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6.ウェルカムマイハウス

振り向くと、先日家まで来た護衛の人がいた。


「リセです。こんにちわ」

貴族とか城下町でのあいさつなんか知らないので、とりあえずぺこりと頭をさげておいた。

一度きりとはいえ、見知った顔に出会えてほっとしたよね。

本当にこのまま帰っちゃったら「牢屋行き!」なんて言われかねないわけだしさ。


「悪かったね、結構待ったかい?普段はここに門兵がいるはずなんだけど、ちょうど交代の合間だったかもしれないね」

そういって門扉を開けて中へ入っていく。

これは、ついて行って良いってことかな。いいんだよね。おいて行かれても困るから小走りについていく。

護衛の人は足が長いので、九歳の体では軽く駆け足にならないと追いつけないよ。


玄関に付くと、護衛の人はノックもしないでドアを開けた。いいのかな。

ドアのそばに控えていたらしい人に何かを指示すると、私にはここでしばらく待つように、と言ってどこかに行ってしまった。


護衛の人に何か指示された人もどこかに行ってしまったので、玄関でポツンと一人になってしまった。

護衛の人か、指示された人かどっちかが家の人を呼びに行ってくれたのではないかと思うのだけど、正直手持無沙汰だよね。

簡単な着替えぐらいしか入っていないとはいえ、背負っている風呂敷がじりじりと肩の負担になってきているのね。

でも、この玄関の床に下ろしてよいのかもわからないんだよね。

明らかに貴族の家っぽいから、平民が荷物を床に置いたら無礼だったりするかもしれないしさ。わかんないじゃん?


見上げれば、玄関ホールは吹き抜けになっているようで天井がとても高い。玄関ドアのはるか上に明り取りの窓があるのだけれども、ステンドグラスみたいな飾りガラスになっていて床にカラフルな影を作っている。

薔薇の花かな。牡丹かな。きれいだね。


まぁ、玄関から入ってみて思ったんだけど、やっぱりここは寮じゃないよね。

寮だったら、寮母さんというか寮監さんというか管理人さんというか、そういった役割の人が玄関にいそうなものだし、人の気配が全然しないし。

寮に入る前になんで個人宅に呼ばれたのかは、よくわからない。


「お客様」

「どぅわぁ!」


突然後ろから声をかけられてびっくりした。

振り向けば、黒いワンピースに白いエプロンをつけた、いわゆるメイドさんルックのお姉さんがいた。

気配がなかったよ。怖いよ。


「ご案内いたします。こちらへどうぞ」

九歳の子供に対してもお客様扱いして大変ですね、と思っても口には出さない分別はあるのよ。

ようやく、この状況を説明してくれる人に会えそうだね。

玄関ホールからドアを一つ開けて廊下を進む。何回か廊下を曲がってまだ進む。


おかしくないか?

現状の説明とか、書類を提出するだけとか、そういった話なら応接室みたいな部屋に通されるのではないの?

それで、そういった部屋って玄関からそんなに離れていない場所にあるものだよね。

なんでこんなに廊下を歩かされているんだろう?


そのあと、なんと階段も三階まで登らされたよ。

これ、絶対おかしいよね。もしかしてこんなだけどやっぱり寮なのか?

貴族こわい。どういうことだ。平民もこんな立派なお屋敷の寮に住むというの?


「こちらが、お客様のお部屋になります」

メイドさんが、ドアを開けて中へ入るように促してきたよ。私の部屋って言った?

やっぱりここは寮だったってことなのかな。

促されるまま、部屋に入ってみる。

村で住んでいた家が丸丸入ってしまうほど広い部屋だった。

応接セットというのかな?ローテーブルとソファが部屋の真ん中においてあり、壁際には勉強用の机と椅子が置いてある。

あとは使用用途がよくわからない調度品が適度に置いてあった。


私を先に部屋に入れたメイドさんが、後から部屋に入ってきて私を追い越していく。

奥にある部屋のドアを開けて、また右手で入室を促すポーズをとった。

「こちらが、寝室になります」


いま、何て言った?

コチラガシンシツデス って言った?

二部屋あるの? 平民だよ?私。


どうぞお入りくださいポーズでメイドさんが固まっているので、おずおずとそちらに向かって部屋をのぞき込んでみた。

最初の部屋よりはだいぶ手狭な部屋だったけれど、真ん中にどーんと私が五人ぐらい寝られそうなでかいベッドが置いてある。

その他には、チェストとドレッサーが置いてあるぐらいで、最初の部屋に比べればシンプルな部屋だった。

ベッドの大きさに固まっていると、またメイドさんが私を追い越して入った来たと思ったらまた別のドアを開いて入室を促すポーズをとる。

まだ部屋があるの?


「こちらは、バスルームになります」

もう、なんていうか、驚きの閾値を超えて声もでないよ。


応接セットのソファのうち、一人用の席に座ってぼんやりしている。

風呂敷包みはローテーブルの上にのせてある。

メイドさんから、寝室のチェストに着替えをしまえと言われたのだけれど「やっぱり間違いでした」とか言われたときに二度手間になるなぁと思って仕舞っていない。


この後、私はどうしたらいいんだろうか?

魔法学院に入学するために寮に入るんだと思っていたから、行けば何とでもなるだろうって思っていたんだけどね、部屋に案内されたあとにそのまま放置されるとは思わないじゃんか。


おなかすいたなぁ。


朝一の乗合バスに乗ってからもう半日経っているいるし、そりゃお腹も空くよ。

寮なら食堂とかあるよねって期待していたんだけどなぁ。

そんなことを考えていたら、ドアがノックされて、返事をする前に男性が入ってきた。

九歳とは言え、乙女の部屋だぞ。まぁ、村の家ではそもそも自分の部屋も無い状態だったんだけどね。


「やあ、よく来たね! ようこそ我が家へ!」


両手を広げながらにこにこと入ってきたのは、先日村までやってきた男性のうちの一人、赤い髪の人だった。

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