私は無実です(By 孝人)
「お待たせしてごめんなさい!!」
「大丈夫だよ~、燈子ちゃん」
謝罪する燈子ちゃんを落ち着かせて、お勧めの和菓子屋さんに連れて行ってくれた。
お茶の作法も行儀作法として習っていたので問題はない・・・のだが、子供舌に抹茶はやはり苦い。内心はにっがーと言いたいが表面には全く出さずにすまし顔でお茶碗を回す棗。
ちらりと、隣にいる燈子ちゃんを見るも彼女のお茶を飲む姿もきれいだなぁとしみじみ思った棗である。そんな燈子ちゃんの恰好はシンプルなワンピースで去年誕生日にプレゼントした花をモチーフにした髪飾りを付けてくれているので棗はとてもうれしかった。
「ふへへ」
「?どうかなさって?棗ちゃん」
「ううん、なんでもないわ、燈子ちゃん」
和菓子は大変美味であったので、家族へのお土産をいくつか買うことを孝人に伝え後程家に届けてもらえるようにしてもらった。
「燈子ちゃん、ありがとう。とても美味しかったわ。今度は私のお勧めに行きませんか?」
「本当に?喜んでもらえて嬉しいわ。是非、連れて行ってくださいな」
「ええ、約束しましょう」
可愛い女の子が二人楽しく会話をするのを見て孝人は微笑ましい気持ちで見ていた。別に、決して棗お嬢様がちょっと変わったご令嬢なので友達がいるのか心配だったわけではない。春日野様とは長いお付き合いをしているし、何より仲がいいことは大変喜ばしいことである。
――ただ、その可愛い少女2人の周りを一眼レフで連写する田中さんが気になるのだ。
はじまりは、去年。入学式のときである。棗お嬢様がご入学されるので旦那様から写真を撮るように言付かっていた孝人は、当日に家族写真を撮ってそのあとに棗お嬢様から春日野様とも一緒に撮ってほしいと言われて、何枚か撮ったのだった。その時、殺気を感じた孝人が振り返ると春日野様の護衛である田中さんが・・。後でデータをお渡ししますと言うと、黙って頷かれたが・・・
その後、いつの間にかカメラを持っている田中さんがいるようになった。今では一眼レフである。
孝人は自分が原因なのだろうかと最近、考えるようになった。
ちなみに撮られている燈子と棗の会話には、気づかない孝人である。
「入学式の写真を撮っているのを見て羨ましかったみたいですのよ」
「あ、そうなんですの」
「父にも見せたのですけれど、次の日には田中にカメラを渡していましたので誰も止められないかと」
「・・・それは、仕方ないわね」
「それに田中が生き生きしているのをみると・・」
「あれ、生き生きしている顔なんですのね・・・」
――――パシャシャシャシャシャ
連写しまくりの田中さんであった。
飽きずに読んでくださりありがとうございます(´◉◞౪◟◉)
田中さん
目が死んでる系の人。最近の趣味は写真。ボディガードとしては優秀な人。
無口無表情だが、燈子は表情の違いが燈子の父親は何が言いたいかを察知する。