表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月夢~番外編~  作者: 桜羽 藍里
【番外編】
32/32

守りたい温もりー後編ー

※ 『騎士になったもう一つの理由』に纏わる騎士団長視点のエピソードです。

 ルイスと仮初めの親子になってすぐのこと。ブレアたちにルイスを任せたオレは、一人で実家――侯爵家の屋敷に来ていた。閉ざされた執務室の扉を前に、深呼吸をする。


 正直に言えば、本当に、ものすごく、非常に不本意でしかない。それでも背に腹は代えられないと言い聞かせ、扉をノックした。


 執務室にいたのは当主である父と、代々ヤヌス侯爵家当主の護衛を務める【影】の一族の長。銀髪の彼女はオレの顔を見ると、何かを察したように一瞬で姿を隠した。


 気配こそ薄ら感じるものの、オレと父の話に立ち入るつもりはないらしい。


 父はと言えば、オレが入ってきても書類から顔を上げることなく執務机に向かったままだ。机の隅には、オレが送った手紙――ルイスをオレの養子として迎える旨を伝える手紙が封を切られた状態で置かれている。ならば話は早いと大股で近付いた。


「親父、頼みがある」

「なんだ?」


 真ん前まで移動しても合わない目線と、相変わらずの無関心っぷりに眉を顰めそうになる。それでも、オレはあくまでも頼む側だと、溢れそうな感情を握り締めて頭を下げた。


「オレが騎士団の任務で不在の間、ルイスをこの屋敷に置いてほしい。ここがダメなら、せめて王都の――」

「わかった」

「タウンハウスに……え?」


 みなまで言う前に返って来た言葉に戸惑い、思わず顔を上げたものの、父と目は合わない。


 ルイスを引き取るつもりでいることを告げても無反応だったから、てっきり関わりたくないのだと思っていた。そうでなくとも、ルイスを屋敷に置いてくれと言えば、良くて渋る、最悪反対されるだろうと身構えていたのに。


 拍子抜けして驚き呆けていると、父の深紅の瞳が漸く訝しげにオレを見た。


「なんだ、タウンハウスの方がいいのか?」

「いや、本邸に置いてもらえる方が助かるが、いいのか……?」

「何がだ」


 眉を僅かに顰める父に、オレは恐る恐る問いかけた。


「親父はルイスの存在をどう思ってるんだ?」


 ――駆け落ちなどさせなければこんなことには……。


 葬儀のあと、父は姉夫婦を――両親を喪ったばかりのルイスの前でそう言った。この期に及んで、姉夫婦の婚姻を認めていないのならば、二人の子であるルイスの存在すら認めていない可能性だってある。


 そう思ったからこそ身構えていたのだが、父はオレに背を向けて立ち上がると、窓の外を見た。


「出自はどうあれ、あの子供は紛れもなくセシリアの子だ。それに……」


 言葉を濁す父が見つめる先にあるのは、母が生前使っていたときのまま、綺麗に残され保たれている部屋。そんな母の色は、オレの髪と姉の瞳に、そしてルイスの瞳に受け継がれ、今も残っている。だから、もしかしたら……と思いかけたそのときだった。


「お前はあの子供を養子とし、息子と定めた。あの子供は血筋も含め、ヤヌスの未来の後継者だ。守る理由は私にもある」


 一瞬でも、人間味ある感傷の存在を期待したオレがバカだった。この人はいつだって、侯爵家の存続しか考えてない。そういう人だと昔から知っていたのに。


 けれど、父がルイスを()()見なしているのなら好都合だ。反発して婚約者すら立てないオレでも、出奔はされたくないのか、今は無理強いすることもない。ならば、ルイスのことも全力で守るだろう。


