死神ラジオ
"死神ラジオ"
それは深夜十二時から毎日放送される三十分ほどの短いラジオ番組だ。
内容も至ってシンプルなもので、パーソナリティーの死神さんがリスナーから届いた手紙を読んで、その内容に触れていくという特別変わった内容ではない。
リスナーからの手紙も恋愛相談だったり、死神さんに対する質問だったり、人生相談だったり、なんてことない日常の一コマだったりと普通だ。
そんな死神ラジオが放送されるようになったのはここ最近で、僕は最近寝る前にこのラジオを聞くのが習慣になっていた。
理由なんてものは特にない。今は夏休みで夜ふかしもし放題なところにちょうどいい暇つぶしがやってきた。そんな感じだ。
「もうそろそろだ」
時計を見ると、針は夜の十一時五十七分を指していた。あと三分もすれば死神ラジオが始まる。
横になっていたところを体を起こし、ラジオを死神ラジオのチャンネルに合わせる。
ジジジ、と耳障りな音を立てていたラジオから少しずつゆったりとした音楽が流れてきた。
チャンネル合わせができたことを確認した僕は、その音に耳を傾けつつベッドに横になり、死神ラジオの開始時間を待つ。
『死神ラジオ』
少しすると、声の低い男性のオドロオドロしい声がラジオから聞こえてきた。タイトルコールだ。
『みなさん、本日もこの時間がやってきました。私こと死神がパーソナリティーを務めるラジオ番組、死神ラジオ』
このラジオの特徴の一つとして、死神さんはキャラを守るためなのか、終始低い声でオドロオドロしさを演出している。
少し聞き取りにくいと感じることもあるけれど、慣れてくると別に気になることはなく、むしろこのラジオの数少ない特徴として受け入れられるようになる。僕もこの一週間ですっかり慣れてしまった。
『それでは早速リスナーさんからのお便りを読んでいきます。なになに……ラジオネーム"恋する乙女"さんからのお便りです』
ここからは至って普通のラジオだ。
『私は今恋をしています。相手はクラスメイトで幼馴染のS君です。私たちは幼稚園からの付き合いで、それもあってか仲もよい方だと思います。クラスでもよく友達から冷やかされるほどには周りからも仲良く見えているようです。ただ、私はS君に告白する勇気が出ません。しよう。しよう。と思っても、肝心のところで弱気になってしまいます。死神さん、なにか勇気の出るいい方法はありませんか?』
死神さんの口から今回のリスナーからの手紙が読まれた。今回は恋愛相談らしい。
『なるほど。いいですね、恋。私もしてみたいものです』
死神さんは軽い掴みをしてから、う~ん、と低くうなった。
『それで悩みの方ですが、私から言えることは一つですね。当たり前のことになってはしまうのですが、それこそ死ぬ気になるしかないんじゃないでしょうか?』
本人も言っている通り、とても当たり前の答えをする死神さん。でも僕も似たようなことしか言えそうにない。
『どんなに勇気を振り絞ってもダメなら死ぬ気になるしかありません。みなさんの命はいつ終わってもおかしくないですからね。いくら体が健康でも事故であっさり……なんてこともあります。だからそうならないためにも"恋する乙女さん"には頑張ってほしいです。私も応援しています』
最後にそう締めくくって死神さんはリスナーからの相談を終えた。
そしてこの話がこれ以上続くことはない。死神ラジオの数少ない特徴の一つに、同じリスナーからのお便りは読まないというものがある。これは公式に言われているものではないけれど、ネットの情報や僕自身が聞いていても同じリスナーさんからのお便りは今までに一度もなかった。
『それでは本日はここまで。明日も生きていたら会いましょう』
死神さんは最後にいつもの締め文句を口にして、今日の死神ラジオを終わらせた。
次の日の深夜十二時二分前。
僕は慣れた手つきでラジオのチャンネルを合わせ、今日も死神ラジオの始まりを待つ。
『死神ラジオ』
始まった。
昨日と同じように声の低い男性のオドロオドロしい声でタイトルコールがされる。
