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11-36『最悪のシナリオ』

「天能はどこに帰するのか」


 八雲選人は、疑問を呈する。

 彼は研究者として、腕を組んでいた。

 悪意など介入する余地はなく。

 純粋な好奇心で。

 ーーと、見せかけた様子で。

 その根底には、やはり悪意。


『どうすれば雨森悠人の裏をかけるか』


 その思考の延長上で、その疑問が浮かんだ。


「私は以前より気になっていたのさ。天能はどこに帰するのか? 肉体? あるいは脳や心臓といった部位に宿るのか? あるいはーー魂。精神にこそ宿るのか」


 気になった。

 だから彼は、多くを思い返し。

 多くの実験を繰り返した。

 天能保持者を殺すこと。

 死体に天能を確認したうえで、解体すること。

 臓器一つ一つに至るまで解析して。

 ついに、その答えを見つけだす。


「答えは『肉体にこそ宿る』が正解だ」


 天能は肉体にこそ帰する。

 それこそが、八雲選人の出した答え。


 事実それは、天能臨界からも説明できた。

 外に飛び出し、具現化した天能。

 それを指して『天能臨界』と呼ぶならば。

 あの日、あの夜。

 天守弥人の臨界は、死後も継続していた。


 そして、その臨界はどうなったかと考えた。


 そう、壊されたのだ。

 天守周旋の臨界によって。

 木っ端微塵に打ち砕かれて。

 そして、()()()()()()()()()()()


 既に死んだ体に、だ。

 魂にでは無い。

 既にその体に魂はなかった。

 なのに、体に帰った。


「そう、天能とは体に備わるもの。だから、私の【屍】で操った死体は、それぞれ生前の天能を有するわけさ」


 彼の目の前には、ふたつの死体が並んでいる。

 方や、【偽善】を保有する天守弥人。

 そして、もうひとつは【強奪の加護】を持つ、八雲所長の死体であった。


「あの夜、私は天能を八雲所長に奪われた。そう、魂諸共だ。その時点で、八雲所長は天能の複数所持によって命を散らし、彼の絶命によって行き場を失った私の天能は、精魂は、元の老人の肉体へと回帰した。……まぁ、まさかそこで息を吹き返すとは思わなかったがな」


 おそらく、当時の八雲所長に魂を奪う気は無かったのだろう。

 分かっている。そこまで考えた上での強奪ではなかった。

 だが、事実、魂は天能に付随した。

 ……そのため、彼の結論はこうである。


【天能は肉体に帰し、魂は天能に帰する】


 まあ、難しい話ではない。

 ようは、天能は肉体に宿るし。

 天能が健在である以上――何らかの形で、死者の魂もまた健在なのだ。


 故に、かつての海老原選人は死者に殺された。

 愛の亡霊は、果ててなお意地を通せた。

 だって、その体には天能が――魂があったから。


「だから、天能が健在である以上、お前らにもかつての一部……ほんの、僅かながらも魂の残滓が残ってるはずなんだが……同じ失敗を二度も繰り返すつもりはねぇよ」


 もう、制御が緩むようなことは無い。

 死体がたとえ壊れたとて、反逆など許さない。

 そのまま死ねと、ただ告げるだけ。

 八雲選人は、同じ失敗は二度繰り返すほど()()ではない。


 死体が意志を吹き返すことなど、万が一にもあり得ない。


 その上で。

 万全を期した上で。

 彼は、最悪の【強奪】という切り札を手に入れてしまった。


「強奪。物語の最強論争では必ず挙がる能力だよな。あぁ、そりゃ強いさ。生前は『お前ずるいぞ』と何度も言ってしまいたくなったからな。けどよ……」


 だが、それでも。

 強奪は最強であったとしても。

 何事にも『相性』というものは存在して。

 雨森悠人に対して、強奪の相性は最低最悪だった。


「雨森悠人。最初から天能を複数所持、っつー最大の縛りプレイしてやがるクソ野郎。そんなヤツから強奪さんざ、檻から猛獣を解き放つ行為に等しい。……いや、それ以上か」


 雨森悠人から、強奪はできない。

 彼の最大の弱点こそ、偽善の所有なのだ。

 偽善を所持しているから、本来の力が出せない。

 そんな状態でようやっと『勝負になる』というのに、強奪で彼を縛る【鎖】を外してしまえばーーその時は、もう勝ち目など欠片も無くなってしまう。


 天守弥人の死体?

