのを感じた。


 …セラ…なんて可愛いんだろう…


 セラの様子があまりに可愛くて、セラがちょっと苦しそうな表情をしているのを見ると、なんだか心がゾクゾクする。もっとこの表情を見ていたい…


 途中からは喉が乾いているとか関係なく、夢中でキスをしていた。


 セラ…かわいい…私のセラ…


 セラがとても息苦しそうにしているのにハッとして、唇を離した。


 顔を真っ赤にしてちょっと苦しそうな表情をしているセラがあまりに可愛くて、ゾクソクして…ついつい夢中になってしまったけれど、セラに嫌われたりしてないだろうか…


 ドキドキしながら、再び声をかける。


「…大丈夫?」


「…a、ariga…to???」


 セラは何かを言って首を少し傾げたが、なんて言っているのかわからなくて私も首を傾げてしまった。


 しっかりと返事を返してくれた…けど、なんて言っているのかわからない。


 そのうちにセラは「…え?…あ…え?」と言葉ではない声を漏らしながら、パニックになっているみたいになった。


 まるで私のことも目に映っていないみたいな…


 …目が覚めてから、セラは私の名前を呼んでくれない。あんなにジュリ、ジュリと抱きついてきてくれたセラが。


 もしかして…私のことがわからない?記憶を失ってしまった??


 そう思った瞬間、今までポカポカしていた心の奥が急にとても冷たくなって、すごく怖くなった。


 目覚めなければ、「医者に連れて」いかれる。


 もし目覚めても感情がなくなっていたりお客様のお相手をして取り乱すようなら、「医者に連れて」いかれる。


 …なら、記憶を失っていたら?


 わからない。こわい。どうしよう…どうすればいいの…


 どうしていいかわからなくなった私は、セラを抱きしめてつぶやいた。


「…大丈夫…大丈夫…大丈夫…」


 自分に言い聞かせるように。何度も何度も。


 私はセラを抱きしめ、不安でいっぱいのまま気を失うように眠ってしまった。


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