 ルイスをヤヌス侯爵家存続に必要な(スペア)としか思っていないのなら、オレもそれを最大限利用するだけのことだ。


 それから、オレの不在時に問題が起きないよう、諸々約束を書面で交わし状況を整えた末、オレはルイスをヤヌス侯爵家の本邸に迎え入れた。


 だが、さすがに休暇の再々延長は難しくて。渋々聖都へ戻ってからしばらくは、仕事の傍らで王都と聖都、侯爵領と辺境伯領を駆け回った。


 いくらか親父や影の手を借りた場面もあったが、辺境伯領を侯爵家で拝領することが内々に決まり、ルイスを秘匿する件も王家の許可が得られた。後者について、王弟公爵が後押ししてくれたことと、王家に対する対価がオレ個人に払えるもので済んだのは予想外だったが。


 それから間もなく『一月以上、床に臥せていた辺境伯家の一人息子が流行病で亡くなった』という噂を辺境伯領内に流させた。『不幸の続いた悲劇の辺境伯家について語ると、自身や大事な者にも災いが降りかかる』という噂と一緒に。


 前者はルイスを死んだと思わせるため、後者はルイスを知らない人間に辺境伯家の一人息子の存在を悟らせないために。もっとも、後者に関しては神殿の教えの一つとして『言葉には力があり、忌み言葉は不幸を招く』というものがあるから、全てが嘘というわけではない。これは信心深い民――特に一番最初、神殿騎士として学んでから異動した駐屯所の騎士たちにこそ覿面だった。


 完全に口と耳を塞ぐことはできないが、それでいい。ルイスに返せる年齢になったときに、辺境伯の一人息子の話が、嘘か真実かわからない程度には囁かれていないと困るのだから。


 そうして一月駆け回った後、南部視察の名目で実家への滞在をもぎ取ったオレは、視察の合間にルイスと親子の地盤固めにようやく取りかかったのだった。


 記憶のないルイスと過ごして最初に実感したのは、頭の記憶とは別に、身体の記憶というものが存在すること。そして、人の性格というものはそれまでに経験してきたものが形成するらしい、ということだ。


 姉夫婦の記憶を失ったルイスは、それまで辺境伯家で培ってきた生活に関する多少の作法は言わずともできた。だがその反面、姉夫婦と共にあった頃のような笑顔を浮かべることはほとんどなかった。


 六歳になったばかりのルイスの記憶に姉夫婦が関わってないものはほとんどない。だからこそ痛感した。ルイスの笑顔は、姉夫婦から愛情を受けて育てられたからこそだったのだと。


「ルイス、美味いか?」


 記憶を消す前の甥が好んでいた卵料理の感想を聞いても、反応は芳しくない。それでも、口数少ない息子の頭を撫でれば、僅かにぎこちない笑みのようなものを浮かべる。そんな彼に、オレは改めて心に誓った。


 例え嘘で塗り固められた片親でしかなくても、例えあの二人に到底及ばない未熟な親でも、オレにできる限りの愛情を注ごうと――。


***


 姉夫婦や生前の母をはじめ、ルイスが懐いていた警備隊長の接し方を思い出して真似つつ、騎士団長と子育ての両立に四苦八苦すること数年。記憶を失う前とまるっきり同じとまでは行かずとも、すくすく成長したルイスが九歳になったある休息日のことだ。


 その日は聖都から侯爵家の本邸へ帰り、稽古をせがむルイスの相手をいつものようにしていた、はずだった。


「何の因果なんだろうな……。オレが騎士団長をやってるのが悪いのか?」


 独りごちたオレの傍に、寸前まで稽古をつけていたルイスの姿はなく、握り締めた木剣だけが残っている。原因は稽古の最中にオレが放った言葉だ。少しだけ手加減をやめたことに対し『本気で殴らなくても』とボヤくルイスに、オレはつい『剣術なんてやめた方がいい』と言ってしまった。


 ――オレだって、中途半端な気持ちでやってるわけじゃない!!


