卒業しました。プロローグの前に
不定期更新で毎度すみません。読んでくださりありがとうございます。
桜舞い散る温かな風に苦労してセットした(のは弥生であるが)髪飾りがふわりと揺れる。
今日は私の中学卒業式である。
不慣れなことをしてとうとう白旗をあげて撤退した藤堂棗でありますが何か?皆さんあれですよ、慣れないことをしてどんどん泥沼に浸かっていくような……。えぇ、生きるための逃げはありです。駄目と言うならきたるべき時が来るまでと答えるまでですわ!
……まぁ、その時は来月に来るんですけどね。
一大決心?という名の現実逃避的な7年前からそれはもうとても有意義な時間を過ごしましてよ?
大親友となった燈子ちゃんとはたくさん遊びましたし、念願の弟もできてたっくさん可愛がったので今では姉さまと呼んで甘えてくれるようになりましたしね。ふふん。
聞いてくださいます?私の弟、超天使なんですよ?お父様そっくりの容姿でふわふわの金髪に透き通るような碧の瞳。生まれたときから私の心のオアシスである。学校で攻略対象者に関わって面倒な気分のときほど癒してくれました!なんて良い子!!
無事に卒業式を迎えそれぞれが家族や友人と一緒に写真撮影を行う中、棗もまた家族と合流し燈子を探そうときょろきょろしていると燈子も棗を探していたようですぐに見つかった。
「棗さん、写真を一緒に撮っても構いませんか?」
「うん!一緒に撮りましょう!」
田中さんも慣れたのか昔よりは普通に写真を撮ってくれた。そのあとは天使な弟とも一緒に撮ったりして、桜が舞い散る春に中学は卒業した。
※※※
ところで皆さんは中学卒業で卒業式パーティーなどに参加したことはあります?私、前世でそんなことなかったのだけれどこっちで普通に卒業式パーティーなんて開催されるからびっくりしたよ。簡単に言うと、高校生の人と交流がもてるようにと開かれるパーティーらしい。卒業式だけど、高校へ入学する人への歓迎会的な何か・・それ、高校入学にできないのかしらね?
まぁ、そんな訳でパーティーは晩餐に行われるため、家族で昼食をお高いイタリアンのお店でいただきました。その時にお父様やお母様から卒業祝いにと色々いただきましたわ。ええ、色々です。ブランド物のバッグやら化粧品やら本当にたくさんいただきましたわ。前世では絶対に買えない代物ばかりだ・・・。値段のことは気にしたくもないけど・・・。受け取ったときは思わず顔を引きつらせてしまった程だ。玲菜母様はわかるわかると言いたげに頷いてはいたけれども早く慣れなさいとも言われた。ぐぬぅ・・・。
可愛い天使な弟――藤堂 晃希は私の隣で座りナポリタンを食べていた。今年でこの子も小学生である。予定より遅く生まれて、玲菜母様も一時は危ない状態であったものの今は二人とも健康無事である。本当によかった。じっと見てたことに気づいたのかキョトンとしながらこちらに顔を向ける晃希。可愛い弟である。
お祖母様とお祖父様は相変わらずの仲良しなようで、今日も式には来て頂けて二人からは海外のお菓子をたくさん貰ったのだけれど、中にはこれ何?って思うのもあって開けたらビックリ箱だったりで……今はスウェーデンだったかな?に向かったらしい。
「そういえば、ドレスは何色にしたんだい?」
「濃い青のドレスにしましたわ」
「ふむ、濃い青ならプレゼントに合うアクセサリーがあったかな?玲奈?」
「えぇ、そうね。棗ちゃん、あとで試してみてよかったら着けていきなさい」
「分かりましたわ!お母様」
そんなかんやで、夕方過ぎに千歳が運転する車に乗り込む。
途中、晃希も行きたいとぐずったが玲菜母様に抱きかかえられながら見送ってもらった。可愛い。
「はぁ、私の弟はなんであんなに可愛いのかしら」
「棗様が奥様のところに可愛さを置いてきてしまったからでは?」
「あぁ、なるほど・・ってそれ、私のことを可愛くないと言っているのね!言っておくけど!学校じゃ綺麗な女の子ランキングに入っているのよ!私のこの恰好を見てもそんなこと言えるの!!」
「金持ち学校ってそんなのやっているのか?それに、綺麗な女の子なら美人系でしょう?つまり、棗様に可愛げはないということがご本人の口から証明されることになると・・・」
「はっ!!」
「まぁ、今のお召し物を着ている棗様は可愛いと思いますよ。と・・つきましたよ、行ってらっしゃいませ棗様」
不意打ちの褒め言葉に棗は少し火照った顔を冷ましてから会場の中に入った。




