第二話 ハジメ、助けられる(?)
当小説はプロットもなにもなく思いつきでやっているだけなので過去の話の修正などにより大きく話が変わる場合があります。
牢屋の中は、なんというか殺風景なものである。そりゃあ牢屋なんていったらなんにもないのは当然だが、無機質な石の床と壁と鉄の格子オンリー。もう少し、なんかあってもいいじゃないか。
なんて僕が思っているのを知ってか知らずか、見張りと思われる衛兵は目の前で椅子に座りながら船を漕いでいるので、僕は話し相手ともならず暇をもてあましていた。
どうせだから、この世界のことをもう少し知っておくことにする。
この世界、「地球」というなんというか新鮮味のない星のことであるが、当然僕が住んでいた地球という世界とは違う世界である。
いわゆるパラレルワールドというやつで、もし世界がこうなっていたら?という分岐点の先にある世界のひとつなのだ。
つまり、この世界では魔法という技術が発達している、といったところか。
言葉については、僕の特性のおかげで理解できてしまっているところがかなり大きいのであるが、やはり○○語というくくりでいろいろな言葉があるらしく、とにかく僕がルベリアで兵士と話していた言葉はいわゆる共通語だということ。
そしてそれが英語などの多数の意味をひとつの単語で表すのではなく、日本語のようにへりくだっていたり尊敬語だったりと、そういった別々の単語があるということから、この世界の共通語はことに表現手段が多く、言語的にはかなり発達しているのではないか?というのが僕の見解である。
と、そんな風に考え事をしていると、前方からドゴッという鈍い音。
おや?と顔を上げると、そこにはなんとも怪しい風貌の男が立っていて、その男の足元には居眠りをしていた衛兵の姿が。
なんとなく、嫌な予感がするその状況。
僕は「これはもう、いろんな意味で言い逃れできない気がする」と思ったのである。
というのも、「助けに来たぞ!」と男が言い放ったのである。
その助けに来たぞという言葉は非常にこの場面においては重要で、なおかつ自分のおかれている状況を悪くするのだろうと感づくことができた。
つまりである。
当初、面倒を避ける予定で適当についた嘘により僕は「空覆うイナゴ団」とかいうすごく悪名高い盗賊団の一味だと勘違いされて投獄されたのだが、その噂が広まったおかげというかなんというか、その盗賊団すらも僕が仲間だと勘違いして助けに来てしまったようで。
しかも、こともあろうか衛兵を殴って気絶させるという動かぬ証拠を残して。
用は、この状況でどう言い訳すれば僕が賊と無関係であると証明できようか?ということであり、というかすでに目の前の盗賊を名乗る男は僕の牢の扉を開けてこちらへ来いと手招きしているのであり、恐らくではあるが賊がそこにいたからという理由で牢屋に問答無用でぶっこみやがったルベリア国の状況からして、助けに行くという名目で牢屋まで来るということはかなりのリスクを犯しているということであり、つまり目の前の盗賊に「僕は勘違いで捕まっているだけなんです」なんて言おうものならその腰にぶら下げているナイフで僕の心臓を狙ってくるのは明白だった。
僕は、「助かります!」といいたくもない言葉を吐いて男の後についていくしかなかったというわけである。