転生破棄 (操作ミスで短編になってます)
雨だ。…気の滅入るような、蒸し暑く、それでいて肌寒い。ひと言で言うならば、…「不快」?…あのときと同じようだ、と呟いた「俺」は、その今にも崩れ落ちそうな肉体を、使えなくなった両足でなんとか支えながら、思い出していた…
…最初に思い出すのは、痛み。そして、違和感。目を開けるのをためらうほどの、倦怠感。そして、後悔。目覚めたことの…生きていることへの。
「起きろ。64番」…そう、64番。俺の、名前。そんなわけないが、何しろ何も知らないのだから、呼ばれた名前で通っていくしかない。
「なんだ。まだ作戦開始まで10時間あるだろう…寝させてくれ。」
実体のない左手と両足で、まだ寝ていたい。と伝える。
「それに、今回の目標のランクはCだろ。俺が出る必要があるのか?…ミザリーよ。」
俺の替えの両足と左手を抱えながら、ミザリーはいらいらしながら、やや急ぎ目に話す。
「今回の目標は「転生者」よ。ランクCでもあなどれないし、もしかしたらc以上のランクに変動するかも知れない。だからアンタが行くの!」
…「転生者」。平成半ば過ぎ、新たな元号へと変わる間に、この世に増えたもの。 (実際はよくわかってないらしいのだが)
奴らに共通するものは二つ。一つは、「前世」…生前の記憶を持った、いわゆる「生まれ変わった」もの。
二つ目は、奴らは、不可解な「異能力」を持っていること。
奴らが初めて現れたのがいつ頃なのか、もはや誰も解らない。
何故ならば、月に一度かそれ以上の頻度で奴らは「観測」される。当たり前の話だが、普通一般の人並みに爆弾を放り投げたなら、どうなるだろうか。当然、死ぬ、あるいは、死ぬほどの怪我を負う。そうなる前に、俺達はその爆弾をこの世から切り離す。
…「転生者」という、爆弾を。