 八雲所長の強奪?


 そんなものは関係ない。

 偽善を失った雨森悠人は、最強なのだ。

 少なくとも、八雲選人はそう判断するし。

 故にこそ、意地でも強奪は使うまいと考えていた。


 だから、八雲所長の死体は雨森悠人には使えない。


 そう、考えていた。



「だが、考えを改めた」



 あぁ、確かに強奪は使えない。

 だから、ほかの使い道を模索することにした。


「ようは、最強の武器を備えた死体だぜ? なら、弄るしかねぇだろ。生きてる人間には絶対にできねぇ様な、机上の空論をぶち込むしかねぇだろうよ!」


 強奪の加護。

 その唯一にして最大の弱点。

 それは、天能を奪った時点で死ぬこと。

 天能の複数所持に耐えられずに絶命すること。


 だが、今は死体だ。

 そんなデメリットは帳消しにできる。


 だから、詰め込んだ。

 

「まず最初に、【与える】天能を八雲に奪わせた。これで天能の複数所持に耐えられるかどうか実験し……成功。続いて、カナエという少女に発現した天能【隠】を八雲に奪わせた。これも成功。三つの天能を保有するに至る」


 だが、これで限界だった。

 幾ら死体とはいえど、四つまでは届かない。

 実験するしない以前に、これ以上は不可能だと八雲の肉体を見て判断した。

 ()()()()()

 天能四つの同時所持は、それ以上ともなれば死体であろうと自滅に至る。


 だが、それでも構わなかった。

 どうせ、他人の死体であるし。

 既に手札は揃っていたから。


「奪う天能だけなら、雨森悠人にゃ通用しねぇ。だが、そこに隠れる天能、与える天能が合わされば?」


 それこそが、八雲選人の最悪のシナリオ。

 雨森悠人を確殺するための、奥の手。

 奪う、ことでは殺せない。


 だから、()()()()()()()()()()()()()


