第四話 ハジメ、アジトに立つ
ニッケの後について階段をくだり、たいまつが所々に設置された地下通路を抜けると、僕は眼を疑う光景に出会った。
陰鬱としたイメージだった地下通路からは想像もできないような巨大な地下空間にドドン!と存在感を放つ地下街が目の前にあったのである。
「ここが、空覆うイナゴ団のアジト、地下コロニー街です。」
「地下…コロニー街…」
その街の規模というと、目算でルベリアの商業区ほどの大きさである。
もはやアジトというよりは街なんじゃないか?
「ここは空覆うイナゴ団に所属する盗賊たちが住処としている場所で、お頭の住んでる城が中央にあります。まずは、そこに向かうとしましょう。」
正直、帰りたいです。
盗賊たちの奇異なもの見る視線を受けながら町の中央に進んでいくと、ひときわ大きくて要塞みたいなお城にたどり着いた。ニッケはその城門の前まで行くと、門番らしき男に言った。
「ニッケです。任務によりルベリアの牢屋に投獄されたという仲間を助けに言ったところ、その人物がアッシュ・リバー様だというのでお連れしました。」
それを聞くなり門番の男は少し驚いた顔で返す。
「な、なんだと…わかった、話を通す。少し待っててくれ。」
本当のところ、嫌な予感はしていたんです。だって、門番の人の驚く顔が「えっ、ホントに?えっ?なんで?」って感じだったんですもん。
「な、なぁニッケ…さん。今の人そんなに驚いたような顔してなかったですけど…」
「…ですね。どういうことでしょうか。」
なんともいえない空気の中待っていると、恐らく話を通しに言っていた門番が帰ってきて、
「お頭が通すといってるから、中に入ってくれ。」
と、ニッケに言った。
ニッケはわかりました。と言って、僕を連れて城の中へと入っていった。
そしてお頭の待つという場所へ。
「よーーーーう!久しぶりだなぁアッシュよぉ。」
開口一番、玉座らしきものに座っているゴッツイ男が僕に言った。
僕は彼を見下すように顔を上に上げて彼を見ている。というか。
「あ、あの…」
「あんだ?アッシュよう。」
「どうして僕は5人もの男にナイフを突きつけられているんでしょうか?」
「…どうしてだと思う?」
そう、僕は玉座の間に通されたかと思えば控えていた盗賊たちに押さえつけられ、ナイフを首に突きつけられたのである。
「わ、わかりません。」
「そうだろうなぁ、アッシュ・リバーさんよぉ。なぁ、アンタはなんでだと思う?もうひとりのアッシュさんよ?」
お頭、というべき男は、そういうと横にいた男に訊いた。あ、これまずいやつだ。
「どうやら、俺の偽者が出たらしいから…じゃないのか?」
「クックック…だああああいせえええいかあああい!!!!!」
お頭は笑いが止まらないといった様子でそう言った。
もしかしなくても、これはヤバイ状況だ。絶対ヤバイ。
「さてと…しょーーーうじきに話してもらおうか?ニセモノさんよぉ。」
「あの、その前にひとつ聞いてもいいでしょうか?」
「ほう?辞世の句か?」
「いえ!ぜっっったいに信じてもらえないような説明しかできないときはどうすればいいんでしょうか!?」
「だ、そうだが?どうだアッシュ。」
「死ぬしかないんじゃないか?」
「だってよ、ニセモノさんよ。とりあえず訊いてやるから言ってみろ。」
あぁ。元の世界に戻りたい。