『みなさん、今日もちゃんと生きていますか? 私は生きています。死神です』
いつものような掴みから入った死神さんが早速今日のお便りを読み始める。
『えーっと、今日のお便りは~……ラジオネーム"好奇心の塊かたつむり"さんです』
「なんかちょっと面白い名前だな」
ラジオの醍醐味の一つとしてラジオネームというのもあると思う。本名でお便りを送るのではなく、ラジオだけの名前を使うというのは面白いと思うし、その名前自体も面白かったりする。
『僕は友達に勧められて三日前から死神ラジオを聴き始めました。最初はなんてことのない普通のラジオじゃん。なんて思っていたのですが、なんだかんだと今日も死神ラジオに耳を傾けています。ところで死神さん。死神さんがパーソナリティーを務める上で気を付けていることや、楽しいことはありますか?』
「ちょっと失礼な感じもしたけど、仲間が増えるのはちょっとうれしいかな」
最近何となく聞き始めた自分と境遇が似ていたのもあってか"好奇心の塊かたつむり"さんに妙な親近感を覚えてしまった。
そのせいか妙に今回のお便りに自分を重ねてしまっていると、死神さんが返答を始めた。
『おお、新規のリスナーさんなんですね。それで質問の方なんですが、気を付けていることは特にないですね。強いて言うなら皆さんのお便りに真摯に答えるということでしょうか? 楽しいことはラジオ自体が楽しいですね。ラジオは私の趣味の延長という感じなんですが、最近はラジオ自体も楽しませてもらってますよ』
「へえ~、このラジオって趣味の延長だったんだ。でも、ラジオが趣味の延長って何だろう? なにか動画サイトで配信とかしてるのかな?」
最近では動画投稿サイトで誰でもラジオのまねごとをすることができる。
あくまでこれは過程の話だけど、死神さんは動画配信者でそこからラジオをやるようになった。とかじゃないだろうか。
『それでは本日はここまで。明日も生きていたら会いましょう』
死神さんは最後にいつもの締め文句を口にして、今日の死神ラジオを終わらせた。
次の日。深夜十二時の一分前。
「うわっ! つい寝落ちしちゃってたよ! 起れてよかったあ!!」
今日も死神ラジオを楽しみにしながらベッドで横になりつつマンガを読んでいたら、うっかり寝落ちしてしまった。この時間にお切れたのは正直言って奇跡だ。
僕は寝起きのぼけ~っとした頭でラジオのチャンネルを合わせるた。
『死神ラジオ』
チャンネルを合わせ終えたところでちょうどよくラジオが始まった。
『みなさんこんばんわ。今日も死ぬことができなかった死神です』
いつものように軽い掴みから入る死神さん。今日も死神という設定を忠実に守った入り方だった。
『さて、このラジオは三十分という短い時間のラジオですからね。さっそくお便りに入りましょう』
死神さんはこう言っているけど、このラジオでは一日に一通しかお便りを読まない。かといって他の企画があるわけでもなく、たった一通のお便りだけで話を広げて三十分という時間を繋げている。
これは結構すごいことなんじゃないだろうか?
『え~、今回のお便りは"秘密結社ブラックカンパニー"さんです。……これはブラック会社勤めの方なんですかね? もしそうだったとしたらそんなことで死なないでくださいね』
「おー、いつも死ぬ寄りのことを言うことが多い死神さんが生きる方で話してる。すごいな、秘密結社ブラックカンパニーさん」
『ただブラック会社を経営してる側の方なら知りません。ある意味私の同業者みたいなものですからね。敵ですよ、敵!』
一瞬死神さんが何を言ってるのかわからなかった僕だけど、すぐにその意図に気が付くことができた。
死神さんはラジオのパーソナリティーとしての自分ではなく、ラジオの中の死神というキャラの設定を順守した上で自分の同業者と言っているんだろう。
よくテレビでブラック会社のことが話題にあげられていたし、中にはあまりに仕事が辛いと死んでしまう人も至って話だ。
だから人を殺す。というところで同業者と言っているんだろう。すごいブラックジョークだ。
