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10-39『最後の会話』

そして、物語は終幕へ。

 その少年を見つけたとき。

 最初に感じたのは――落胆だった。


 嫌な予感はしていた。

 弥人がその少年を【一番危うい】と評し。

 それを回避すべく歩んだ弥人も、僕がこの手で死を贈った。


 ……きっと、選択を間違えたのだろう。


 弥人に、もう少し時間を使わせてやるべきだった。

 あの男なら、きっとその少年を正しく導けた。

 僕の頬を叩いた時のように。

 間違った道に進もうという少年を、正せたはずだ。


 時間ならあった。

 弥人は、まだしばらくは生きていられたはずだ。

 彼には少年を直せる余裕があったと思う。


『でも、そうしたらあの子たちの何人か、たすけられてなかったよ?』


 頭の中で、子供の声がそう語りかける。

 その子供は、クレヨンを片手に座っていて。

 真っ白な画用紙に、ぐちゃぐちゃな絵を書き連ねていた。


()はただしい選択をした。あれ以上悩んでいたら、したいのかずが増えただけだよ』


 そうかもしれない。

 弥人の臨界ーー奇跡開帳(アルヒテラス)

 どれだけ奇跡的な効能も、過ぎた死体には効果は無い。

 ただでさえ、研究者の多くが助けられなかったんだ。

 あれ以上、弥人に時間を使わせていれば……どれだけの人が『手遅れ』になっていたか分からない。

 間違いなく……もっと、ずっと多くの人たちが、血だまりの中で終わっていたはずだ。


『僕が弥人をさっさと殺したから、彼らが生き延びた。弥人は人をたすけられた。その助けた人たちが、さっきは僕を手当てしてくれた。ほら、僕はなにもまちがったことはしてない』