 脳裏を過ったのは、走り去る寸前、ルイスが叫んだ言葉だ。


 真剣に取り組んでいることなんて、剣を受けているオレ自身が一番知ってる。屯所から戻る度に上がって行く技量が、既に騎士団の若手に引けを取らない域に達しつつあることも。


 ふと、鍛錬場の入り口に立てかけられた予備の子供用の木剣をよく見れば、どれもその柄はまばらに赤黒く染まっていて。まだ真新しい努力の痕跡に、自分が発した不用意な失言に大きくため息をついた。


「守るって、難しいな……」


 騎士になってから何度も感じたことはあるのに、今更その困難さを思い知る。


 正当防衛で悪人を殺した自分を責めていたルイスに、これ以上剣術を――人を殺す術を覚えさせたくない。例え、ルイスがいつかオレを超えて行く可能性を秘めた才能の持ち主であったとしても。それがオレの独りよがりな願いでしかないとわかっていても、心根の優しいルイスにはできるだけ戦いと無縁の場所にいてほしかった。


「グレン、一人で何をしている」


 物思いに耽っていたところへ、背後から声をかけられて意識を現在に戻す。誰と問わずともこの屋敷でオレの名を呼ぶ人間はたった一人だけ。振り返れば、しかめ面の父がそこにいた。


「剣に興味のないあんたが鍛錬場(こんなとこ)に何の用だ?」

「……いや」


 歯切れ悪く視線を逸らすと、父はそれ以上何を言うでもなくその場を立ち去った。遠退く杖の音に、苛立ちにも似た感情が湧き上がる。時々、オレたちの稽古を盗み見ているのは気付いているが、何を考えているのかは皆目見当もつかない。そこまでルイスを構うことが気に入らないのかと勘繰るオレの横に、スッと気配が増えると同時に、よく知った声がした。


「いつもここでこの時間、私がルイス様の剣の相手をさせていただいているので、自然と足が向かれたのでしょう」

「……そうだったのか。今は親父についていなくていいのか?」

「別の影がついておりますので」


 当主と後継以外の前には滅多に姿を現さない影の当主が、ルイスの剣の相手をしていることの意味。頭ではわかっているものの、つい眉を顰めてしまう。


「ルイス様に剣を握らせたくない」


 内心を見透かすような言葉に振り返れば、そこには長い銀のポニーテールを風になびかせる女性の姿。久々の対面に、驚きと困惑で二の句が告げずにいると、彼女は微苦笑を浮かべた。


「そう、顔に書いてあります」

「……さすが師匠。筒抜けか」


 そう言えば、彼女はサファイアのような青い瞳に険を滲ませた。


「私はあくまでもヤヌス侯爵家に仕える影です。師匠はお止めくださいと何度もお願いしているはずですが、『紅の指揮者(コンダクター)』の二つ名とその頭はお飾りですか?」

「……オレが悪かった、シルフィ。頼むから、その二つ名で呼ぶのはやめてくれ」


 あまり好きになれない二つ名に肩を竦めて見せれば、師匠――もとい影の現当主のシルフィは、ため息混じりにルイスが駆けていった方を見つめた。


「ルイス様は恐らく、ご自分の確固たる居場所を求めておいでなのだと思います」

「居場所……?」


 衣食住には一切困らず、身辺を守る人間もいる。住む場所として考えた候補としては最善を尽くしたつもりだった。


 それでは足りなかったのだろうか、と考え込む中、シルフィの声が響いた。


「若と旦那さまが築き上げた鳥籠に穴はなく、堅牢と言えましょう。ですが、その鳥籠には鍵穴すらもなく、あなた方はご自身の傷口が開くことを恐れ、外に出すこともなさらない」


 その言葉に思い当たる節があり、ドキッと心臓が跳ねる。そこへ、一羽の小さな深緑の鳥がシルフィの肩に止まった。彼女が慣れた手付きで撫でれば、ひとしきり堪能したらしい小鳥は、元気に空へと舞い上がる。


「あの鳥は雛だった時分に、何度も命を危ぶまれた中、空を飛ぶことを自力で覚え、今では元気に生きております。そして、助けた私を覚えているようで、定期的にこうしてやって来るくらい賢い子です」