『さて、少し熱くなってしまいましたが内容の方へ移っていきましょう。なになに……自分はとある会社で働いている者です。ただその会社で働くのが嫌になってしまいました。人間関係とか仕事内容とか全部が嫌です。でも自分が辞めたら他の人に迷惑が掛かってしまうのではないかと辞めるに辞めれません。どうしたらいいでしょうか?』
「う、うわ~……。学生が働きたくなくなるような内容だ……」
こういう話を聞くとずっと学生でいたいって思えてくる。
いや、きっと社会人の人も学生に戻りたいって思ってるんだろうけどさ。
『あ~、働いている方でしたか。これは難しい内容ですね。ん~……そうですね、あくまで私なら。ということで話を聞いてほしいんですけど、私なら我慢できる限りは我慢しちゃいますね。で、我慢が効かなくなったら自分最優先で動きます。今回の話ならやめます。周りとか気にしません。だって周りも嫌ならやめればいいんですよ。だから死ぬのはやめてくださいね。死ぬなら私に言ってください。なんと言っても死神ですから!』
「ははっ、途中まで真面目な回答だったのに最後の最後は死神さんだったな」
死神さんの内容になるほどな~。そういう考え方もあるのか。と納得していたらこれだ。
でもこんなところが死神さんの死神さんたる所以だとも思うので気にはならない。むしろ好感触だ。僕もすっかり死神ラジオにハマっているらしい。
『というわけで、今回のラジオはここまで! もし秘密結社ブラックカンパニーさんのように死にたい人がいたらどうぞこのラジオまで! 私が直々に会いに行きます! それでは、明日も生きていたら会いましょう!!』
別に秘密結社ブラックカンパニーさんは死にたいとは言ってなかったんだけど……。なんて思っていたらラジオは終わった。
そしてそれは僕の一日の終わりであることも示している。
また明日も楽しみだ。
次の日。
「わわっ!! もう十二時じゃん! ラジオ始まってるよ!!」
今日は夏休みということもあって一日中友達と外で遊んでいたせいもあってか、僕はすっかりうたた寝をしてしまっていた。
そのせいでラジオが始まるまであと零分。つまりは始まっている。
あまりの出来事に頭がすぐに覚醒した僕は急いでラジオを点けた。
『というわけで、今日も始まりました死神ラジオ』
「よ、よかった……。少し遅れたけどお便りには間に合った……」
なんでか息が切れ切れになりながらもベッドに横になる僕。今度は眠らないように気を付けないと。
『それでは早速本日のお便りです。え~、"夏のニート少年"さんからです。これは夏休みだからニートだという学生さんですかね? それとも本当にニートさんなのでしょうか? まあどちらでもいいです。生きているなら死ねますからね』
いつも通りのブラックなジョークが死神さんの口から飛び出す中、僕は大きくガッツポーズをとっていた。
なぜなら―――
「これ、僕のお便りだ!」
そう。これは僕が送ったお便りだ。
実は僕はラジオでお便りを読まれてみたいという密かな願望があった。
普通なら数あるお便りの中で自分の者が読まれる可能性は低いだろう。
でも死神ラジオなら話は別だ。
まず死神ラジオはまだ始まったばかりの新番組だということ。
そして死神ラジオの特徴として、同じリスナーのお便りは読まないということ。
この二つの条件が合わされば僕なんかのお便りでも読まれる可能性はあるはず。そんな思いで週ごとに応募ができるお便りコーナーにお便りを送っていた。
その願いが今日かなったのだ。
『それでは内容の方へ移っていきましょう。なになに? 僕は学生なのですが、この夏休みのある日、クラスメイトの女子が死んでしまいました。死因もよくわからないらしく、クラスメイトと電話中に突然なくなったそうです。その女子は大人しい性格ではあったのですが自殺をするようなタイプには見えませんでしたし、なんなら好きな人との恋を頑張っていたみたいなんです。そんな生きることに前向きだった女子がなんで死んでしまったのか僕は気になっています。死神さんはどう思いますか?』
