負けられない戦いがここにある・・はず
ブックマークありがとうございます。増えてたことに思わず二度見しました(´◉◞౪◟◉)
今回は少し長めです。
これからちょっとずつ多めに書きたいです。
―――コンコン
「失礼いたしますお嬢様。朝のお目覚めのお時間になりました」
「・・・・」(返事がないまるで屍のようだ・・)
「?」
私は笑い声をあげそうになるのをこらえながら、奴がこちらに近寄って来るのを待つ。
気分は獲物を捕えようと待ち構える狩人である。
目の前に黒の革靴が近づいて止まり、「失礼します・・っ??」という声が聞こえた瞬間
――ガシッ
「ぎゃ」
「こんなところで何をされていらっしゃるんですかお嬢様ぁ??」
「えへ?うっかりおちて、ねちゃったみたい!」
「ほぅ、ベッドにご丁寧にぬいぐるみを身代わりに置いてですか?」
「いつもいっしょにねているもん!たまたまよ!」
嘘である。
いつもより早く目が覚めたので朝のドッキリをご提供しようと思ったのである。
まず、ぬいぐるみで身代わりをたてる(髪の色に近いぬいぐるみだとなお良い)。そして、ベッドの下に潜り込んで、人が来るまで待つこと五分。相手が気づいた瞬間に腕をだして足首を捕まえると良いリアクションをもらえる。
ちなみに本日のお相手は、我が藤堂家の執事である。
我が家には代々仕えてくれる使用人がいて、一家で屋敷の離れに住んでいる。一家だけの使用人なので少数精鋭である。その中でも最も優秀な彼は、栗原 孝人。万能執事である。
私のドッキリを一瞬で気づいては腕を掴んだ反射神経は見事であった。見事すぎてこっちがビビってしまったよ。
ベッドの下から這いずり出て、着替える。着替えの際にこんなことはもうしないようにというお小言をいただいた。それに返事を返しつつ、頭では次は何をしようか考える。
「お嬢様?何かよからぬことをお考えでしょうか?」
「な、なにもかんがえてないよ???」
勘が鋭い執事がいないところで作戦を練ろう。
※※※
さて、現状を報告しなきゃあならないわね。
私、藤堂 棗の現在の年齢は5歳でーす!あと3ヶ月ちょっとで6歳になりましてよ?
ハイハイもたつのも喋るのも出来るだけ普通の子と変わらないように成長しましたよ?
まぁ、実際は体が思うように動かなかったというのもある。
あと、私の外見に問題が発見されました。
髪の色、黒。目の色、碧・・・。碧い目!!
何がおかしいの?って思っている?実は、ゲームの藤堂 棗は普通の黒髪黒目の日本人だったのよ!?顔も中の上ってとこの設定が・・鏡で見たら、あれ?って感じでびっくりしたのなんの・・
そこには黒髪碧眼の美幼女がいた!!って感じだった。いやぁ、多分ロリコンがいたら誘拐されるぐらいだよ、これ。
おっかしいなぁと思ったんだけど、それは当たり前というか・・・。
父が外国人だった。ドイツ人。金髪碧眼だよ。イケメンだよ、髭もあるからダンディーとも言える・・か?
母は藤堂家の一人娘で、父が婿にきたという訳だ。
母、玲菜はほっそりした美人さんであるが、バリバリの仕事人間である。ちなみに藤堂家は化粧品を主に取り扱っている。
父、アレクセイはその仕事を補佐という感じで手伝っている。秘書かな?と思ったが
「秘書&護衛&玲菜の癒し係だね」
と、こたえられた。語尾にハートマークが飛んでいるように聞こえる。
まぁ、両親が不仲ではないことに凄く安心した。
ゲームでは、冴えない父親で棗は彼に似ていて確か7歳あたりだったか親が離婚するのである。幼いときは情緒不安定になりがちな棗だったが、婚約者と出会ってからは令嬢として努力するのだった。
この調子だったら、婚約者も変わるのかなぁ~?両親は恋愛結婚だったようだし、もしかしたら・・と思う。
ま、そんときでいっかと思いながら今日は何をして遊ぼうかと棗は思考を巡らすのであった。
栗原 孝人は動揺を鎮めようとしていた。
冷静沈着な彼は、仕事を淡々とこなす万能執事である。そんな彼が動揺することは非常に珍しいことであった。
「孝人、どうしたんだ?顔色が悪いが?」
珍しいとこぼしたのは、父親である栗原 徹である。彼は藤堂家の運転手兼護衛で昔は執事も兼帯していた。
今朝、あったことを話しているといつの間にか姉の弥生も混じっていて
「孝人もお嬢様の洗礼を受けたのね。私はこの前カーテンの隙間からじーっとこちら覗いてらして・・」
思い出したのか少し顔が青ざめていた。
「なかなか面白いお嬢様だな」
「何を言っているんですか、自分の足元へ白い手を伸ばされてみてから言ってください」
「そうですよ!目だけでこちらを覗かれて見てくださいよ!」
徹がわかったわかったと言って仕事に戻りはじめ、二人も仕事に戻り始めた。
自分だけあのお嬢様にしてやられた訳ではなかったようでホッとした孝人だった。