 ルイスにもっと自由を与えてやれ。遠回しにそう言われた気がして口を噤んだオレに、シルフィはどこか悲しげに微笑んだ。


「孤独な小鳥は愛情に飢えるものですよ、若」


 親として満足にルイスの傍にいられていない自覚はある。そして、家庭教師をつけるようになってからというもの、ルイスを取り巻く様々な矛盾に本人が気付きつつあるように感じてもいた。


 息子の成長が嬉しい反面、真実を知らせるか否か。知らせるにもどう伝えるか。多忙を言い訳に、その判断を先延ばしにしていた。それがルイスを不安にさせているのだろうか。


 思考に没頭するオレに、彼女は呆れた様子で大きく息をついた。


「旦那さまはともかく、若はセシリア様の一件でご存じだと思っていたのですが、見込み違いだったようですね。あの親にしてこの子ありでした」


 父と同じと言われ、思わずムッとした。それでも、幼い頃からオレの剣の相手もしていた年齢不詳の彼女は、オレの不満など意に介した様子もなく、淡々と告げる。


「大切なものになると恐ろしく不器用ですよね、あなた方は」

「ちょっと待て、誰が不器用……」


 問い詰めようとしたところで、ルイスの名を叫ぶ女性の悲鳴に似た声が聞こえ、反射的にシルフィと二人で駆け出した。声のした方向と距離から駆けつけたその場所は、姉が生前使っていた部屋だった。


「何があった!?」

「あ……」


 開いている扉の中へ駆け込めば、真っ青な顔でへたり込んでいるメイドの目の前に、ルイスが倒れていた。慌てて抱き起こすも、ルイスが目覚める気配はなく、何があったのかとメイドを見れば、彼女は身体を強張らせながら口を開いた。


「せ、セシリア様のお部屋を掃除するために参りましたら、ルイス様がお倒れになられていて……」


 そう言われて改めて見回せば、母の部屋同様、主がいなくとも綺麗なままの姉の部屋がそこにあった。葬儀後に姉の形見分けでもらった私物を運び込んで以来、一度も踏み込んだことのなかった部屋の状況に、一瞬父の心を垣間見た気がした。


 しかし、現状はそんなことにかまけている場合ではなく。本来なら起き得ないはずの事態について、オレはメイドに問いかけた。


「鍵はどうした? ここには鍵をかけてあったはずだが……」

「その、鍵を開けた後、別の用事を言付かり、すぐに済むからとそのまま……。も、申し訳ございませんっ!」


 震えながら土下座をして謝る彼女に、オレは小さく息をついた。


「誰にでも起き得ることだが、一瞬の気の緩みが大きな問題に繋がることもある。今後は手間を惜しまず、十分注意を払ってくれ」


 そうして、メイドは仕事に戻らせ、オレはルイスを部屋まで運び、そのままベッドサイドの椅子に腰かけた。昏々と眠る彼の表情はどこか苦しげで、思わず小さな手を握りしめる。


 ――居場所を求めておいでなのだと思います。


 シルフィに言われた言葉が脳裏を掠めていく。居場所を求めた結果が、この血マメだらけの手だと言うのなら。


「オレの選択は、間違っていたのか?」


 不安にも似た疑問に答えられる人間はいない。いるとしたらそれはきっと、真実を知ったルイス本人だけだ。けれど、再び『殺してくれ』と言われたら……そう考えると、真実を打ち明ける勇気はまだ持てそうになかった。


 その後ルイスが目を覚ましたのは、ほとんど翌朝の明け方のこと。やや様子がおかしいながらも、無事目を覚ましたことにほっと胸をなで下ろしたのもつかの間。騎士団からの早馬に呼び出されたオレは、ルイスとろくに話せないまま、休暇を切り上げて屯所へと発った。


 事件が起きたのは、そんな中で迎えた次の休息日。父も含め、いつもどおり三人で夕食を囲む中、ルイスに告げられた言葉が発端だった。


「来年の春、オレはルイス=クリフェードの名で騎士団に入ろうと思います」


 その家名がルイス本人の口から出てきたことに、オレはもちろん、鉄面皮の父でさえ動揺を露わに孫を凝視した。父も言葉を失っていたからこそ、幻聴や聞き間違いでもないのだと嫌でも理解し、慌てて問いただしたものの、オレのそれらは想定済みだったんだろう。『ヤヌスの家名を頼らず、実力のみで騎士になりたい』という予め準備していたらしい模範回答をされ、ダメと言うにはオレの思い浮かぶ理由はどれも弱く感じた。