これが僕が送ったお便りだ。
この話はつい一週間前の出来事で、僕が死神ラジオを聴き始めたくらいの出来事だ。
突然学校の先生から電話はあって、「○○さんが亡くなりました。お葬式が○日にあるらしいので都合があえば出席してあげて」という連絡があった。
僕とその女子は特別仲が良かったわけじゃない。クラスの雑用があれば普通に話すけど、そうでなければ話さない。その程度の関係だ。
でもさすがにクラスメイトの葬式に行かないのもどうかと思い、家族と相談した上で僕はお葬式に出席した。
その女子が電話中に死んだという話はその時に聞いた。
なんでも大事な話があるから明日会えないかな? という電話だったらしい。
電話の相手は男子だったんだけど、その二人はあともう少しでくっつきそうな関係だったらしい。そのことから大事な話というのは告白だったと誰もが思った。
それはもちろん電話の相手だった男子もで、あまりの後悔にお葬式の間中声をあげて泣いていた。
しかしその男子に誰も声をかけることはできなかった。下手な慰めは逆効果だと思ったから。
「それから気になって仕方ないんだよね。なんで死んじゃったのか……」
失礼な話かもしれないけれど、僕はその男子をどう慰めるかより女子の死んでしまった理由の方が気になっていた。
自分の好きな人に告白をする。僕はそこまでの恋をしたことがないからわからないけれど、かなりの決心が必要なはずだ。それこそ死神さんがよく言う『死ぬ気で』という言葉がぴったりなほど。
それほどの覚悟を決めて明るく楽しい未来を想像していた女子が、理由もなく死ぬのはやっぱり変だ。
聞いた限りの話では自殺ではない。病気もなかった。目立った外傷もない。という極めて不自然なものだったらしい。そんなことから心不全という死因に落ち着いたらしいけれど、両親はそれに納得はしていなかったように見える。
「……死神さんはなんて答えるだろう」
ずっと気になっていた疑問。
心の中でずっと燻っていた小さな火種。
モヤモヤと晴れることのない心の中の雲。
今の僕の心境はそんな複雑なものだった。
特別仲の良かったわけでもない女子の死因が気になる理由は自分でもわからない。
真実が知りたいなんていう探偵気分でも、女子の為にもなんていう善なる心も、なにもない。
本当にただの好奇心。ただ気になったから。敢えて理由をつけるのであればこの言葉以外にない。
「……」
なんでか緊張して息をのんだ。
いつもなんとなく聞いているはずのラジオが今日は何だが妙に重いものに感じる。それは自分が送った内容が内容なんだけれど、そういうことじゃない。……気がする。
『これはなかなか重たい内容ですね。これは私もいつも以上に真剣に答えなければいけないですね。ただラジオのこともあるのである程度は軽い感じに答えることになります。そのことは最初に謝っておきますね。ごめんなさい』
死神さんはそう前置きをした上で話をつづけた。
『ちょっとふざけた回答に聞こえるかもしれないですけど、私の想像では彼女は何かを決心したんじゃないでしょうか? 例えば今回の話の中で恋という単語がありましたね。だとしたら告白をする。とかでしょうか。電話中だったみたいですし、相手がその意中の相手だったとか。それにおとなしい性格の女子という話もありましたね。そんな女の子が告白をする。それは冗談抜きで死ぬ気の覚悟が必要だったんじゃないでしょうか? 告白をするために死ぬ気の覚悟で告白をした。その結果、死ぬ気でやったら死んでしまった。……どうでしょうか? やっぱりふざけて聞こえますかね? すいません』
……なんというか、やっぱり死神さんは死神さんだなという回答だった。
それに最初に死神さんも言っていた。『ラジオのことも考えて少し軽い感じになるかもしれない』って、だからラジオ的にはこれで正解だろう。死神というキャラを忠実に守った回答だった。
死ぬ気でやったから死んだ。うん。死神らしい回答なんじゃないだろうか?