 ふと、その子供は僕を振り返る。

 否、その目は僕の先にいるその少年を見据えていた。



『分かってるだろ、間違ってるのはあの野郎の方だ』



「……そうだろうな」


 頭の中で自己完結し、思わず苦笑する。

 どれだけ自分を低く見積もろうと。

 どれだけ自分の行動を否定しようとも。

 結論はやっぱり変わらなかった。



「戻ってこい。お前は道を間違えている」




 ☆☆☆




「えっ、嫌だよ」



 その少年は――志善悠人は笑顔で首を横に振った。


「言ったじゃんか。僕を殺せって。僕は君にとって悪いことをする。君の望まない方向に進む。だから、それが嫌なら僕を殺せ。君のためを思ってそう言ったろ」


 その言葉を思い出す。

 ……ああ、そうだったな。

 きっと、この場に至るまでの重要な分岐点は二つあった。

 弥人の死に様の選択。

 そして、志善を殺すかどうかの選択。



「それを拒絶したのは、お前だ、優人」



 そう突きつけられて、僕は思わず鼻で笑った。

 僕の様子に不思議な顔をした志善に対し、贈る言葉を迷うことはなかった。


「当たり前だ。僕はお前を殺さない。……僕はただ、お前を連れ戻しに来ただけだ」

「……っ! つくづく、甘いよね……優人はっ」

「何をいまさら。僕は家族には甘いんだ」


 おかげで、妹はいつまでたってもマナーが悪いし。

 兄にだって、ケーキが出たときはイチゴを分けてやっていた。

 きっと、家族以外にはこんなに甘くないと思うぞ、僕。

 橘や朝比奈が家での僕を見たら、きっと驚くんじゃないかな。


「ふざけるなよ……僕は死ぬまで止まらないぞ、天守優人!」


 ふと、志善が怒っていた。

 死ぬまで止まらない……か。

 子供みたいな言いぐさだな。

 まあ、実際に僕たちは子供なわけだが……。


「口喧嘩でマウントを取りたいならそう言えよ。ほら、譲ってやる」

「……っ! こ、この――」

「お前と兄弟喧嘩するのも始めてだ。好き勝手やっていいぞ」


 思えば、志善とは一度も喧嘩らしい喧嘩をしたことが無かった。

 この家に来た当初は胸倉をつかんだりもしたが、それっきり。

 僕はこいつを許したし、こいつも僕をいつだって許した。

 僕ら二人に不和なんてなかったし、これからもそうだと思ってた。


 けれど、考えてみればそれは不自然なことだった。

 なんせ兄弟。

 喧嘩して上等の血縁関係。

 こんなに平和だと、逆に兄弟らしくないだろう。

 だから、さ。


「ほら、喧嘩をしよう」


 生き死にとかは関係ない。

 ただの兄弟喧嘩をしよう。

 兄として、全部許す。

 好き勝手に暴れてみろよ。


 ちなみに僕はそれら全部まとめて飲み込んで。


 兄らしく、大人げなく弟に勝つつもりでいるから。



「……本当に、気持ち悪いよ、優人は」



 ふと、酷いことを言われた。

 ちょっと傷ついた。

 言っていいことと悪いことがあるだろ。


「辛いんだろ、苦しいんだろ……! 君が誰より好きだった兄を、僕のためにと自分の手で蹴り捨てた……! なのに、どうしていつも通りの君なんだよ! 辛い顔も苦しい素振りも一切見せず、どうして君はそうも重みを背負う!?」


 その言葉に、目を丸くした。

 ……まあ、確かに。

 そういった感情を表に出さないようにはしてるさ。


 父さんが己を殺して冷酷に徹したように。

 天守として生きるには、鉄仮面が要る。

 自分を殺すための外面が要る。


 ……けれど、まあ。

 お前になら、僕の本音を話してもいいか。


「ああ、そうだな。弥人が死んだときは……辛かったさ」

「な、なら――」


 素直な返事に、志善の顔に希望が浮かぶ。

 なので、僕はその希望を真正面から切り捨てた。


「けれど、その先には何もないんだよ。失った先は何にも繋がらない」

「…………はぁ?」


 僕の言葉に、少年は首を傾げる。

 理解できないと言った風に、困惑をぶら下げ僕を見据える。


「悲しい、辛い、憎たらしい。そういった感情は確かにある。だが、それを向ける先だけは間違っちゃいけない。悪いのは海老原選人だ。彼以外に僕らの個人的な感情を押し付けるのは間違っている」


 ……ああ、そうだな。

 自分で言ってて、弥人でも同じことを言うだろうと思った。

 怒りはある、憎悪もある。

 海老原選人だけは確実に殺す。

 けれど、それは彼個人へと向けた報復であって。

 それに、他の誰かを巻き込むわけにはいかないんだ。


「一度は世界を恨みかけた。ぶっ壊してやるってな。……けど、駄目なんだよ。今までの幸せも、今日の不幸も、全部まとめて僕たちのモノだ。それを、他人に背負わせるわけにはいかない」


 志善を見据える。

 詳しくは分からないけれど、きっと、お前はそっちの道に進んだんだろ。

 僕が進もうとして、弥人に止められた道に、お前は歩き出した。

 世界を恨んで、この世界へと八つ当たりを決め込んだ。

 ……否定はしない。こんな世界は僕だって嫌いだ。


 けれど、そこに暮す人々まで嫌いなわけじゃないんだ。


 恋がいる。

 セバスがいる。

 橘がいる。

 朝比奈がいる。

 烏丸、幾年、小賀元。

 それに、お前も居る。


 この世界は嫌いだとしても。

 お前たちを嫌いには、どうしてもなれないんだ。


 だから、お前の考えを否定はしないが、賛同もしない。


 僕は天守。

 民の味方として、神から人を守った一族。その末裔。

 である以上、最初から……僕の答えなんて変わらない。




「僕は正義の味方だ。お前の悪には加担できない」




「…………」


 希望から一転、少年の額に青筋が浮かぶ。


「……なに言ってんの?」

()()()()()()()()()()()()()、見ればわかる。お前は自棄(ヤケ)になってめちゃくちゃに騒ぎ立ててるだけのガキだよ。善悪の区別もつかない、ガキンチョだ」