 何より、それを告げたルイスの深緑の目は、父とオレに『婚約を破棄して、クリフェード辺境伯さまの元へ嫁ぎます』と告げた姉と同じ目をしていて。あの手この手で説得を試みても、強い意志を宿したその瞳が揺らぐことは終ぞなかった。


 その夜、オレは自室のベッドに寝転がりながら独りごちた。


「孤独な小鳥は愛情に飢える、か……」


 先日シルフィが言ったように、穴はないと思っていた。家庭教師は怪我により引退した影の一人だし、使用人たちも代々仕えている口の硬い者ばかりだ。それでも、ルイスはどうやってか自分の本当の名を知った。


 誰かの話を聞いたのか、どこで何らかの記録を目にする機会があったのかは定かじゃない。原因は父もシルフィたちに調べさせているようだし、必要であれば対処するのだろうが、本人が知った今となっては些末なことだ。


 それよりも、ルイスはどんな思いでクリフェード姓を名乗って騎士になると宣言したのか。初めから嘘などつかない方がよかったのか。それとも、こうなる前にオレから話すべきだったんじゃないか。そんな『もしもの過去』に思いを馳せたあと、『現在』に考えを巡らせる。


「いっそ、力尽くでも止め……いや、それをしたら親父と同じか」


 ため息混じりに呟いた瞬間、綺麗に片付けられ保たれた部屋を思い出した。姉が出て行ってから葬儀の場で再会するまで、父がオレの前で姉の話に触れたことは一度もない。けれど、もしもあのとき父が姉に反対した理由が、フォル義兄さんだからではなく、相手が南方守護を任された『辺境伯家』だったのだとしたら……。


 父の若い頃は、侵略をしてくる南の隣国ノトスと戦争を繰り返し、その主な戦場は今の辺境伯領だったと聞く。南方の主立った貴族の血筋の多くが失われるほど激しい戦争を勝利し和解へと導いたのが、当時は子爵だったルイスのもう一人の祖父だ。その功績は褒美として辺境伯の爵位と王女の降嫁を賜るほどだったが、裏を返せばそれだけ本当に酷い戦争だったことは想像に難くない。


 オレと同世代の人間は、ノトスを友好国として好意的に扱っているが、父にとっては違ったのだとしたら。もし、戦争の記憶が未だに尾を引いていたのだとしたら、姉の結婚を猛反対したのも理解できる気がした。


 ――若はセシリア様の一件でご存じだと思っていたのですが。


 シルフィがあのとき言わんとしたことも、少しだけ腑に落ちるかもしれない。仮にそうだったとしても、あの人のしたこと全てを今すぐ許容できるかと言われたらできないが。それでも、もう少しだけ父と話をしてみてもいいのかもしれない、などと思いつつ、意識をルイスに戻した。


 剣を握る理由が居場所を欲しているからだと言うのなら、奪うのではなく、寄り添うことがオレにできることなのかもしれない。幸い、ルイスがその場にと望んだ騎士団はオレの管轄だ。ヤヌスを名乗らないと言われた手前、父親として構い倒すことはできないだろうが、それでも屋敷に閉じ込めておくよりは傍にいられるし、直接守ることもできる。元クリフェード辺境伯領絡みの任務などは注意も必要だろうが、楽しいこともきっと増えるだろう。


 騎士団に入ると決めたルイスが何を思っていたのか。その一切を見誤っていることに気付けなかったオレは、暢気にルイスと過ごす理想の未来を思い描いたのだった。


 そんなオレがルイスの真意を知るのは十余年後。戦いの最中、ルイス自身が語ったことに加え、行方不明になった彼が残したオレ宛の手紙を読んでのことになるが、それはまた機会があれば。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