「最後の戦い、烏丸冬至の『体内』へと八雲所長を潜ませておき、私と天守弥人、そして烏丸の三名で彼を削る。その上で、烏丸を雨森悠人へ突っ込ませる」


 それは、特攻でも何でも構わない。

 近くに寄れれば、それでいい。

 あとは、不意を衝くだけだ。

 雨森悠人に、いずれかのタイミングで八雲所長の死体から『天能』を送り込む。


 そうなれば、あとは自滅。


 天能の複数所持。

 それは本来、人の身では耐えられぬ禁忌。

 生きていること自体が奇跡。


 故に、それをさらに加速させる。


 三つ、四つ、なんだったら全てでもいい。

 八雲所長の抱える天能を、全て渡す。

 その時点で、彼の肉体は……もうお終いさ。


 即死。

 あぁ、雨森悠人はそこで死ぬ。

 確実に殺せる。



 ……そう、思っていた。




 ☆☆☆




「けどよぉ! 欲しくなっちまったんだから仕方ねぇよなァ!?」


 唐突に、八雲選人はそう叫ぶ。

 理解が追いつかなかった。

 この男は、いきなり何を言っているのか。

 眼前の天守弥人を相手取りながら。

 僅かな思考を、そちらへ割いた。


「……ッ」


 しかし、そのような『余所見』は続かない。

 なんせ、相手はあの弥人だ。

 生前ではないとしても。

 全盛期ではないにしても。

 能力は割れているにしても。

 それでもなお、十分すぎる程の脅威。


「『()()』」


 翼の一つが、色褪せる。

 と同時に、弥人の右手に武器が握られた。

 その光景を見た瞬間、背筋が凍る。

 ……だって、その能力の脅威は、誰より良く知っていたから。


「【銃】か……ッ!」


 雷、透過、そして、銃。

 よりにもよって天守優人が使った力。

 その模造品とは言えど、その力をよく知っている身としては全力で回避に走る他ない。


 放たれる散弾銃。

 至近距離ではまず回避が間に合わない。

 咄嗟に【星】で防ごうと動き始めるが、放たれた弾丸を見て思わず鼻じらむ。


 その理由は簡単だ。

 その弾丸が、想定していたほどの脅威ではなかったから。


 確かに、偽善で造られたものだ。

 天守、橘の肉体を傷つけられる程度には威力も速度も増されている。そういうふうに造られている。


 ーーだが、【オリジナル】ほどでは無い。


 雷を放ち、周囲へと道を作る。

 弾丸ーー金属の塊は僅かながらも道へと誘導され、僕の周囲を抉るに終わる。

 はず、だったのに。


 弾丸の内1発が、肩を貫く。

 鮮烈な痛みに目を剥く。


 その事実に驚く余裕すらなく。

 雷の道を突っ切り、弥人が迫る。


 その身には、僕の雷による火傷が見えた。


「……まさか」


 答えに至ると同時に。

 僕の頬を、弥人の拳が撃ち抜いた。


 あまりの衝撃。

 咄嗟に後方に飛んだのも焼け石に水だったろう。

 僕の体は数メートル弾き飛ばされ、何とか地面へと着地する。


「まさか……弾丸すら透過できるのか……ッ」


 その可能性を考えつつ、血反吐を吐く。

 ……決して、軽視していいダメージでは無い。

 だが、この段階で『その裏技』に気づけた。

 なら、致命的でなかっただけ十分と割り切ろう。


 僕は再び、頭の中で計算を立て直す。

 武器への透過付与。

 随分とまた厄介な能力を……と。

 そう考え、視線を目的へとスライドさせる。


 八雲選人。


 僕が殺すべき相手。

 弥人を相手しながらも。

 朝比奈を守りながらも。

 常に、殺せる隙が無いものかと狙い続けた。


 そんな相手の、嫌な笑顔が目に入って。


 背筋に、凍りつくような震えが走る。



「おいおい雨森くんよォ? 後ろの彼女、そろそろ気にしなくていいのかよぉ?」



 嫌な予感。

 胸の内を塗り潰したのは、最悪の可能性。

 僕の後ろには誰がいる?

 朝比奈。

 そして烏丸だ。

 烏丸では、どう足掻いても朝比奈には勝てない。

 なんてったって、今の彼女は僕より強い。

 なら、問題は無い。



 ――……本当に?



 本当に、問題は無いのか?

 僕は、何かを見落としては居ないか?

 何かを。


 ……いや、()()()


