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愛着

作者: 綿花音和

 昨夜、彼氏の誕生会をしました。鍋とロールケーキでお祝い。誕生日プレゼントはジャケット。彼が動きやすいようにサイズは余裕を持たせました。

 出会って九年が経ってしまいました。彼より七歳年上なのは変わりません。付き合い初めて長い間、覚悟を持てませんでした。彼は素敵な人なので、この先より相応しい人が現れるはず。私は彼の人生を通り過ぎる人間だと。 

  

 自分すら信じられないのに誰かと未来を築こうとするなんて、許されない。私は幸せになるのが怖かったし、一度手にした温もりを失う覚悟を持てなかったのです。

 そう考えていたのに、彼は投げやりな私に愛情を注ぎ続けてくれました。

 付き合い始め、人並みに出来ることが少ない私に、根気よく手伝いながら家事を教えてくれました。まだ十分ではないけれど、おかげで上達したと思います。

 仕事を無理し疲れが出始めると『飯食って寝ろ』とLINEには一言でも、家にまで訪ねてくれる人。

 

 私には生きることより、死が身近でした。自分を大事に出来なくて、人に優しくしているようで無関心。苦しくなると、立ち向かわないで、逃げてばかりでした。

 今は、彼と死ぬまで一緒にいられるならしんどくても生きていきたい。彼が別の誰かと一緒になる未来は見たくないです。

 望まず諦めるのは、もう止めます。幸せになる覚悟はそれを失う覚悟も必要とするのだと感じます。


 今年九月主治医との面談で言われました。

「やっと彼氏さんを愛せるだけの信頼関係を結べたんじゃないかな。どんな未来が待っていても、この九年間が失くなったり、無意味にはならないから」

 長い旅の始まりなのかもしれません。


 私も彼に愛情を注ぎ続けます。互いに変わりながらでも、一緒に歩けたらと願います。

 愛着のある寝息を聞きながら。


エッセイというかひとり言。

読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初読では「こんなに赤裸々に内面を描いてしまって大丈夫なのか」と、読み手ながらオロオロしていました。 あらためて読み返すと綿花さんの傷や痛みよりも、前を向いていく気持ちに心とらわれている自分が…
[良い点] 想いが全部詰まっていると感じました。嫌なことも辛いことも、嬉しい時や楽しい時の日々も。 全部混ざって、穏やかな満たされた気持ちというか。そして、これからまた新たに進んでいくぞという気配も…
[良い点] >出会って九年が経ってしまいました。 >彼より七歳年上なのは変わりません。 変わるわけがないからこそ、気の利いた表現だと思います。 親しい仲間が男女の関係について言及されると、どうして…
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