表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/74

0 ましろ

 深夜のスタジオ兼趣味の部屋。そこには、薄暗いオレンジ色の間接照明の中でパソコンのディスプレイだけが白く輝いている。その光に淡く照らされたティーカップには、冷めかけた紅茶がまだ半分くらい残っていた。

 僕はお気に入りの椅子に身を沈めて、そんな様子をぼんやりと眺めている。


 ましろから連絡のメッセージが入るのを待っているのだ。

 ましろは僕達の娘、年齢は5歳だったかな。

 親ならば忘れないであろう年齢が疑問形なのは、正直なところよく判らないからだ。ましろは5歳、でもその身体は23歳。そして、ましろが生まれたのは、ほんの数ヶ月前なのだ。……大丈夫、僕の頭は壊れていないよ。


 ましろは、涼音という女性の別人格。

 解離性同一性障害(多重人格)の彼女の中で生まれた別人格。

 そして、僕と彼女の子供みたいなものである。


 思い返せば、彼女との間に不思議な出来事がたくさんあった。

 こんな事が現実にあるのか!と戸惑いながらも、必死に彼女と向き合って理解しようとしてきた時間。それは、何も知らなかった僕にとって『驚き・気付き・発見』の連続、そこには『苦しみ・悩み』があり、それは『理解と恋』の過程でもあった。

 最近、ラノベやアニメでは異世界モノが流行ってるらしいけれど、そんなところに行かなくても、この世界は十分に未知で不思議な事があるんだと思えた程だった。


 『人格』とは?『記憶』とは?『自我』とは?

 そんな事を考え続けた時間だった。


 あれから一ヵ月、僕はゲームからログアウトしたかのように、冷静に様々な事を考えていた。そして、整理がついたので鏡(裏人格)と一度話しておきたくて、ましろに、鏡と電話で話せるように仲介を頼んでいたのだ。



23時を少し過ぎた頃。

携帯端末が「ポン!」と柔らかい音を奏でる。ましろからのメッセージ着信音。


――――――――――

おとうさん おまたせ

おでんわして

――――――――――


 鏡(裏人格)と話す時がきたか……。

 僕は電話をかける前に、目を閉じてこれまでの事を思い出していた。


一種の記録綴りなので、思い出を振り返るという形で始めますね。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