ローラ王国
しばらくハーレスたちの後ろをとぼとぼと歩いて着いてきていたローズだったが、突然その歩みを止めた。
「お願いがございます」
その声に一同が振り向く。
ハーレスとローズの目がまた合った。
「なんだ?」
ハーレスが口を開く。
ローズはしばらく視線をウロウロさせていた。
「初対面の方にこのような事を言うのは大変恐縮なのですが...」
「いいから言ってみろ」
「わ、わたくしの故郷を探していただきたいのです」
故郷?シーダの面々は不思議でたまらないという顔をしてローズを見た。
ティラが思わずローズに聞く。
「ローズ、自分の故郷を覚えているのかい!?」
「はい、覚えています」
「どこ!?」
ローズがどこでどのようにして育ったのか、何らかの手がかりになるかもしれないと、ティラは身を乗り出すようにして聞く。
「ローラです、わたくしの故郷は、ローラというのです」
サン・ベネディクト教会の鐘の音が静かに鳴り響いた。ローズの深淵な瞳が、それに呼応するようにゆらゆらと揺れていた。
*****
「ローラ!?ローラって、あの...」
「何かご存知なのですか?ええと...」
ローズの言葉を聞いてティラがハッと気づく。
「そういえば自己紹介がまだだったね、
今話したのはエドだよ!そっちの黒いのがブラック、私はティラ。そんでこの赤い目の人がこの盗賊団のボス、ハーレスだよ」
ティラはよろしく、と挨拶した。
ローズは微笑み、よろしくお願いします、と言うとまたおじぎをした。
ローズはエドに視線を戻して言う。
「エドさん、教えてください。ローラをご存知なのですか!わたくしは、自分の名前と、故郷の名前がローラだという事以外何にも覚えていないのです...お願いです、どうか...」
エドたちはお互いに顔を見合わせた。
エドが言いにくそうに口を開いた。
「あのね、ローズ、落ち着いて聞くんだよ。僕たち別に君を傷付けたいわけじゃないんだ、つまり、その、教えてあげてもいいけどびっくりしないで聞いてね?」
「エド前置きが長い!あのねローズ、あんたが言ってるそのローラって国だけどさ、もう世界中のどこを探しても見つからないよ、だってその国は...」
「4年前に滅んだんだ」
ハーレスが横から静かに口を挟んだ。
瞬間、ローズの顔が死人のように蒼ざめた。