 ぎょろりと、光の失った瞳が僕を捉える。

 見ていて気持ちが悪くなってくるようなその瞳。

 しかし、僕は視線を逸らすことなく最後まで言い切った。


「見てて気持ち悪いのは、お前の方だ」


 特にその目。

 なんか父さんみたいですごく嫌だ。

 そういう思いを込めた言葉に……しかし、志善は動じない。

 大きく息を吐いて、落ち着きなおしているようにも見えた。


「……うん、さすがに相手が悪いよ。そりゃ勝てるわけなかった。いくらいろんなことを知ったにしても、優人に口喧嘩で勝てるわけが無かった。素直に負けを認めるよ」

「ああ。負けを認めたんならさっさと帰るぞ」


 そういって、僕は踵を返す。

 今日は忙しいんだ。片が付いたなら、次に移る。

 父さんを探し、海老原を殺す。

 その道中で恋と合流できたのなら最高だが……。


 そう考えて歩き出した――。





 ――その僕の眼前へと、雷が落ちた。




 黒い雷だ。

 威力もそうだが、あきらかに天然のモノではない。

 凄まじい衝撃に大地が揺れる。

 僕はゆっくりと振り返ると、その少年と目が合った。



「口喧嘩では勝てないけど――これは殺し合いだろ、天守優人」


「……話、聞いてたかお前」



 呆れを返すが、それよりも早く雷が飛んでくる。

 セバスとの戦闘で速度に目が慣れていたのか、少し余裕をもって躱せた。

 ……にしても、余波だけで衣服が少し裂けている。

 直撃すればどれだけの威力だったのか……ちょっと考えたくもない。


「お前な……」

「説教なんていらないんだよ優人。僕はもう曲がらない」


 ふっと、目の前へと黒い渦が浮かぶ。

 嫌な予感に背筋が震えた。

 ここに来て初めて……明確な殺意が体を貫く。


「……ッ!」


 遠方より弾丸が飛来する。

 針穿つ遠吠えピンショット・ハウリング

 一度はセバスの頭骨に阻まれた一撃だが、威力は絶大。

 弾丸は寸分たがわず渦の【核】を貫き、目の前で攻撃は不発に終わる。


 ……そう、終わったのはいいのだが。


 志善の様子を見る。

 今の弾丸はこいつにとっても初見だったはずだ。

 事実、僕以外にこの技を知っているのは実際に喰らったセバスだけ。

 それ以外には誰一人として知ることのない、僕のとっておきだ。

 それを前に、この男は――。



「一撃放てば全壊、だったっけ? 一丁で一発しか打てない欠陥銃」



「……っ!?」


 誰にも話していないソレを、志善は口にした。

 ……知っていた?

 なら驚きがないことも納得ができるが、けれど、どうやって知った?

 疑問が脳内に溢れる。

 と同時に、彼は山の方へと視線を向ける。


「今ので一発、セバスに一発。優人が作れた特製品は合計三丁。あと一発だね」

「……どうやって知った、この野郎」


 間違いない、こいつは僕の切り札を知っている。

 知った上で、僕の切り札を消耗させるために攻撃してきた。

 思わず苦笑して問うと、彼はこめかみに指を当て悩む。


「うーん。説明が難しいんだけど……簡単に言えば【星に残った記憶を読んでいる】って感じ? あ、そうだ。分かりやすいように優人にも見せてあげるよ」


 意味不明なことを言って。

 志善は、僕へと右手を構えた。



「これでもう、()()()()()()()()()()()()なんて、無責任なことは言えないだろ?」



 悪寒に背筋が震える。

 咄嗟に後方へと飛んだ。

 と同時に、その【攻撃】はやってきた。




「【星の記録(ライブラリ)】」





 変化は唐突に。

 脳内に、大量の()()が混入した。


『どうして人を救ってはくれない!』

『かの神は悪である!』

『しかし、人の身で神は殺せぬ!』

『ならば、悪魔に身を売ってでも……』

『これからは、我等は天守と名乗ろう!』

『なんという悪逆!』

『天守は既に堕ちた』

『ふむ、橘が人間の味方になるとはのぉ』

『隠ぺいせねばならぬ』

『あなたが殺すの。分かった?』

『どうして。どうして』

『母上。どうして私を愛してくれないのです』

『シャラップ!! うるさいわねアンタ!』

『まだ、僕は生きて――』

『嫌だ、嫌だ、死にたくない!』

『どうして、なんで?』

『殺してやる、絶対に……ッ!』


 それは、幾千幾億幾兆――それ以上の『人』の記憶。

 今まで積み重ねてきた、人の歴史。

 代々生き連ねてきた先人たちの、生きてきた記録。


『私は天守とも仲良くしたい』

『なんという吉兆、悪魔の子じゃ!』

『名を克也』

『ケヒヒヒヒ……今度はどうしてやろうか』

『気持ち悪い』

『友達』

『天守くん』

『体が痛いよ……助けてよ』

『お姉ちゃん帰ってこないね』

『暗い、暗いよ』

『もうやめて』

『殺してくれ』

『ああ、ああああああ!』

『くそっ、こんなはずじゃ……』

『間に合えばいいが……』

『だめだ……終わりだ』

『神なんていない……もう、信じられない』


 ずっと昔の記憶から。

 今の、生きている人の記憶まで。

 全て、一滴残さず全てを脳内に叩き込まれる。


 人の脳は、どれだけの負荷に耐えられるのだったか。

 人間の一生では到底埋められぬだけの性能はあると聞く。


 けれど、仮にそれが複数の人生であれば?