 八雲選人が持つ手札。

 それを、改めて頭の中に並べ直して。

 ただ、一人。

 まだ使われていない【駒】に気づく。


「ま、さか――ッ!?」


 後ろを、振り向く。

 任せていたはずの、その背中。

 問題ないと、信じてしまった。

 守ると誓った正義の味方を、振り返り。


 ぐっさり、と。


 その胸を貫かれ。

 血反吐を吐く少女の姿を見た瞬間。


「……あ、ああ、ぁぁぁあ……ッッ!」


 絞り尽くすような、絶望の声。

 それが、自分の喉から出ているものだと、咄嗟に理解ができなかった。

 ただ、見入ってしまった。

 その絶望に、その光景に。

 その一瞬を、天守弥人は見逃さない。


「が……っ」


 触腕による、一閃。

 側頭部を、寸分違わず撃ち抜かれる。

 薙ぎ払うような一撃に、体は横っ飛び。

 病院の壁へと深々と突き刺さり、全身が脱力する。


「ち、力……が……」

「限界だよ、限界ィ! 初っ端から異能二人分かかえて突っ走って来たもんなぁ! その上で無茶を重ねて……まだ元気に動けるわけねぇだろう!」


 喧しい声。

 されど、視線はそちらへ向かない。

 ただ、刀で貫かれた少女を見据え。

 僕は、全身へと力を込める。


「あ、あさ、ひな……ッ」


 朝比奈霞は、常人である。

 天守でなければ、橘でもない。

 出生に秘密などない。

 人体実験で改造もされていない。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 刀で貫かれる。

 僕にとっては、軽傷に過ぎずとも。

 彼女にとっては、あまりに大きすぎる致命傷。


 死ぬ。

 朝比奈が、死ぬ。


 最悪の未来が脳裏を過ぎる中。


 串刺しにされた、正義の味方は。



 それでも僕を、振り返ることは無かった。



「ようやく……姿を見せたわね……!」



 朝比奈の動きは、重傷人とは思えないものだった。

 烏丸の体内へと極小の雷を放ち、ソレを釣り糸に見立てて【何者か】を引きずり出す。


「が、あぁぁぁぁああああ!?」

「烏丸君! 少し辛抱なさい!」


 痛みに叫ぶ烏丸へ声を上げ。

 朝比奈は、その男を表舞台へと引きずり出した。


 黒髪に、死体のように真っ青な肌。

 もう、意識などないのだろう。

 けれど、その男を僕は確かに知っていた。



「……八雲所長」



 その姿を目視し、全てを理解すると同時に。

 朝比奈の姿を見ていた八雲選人は舌打ちを漏らす。


「チッ! 能力があまりにも強すぎたか……一度の強奪で奪えたのは半分ってトコだな」


 ()()()()()()()

 その言葉を受け、歯を食いしばる。

 僕は、何をしている。

 何が守る、だ。

 何が背中を預ける、だ。

 何も出来ちゃいないだろうが。


 怒りが全身を包み込み。

 限界などとうに超えていた肉体に、力が宿る。


「……おいおい、まだやる気かよ糞ガキ。もう無理だって分からねぇか? まだ四つ残してる天守弥人、雷を奪いつつある八雲所長。んで、俺まで残ってて……満身創痍で勝てるわけねぇだろ?」

「……あぁ、傍目には、そう見えるかもな」


 僕だってそう思うさ。

 状況があまりにも悪すぎる。

 八雲選人の悪意は僕の想定を超えていた。


 だけどさ、悪党。


 悪いが、うちの正義の味方は諦めてなさそうなんでね。


 こちらを一瞥もしない少女を見て。

 僕なら大丈夫だと、絶大な信頼を向ける少女から視線を外して、僕は再び立ち上がる。



「けど、アイツの前で格好悪い姿は見せられなくてな」



 他の誰に弱音を吐いても。

 どれだけ弱った姿を見せても。

 せめて、朝比奈の前だけは……な。

 彼女が憧れた『僕』として、生きていたい。


 絶望を押し殺し。

 不安も不満も踏み潰し。

 雷を纏って、大地を蹴る。


「相変わらず……往生際が悪ぃな、テメェは!」


 僕の拳を、天守弥人が受け止める。

 透過は無い。

 僕の拳を真正面から受け止めて。

 その衝撃に、大きく体を後退させる。


「往生際? 亡霊相手に、死に際を語るなよ」


 こちとら天守の亡霊さ。

 死期など、とうの昔に超えている。

 奇跡に奇跡を重ねて執念の上に生きている。

 そんな亡霊に、お前は何を語るんだ?

 思わず鼻で笑い、後退した弥人を見据える。


 ふと、握りしめていた右手を開く。

 握っては、開いて。

 数度くり返して、また拳を握る。



「……()()()()()()()()()()


「……あぁ?」



 僕の呟きに、八雲が反応する。

 と同時に、周囲の地形が一変する。


「――ッ!?」


 それは天変地異。

 周囲の病院そのものを飲み込んで。

 上層の入院患者は、そのまま階層ごと他へと運び。

 大地からせり出した大量の岩が、それ以外の全てを飲み込み、整地する。


 まるで、周囲を岩に塞がれた闘技場。

 何人も、これより先立ち入ることも逃げ出すことも許さない。

 この場にいる面々だけで、全てを終わらせる。

 そういう決意の元、生み出した『決戦場』。


「こ、れは……ッ」

「思えば、まだ使い慣れてない能力でな。この局面に至って始めて、やっと使()()()()()()()()()()