それに僕は死神さんに真実を聞いたわけじゃない。この話の全てを話したわけじゃないし、仮に話していて死神さんが本気で答えてくれたとしても、それは死んでしまった女子の気持ちではなくて、あくまで死神さんの推論だ。真実じゃない。
もっと言えば僕自身がこういう回答が返ってくるんじゃないかって思ってもいた。
だから僕はさっき死神さんが言ったようなことを考えていたんだ。死ぬ気で告白するようなタイミングでなんでその女子は死んじゃったんだろう。って。
『夏のニート少年さん。ご納得いただけたでしょうか? ふざけて聞こえてなら度々ですがすいません。次回も聞いてもらえるなら聞いてもらいたいです。……聞けるなら、ですが。さて、ちょっと暗い感じになってしまいましたが、本日の放送はここまで! 明日も生きていたら会いましょう!」
死神さんはこんな僕の為に何度も謝罪をして今日の放送を終えた。
正直、まだなにも納得はできていない。気になることばかりだ。でも、やることをやったからだろうか、それともラジオで自分のお便りが読まれたという達成感からだろうか。僕の心は少しだけ晴れやかなものになっていた。
「さて、ラジオも終わったし今日も寝ようかな」
いつものルーティーンが終わった僕はラジオを止めて再びベッドに入ろうとする。
すると、部屋の中の気温が一気に下がった気がした。
「やあ、こんにちは。"夏のニート少年"さん」
「……えっ?」
部屋の寒さを変に思っていたら突然声をかけられた。
ただ―――おかしい。
ここが街の中だったら知らない人から話かけられることもあるだろう。
でもここはどこか? ―――僕の部屋だ。僕の一人部屋だ。
「おやおや? あまりの出来事に声も出ませんか? って、ああ、自己紹介がまだでしたね。私です。死神です。いつもラジオを聞いてくれてありがとうございます」
突然目の前に現れた死神という男。
黒のローブで全身どころか顔まで隠し、右手には自分の体と同じくらい大きな鎌を持っている。
声は最近聞きなれた声。あの"声の低い男性のオドロオドロしい声"だ。しゃべり方が名前の割りに丁寧で、落ち着いたしゃべり方。
間違いない――――――ラジオの死神さんだ。
「な、なんで死神さんがここに……」
意味がわからない。
なんでここに死神さんがいるのか。
そもそもなんでこの場所がわかったのか。お便りはサイトのお便りコーナーから出したから個人情報は何も書いていない。なのにどうして……。
「いろいろ気になることもあるでしょうけど、もうどうでもいいでしょう。だって―――」
僕の心を読んだようなことを言った後に、死神さんは不敵に嗤いつつ言った。
「キミは今ここで死ぬんだから」
……え?
「し、死ぬ? 僕が?」
「そうですよ。だって私は死神ですから」
「ぼ、僕はもう死ぬ運命だったの?」
「いいえ、違いますよ? 自分から死ぬ運命に入り込んだのです。だって君は私に声を届けていたでしょう。死神の私に自分のことを知らせていたでしょう」
「し、知らせてなんて……!」
ない。
そう続けようとして、死神さんの言う意図に気が付いた。
僕の届けていた声、それはきっとお便りだ。
「私はあのラジオで殺す人を選んでいたんですよ。選ぶのも大変ですからね。ああやっていれば勝手に死ぬ人が来てくれるわけです。本人の死にたい生きたいに関わらず、ね」
「な、な、なんで……」
「なんでって、それは私が死神だからです。それに君もうすうす気が付いていたんじゃないですか? それとも気が付きませんでしたか?」
「なにを気づけって……」
そう言いつつもなにかヒントがあったのではと、頭の中で最近の出来事を振り返る。
「ん~。待つのも面倒ですね。悪いですけど、さくっと終わらせてもらいますよ」
そう言うと死神は僕の返答なんて待たずに鎌を振った。
その瞬間から僕の意識が徐々に溶けて消えていく。
でも最後の瞬間に僕は死神の言いたいことを悟ることができた。
(そうか。このラジオのお便りで同じリスナーが選ばれない理由。三日前のお便り相談。そしてさっきのラジオの最後の言葉。ヒントはたくさんあったんだ。気が付けるかどうかは別として)
昨夜の十二時半頃、○○県○○市で不審な死がありました。
学生の少年が部屋で死亡していたというものです。しかし少年には外傷、内傷はなく、ご両親の話では病気などもなかったとのことです。
この不審な死と似たような死が最近全国で発生しており、この少年のクラスメイトの少女も数日前に似たような死因で発見されています。警察はなにか大きな組織の陰謀ではないかと対策班を作ったとのことです。
それでは次のニュースです―――。
夏のホラー2022の為に急いで書いた作品です。
ただ今までホラーを書こうと思ったことがないので、本当にホラーなのか自分でも不安です。
最後にちょっとゾッとする。みたいな怖さを出したかったのですが、出せたでしょうか?