 もっと多く、たくさんの人間の『一生』を叩き込まれたのなら?

 人間の脳は、果たして……それらに耐えられるものなのだろうか。


『嫌だ、嫌だ』

『こんな世界なんて嫌いだ』

『僕なんてどうだっていいんだ』

『彼らは幸せにならなきゃいけない』

『僕しかいない、僕にしかできない』

『どれだけ敵を増やそうと』

『どれだけ世界から憎まれようと』

『僕は、彼らが幸せになれる世界を造る』


 想いが、記憶が。

 濁流のように押し寄せる。

 全ての情報を、強制的に知らされる。


「あっ、ごめーん。ちょっと多すぎたかも」

「が、は……っ」


 気が付けば視界は赤く染まり。

 脳が焼けるように熱く、鼻からはぼたぼたと血が滴る。

 既に記憶の濁流は止まっている。

 きっと……たぶん、志善が止めた。

 そうでなければ……間違いなく、僕の脳は壊れていた。


「分かったろ優人。僕の想いも考えも、やりたいことも。それに――」


 志善は僕を見下ろしている。

 傷一つないその顔で。

 多量の血を流す僕を見下ろしていた。




「僕、もう優人より強いんだよ」




 彼の言葉を受け。

 受け取った情報を読み返し。

 ()()()()()()()()()()()、と。

 思わず苦笑し、顔の血を拭う。


 頭が痛い。

 思考がまとまらない。

 強烈な情報の塊が、処理も出来ずにまだ脳内に残っている。

 それでも、ひとつ、またひとつ。

 重要なものから開いていけば、現状は読み取れる。


「……天能変質。名前は【星】。加えて常時、臨界の状態か」


 反則もいいところ。

 一成さんのように、発想と工夫で最強になったのではなく。

 純粋な天能の性能にモノを言わせて、無理やり最強を掴んだ男。

 まるで僕とは正反対だ。

 天能に恵まれず、世界に疎まれた僕と。

 天能に恵まれ、世界に祝福された志善。

 ……そりゃあ、どっちが勝つかなんて子供でも分かる。


 けれど、才能が違うからって。

 土台が違うから諦める……だなんて。

 そんな簡単に諦めついてたら、僕はここには立ってない。


 諦めず、挫けず。

 どんな逆境でも前を向いて走ってきた。


 この先も、その生き方だけは曲げるつもりもない。


「【星の記憶(ライブラリ)】……か。随分重い技を使ったじゃないか」

「…………」


 僕の言葉に、志善は何も返さない。

 本来であれば術者本人だけが読み取れる記録の海。

 彼の脳内とは別な場所に保管された書の大海。

『星の記録』という技は、その海に揺蕩う情報を、()()()()()()()()()()()()()()のだと、今知った。

 つまり、志善は一度、僕が受けた【情報】をその身で経由している。


「術者本人だ。そりゃあ、僕よりは耐性だってあるだろう。……だが、それにしても情報量が多すぎだ。天守の僕がパンクしかけたほどの情報量。……いくらなんでも、人が経由するには多過ぎる」