 僕の【星】は確かに強力さ。

 けれど、使う機会が全く無かった。

 故に、使えてはいても、使いこなすまでには至らなかった。……今、この瞬間までは。


 肩を回して、首を鳴らす。

 たったそれだけの動作。

 それに、八雲選人は過剰と呼べるほどに警戒を示す。


「誰かが言った。天能ってのは、自由だと」


 誰が言ったのだったか。

 まぁ、誰でもいいのだけれど。

 やっとこさ、僕は【星】を自由に使える。


 これから先が、僕にとっての【本番】だ。



「さぁ、どっちが強いか比べ合いだな、兄さん」


「ゆ、――と」



 ついぞ越えられなかった、かつての兄を目の前にして。

 僕はふと、背後が気になった。


 朝比奈は大丈夫だろうか。

 刺されていたが、死にはしないだろうか。

 そういった不安が、なかった訳では無い。


 だが、先程の彼女を思い出し。

 そんな心配は、思考の彼方へ吹き飛んだ。


 なんてったって、今の彼女は正義の味方だ。

 辛いだろうし、苦しいだろうし。

 そりゃあ苦戦するだろうけど。


 でも、大丈夫だと、今の彼女を僕は信じる。


 根拠なんてない。

 ただ、()()()()()()()

 それだけの理由で、僕は後顧の憂いを断つ。




 ☆☆☆




「きっと、振り返りもしてないでしょうね……」


 私は刺された胸を抑えて、息を吐く。

 痛い、苦しい、辛い、死んじゃいそう。

 たくさんの感情が頭を占めて。

 その全てを、傷口に雷を走らせることで鏖殺した。


「ぐ、っ……」


 傷口を焼いて、応急処置。

 もう、本当にただの手当に過ぎない。

 手当したところでどうにかなる傷では無いし。

 きっと、おそらく。

 一度でも倒れれば、私はもう立ち上がれない。

 そう確信できるだけの、致命の一撃だった。


 けれどね。

 致命だったから、何よ。

 痛いから何、血が出てるから、何が変わるの?

 私がここで倒れたら。

 私がここで負けちゃったら。

 私に背中を預けてくれた彼を、誰が助けるの?


「諦められない」


 諦めたくない。

 諦めるわけにはいかない。


「クソが……全部奪えてねぇじゃねぇか!」


 目の前に出てきたのは、見たことの無い男性。

 けれど、その声が、その喋り方が。

 八雲選人のモノとそっくりだった。


「……強奪、ね。何となく、半分くらいは今ので異能が奪われた感じかしら? 随分と手札が豊富なのね、貴方は」

「うるせぇよ糞ガキが。俺に与えられた分際で、俺より優れた能力に恵まれたんだ。黙って親に還元しろや糞味噌が!」

「ごめんなさいね、あなたみたいな親は御免よ」


 あなたに家族がいたら申し訳ないけれど。

 私は貴方の娘では無いし。

 尊敬しているわけでもなければ。

 無償で与える気もサラサラ無いわ。


 私は拳を構える。

 雨森くん……の、加勢に向かえる余力があるかは微妙だけれど。せめて、この偽物は私が倒さなくちゃいけないわよね。

 彼の背中を守るんだから。

 彼は一切、傷つけさせない。



「来なさい悪党。奪うより先に滅してあげるわ」



 例え、全てを奪われたとしても。

 ここで、この男は確実に止める。


 それが、朝比奈霞のこの局面での【役割】なのだと、私は何となく直感していた。

これが、最後。

この男と戦えば、何も残らない。

そういった確信があった。

私の【雷】は奪われる。

何も、私には残されない。


けれど、それでいいと思った。


それで、彼を守れるのなら。

私はなにもかも、投げ出せる。



次回【朝比奈霞】



彼の隣に立てたのは、ほんの一瞬。

なら、最後まで後悔は残さない。

この一瞬を燃やし尽くして。

全身全霊で、彼を守るわ。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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[良い点] マシマシ更新きちゃ 海老さんとんでもないこと考えるなぁ 尊敬する [気になる点] 後書きが不穏ですの…… [一言] 朝比奈の次は彼が来るかな
[良い点] これはもしや、この海老原は本体だからこいつ倒せば勝ちということでは?やっちゃえ雨森君 [気になる点] そういえば、八雲所長ってフルネーム出ずにお亡くなりに? [一言] 海老原色々計画練って…
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