「そうだね。確かに頭が痛いよ。……でも、君ほど限界なわけでもない」


 それに、と彼は両手を広げる。

 その顔に浮かぶのは余裕の笑顔。


「この自傷と、君に贈った【星】の情報……」

「……ハンデのつもりか?」

「うん。初見で僕が負けるとは思えないからね」


 鼻腔に残った血を抜いて、ゆっくりと立ち上がる。

 ……そうだな。確かに今知ったお前の能力……いきなり、何の情報もなしに対処しろと言われたら難しかったかもしれない。だが、お前にそこまで断言されると少し腹も立つ。


 僕は大きく深呼吸すると、志善は目を細めて僕に告ぐ。


「僕の想いは全て伝わっただろ? なら、僕から君に言いたいことは一つだけだ」


 彼の願い。彼の想い。

 それらは……認めがたいが、全て天守優人の幸せに向いていた。

 僕を、僕らを幸せにするために……って。

 純水のように綺麗な想いを拗らせて、たどり着いたのは未開の狂地。

 知れば知るほど、狂気に背筋が震えてくる。



 こいつの目的は……正常通りの【臨界】を成立させることだ。



 今はこの星が邪魔をして【星の恩恵(スターズ)】なんていうバグが生まれている。

 だから、邪魔な地球(モノ)は消す。

 跡形もなくこの星を消す。


 そして何も、誰も居なくなった黒い宙で、本来の天能臨界を展開する。

 天能を具現化し、新しい星を創り出す。


 それこそが、この男の想い描く【新世界の創造】だ。


 自分が思う通りに。

 自分の願い通りに。

 幸せだけがある世界を天能で造る。


 そこにはきっと、僕らが生きているのだろう。

 天守家があって。

 父さんも母さんもセバスも。

 弥人も、恋も、そして僕も。

 みんな揃って、平和に暮らしているのだろう。


 きっと幸せだ。

 みんな揃って暮らせるのなら、それ以上の幸せはない。



 ――けれど、そこに生きる【新しい天守家】はきっと今の僕らじゃない。



 どれだけ似ていようと。

 見た目も中身も同じであろうと。

 この場所で生き、意地を通して散っていった。

 そんな、誇らしい両親や、兄とは絶対に違うのだ。


 そして当然、僕や恋も――。




「僕に従え、天守優人。君を世界一幸せにしてやる」




 その言葉に、思わず吹き出す。


 どこかで少女漫画の情報でも拾ってきたか?

 随分とメルヘンチックに、彼は【黙って死ね】と僕に言う。


 当然、そんなことを言われたのなら、僕の答えなんて一つだけ。




「うるせぇよメンヘラ。僕の幸せは自分で決める」




 少なくとも、そんな偽物なんかより。


 残酷で寂しくても、誇らしい。


 そんな現実を生きたいと……僕は思うよ。


【嘘なし豆情報】

〇強くし過ぎたかもしれない【星】の能力設定。

①自然災害の支配

自然の加護から強化された、風や雷、霧など。

進星転(ラプラス)

対象の時間を強制的に進める能力。反則。

遡星転(マイナス)

対象の時間を強制的に戻す能力。チート。

④???

任意の空間に虚無の黒点を生み出す。

ブラックホールに等しい引力と宙をも焦がす熱量を内包し、喰らった相手は基本的に死ぬ。星が生み出せる最大火力技。

周旋や海老原に使ったのはこの技。

手加減してあの威力なので酷すぎる。

記憶盤(ステラレコード)

この星に存在する全ての記録が保管された情報の図書館。

未来は読めないが、現在と過去ならすべてが見れる。やばい。

星の記録(ライブラリ)

自分を介して他人に情報を与える補助能力。

ただし、情報の量を増やして悪用すれば、簡単に相手の脳を破壊できる。

五条悟の無量空処を真似したいときにおすすめ。

星の生誕(オリジン)

地球が存在しない場合のみ使用できる本来の臨界。

天能を体外に放出、具現化することで新しい星を生み出す。

思うがままの世界にできるので、新世界の神になりたい人はおすすめ。


『総評:あまりにも強すぎる』



☆☆☆



絶望的な戦力差。

誰が見たって、あいつが勝つと考える。

きっと、僕が第三者でもそう見るだろう。


けれど、負けられない理由もあるのさ。


僕の代わりに彼を導いてくれる人は、もう居ない。

間違った道に進もうとするなら、僕が正す。

誰かを傷つけようとするなら、僕が叱る。

志善悠人は、僕が止める。


……なんてったって、僕は正義の味方で。

それ以前に、お前のお兄ちゃんだから。


なんの容赦もなく。

大人気なく、平気な顔して勝つつもりだよ。




次回【銃VS星】




決着まで、あと3話。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
⑥記録版って、理の教本に似てますね。
[良い点] 非常に面白いです。 私も、こういう異能ものを書きたいなぁって思うようになりました。 設定一部流用してもいいですか?さすがにまずいかな。 [気になる点] ①「星の生誕」についてなんですけど、…
[良い点] 毎週更新を楽しみにしてます。 [気になる点] ・屍の加護を用いて自我を残した死体を作った場合、屍の加護の持ち主が死亡するとその死体はただの死体に戻りますか? ・強奪の加護の出力はどれくらい…
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