第四十七話 ハジメ、世界大盗賊団武盗会に出場する 23
「よーし、終わった終わった!」
「マジで全部の出入り口固めてるウロボロス片付けてきたのか?」
「いや、一箇所だけ戦う前にどっか行っちゃった。」
「そ、そうか…んじゃ、とりあえずここからもう出られるってことでいいのか?」
「そのどっか行っちゃった彼が戻ってきてなければ、だけどね。」
「そうか…。」
僕はパーシヴァルを背負って会場内に戻っていた。
すぐにダルタニアンがやってきて、パーシヴァルをグレイプニルでかんじがらめに拘束してくれた。
そしてディアスと話をしていたのである。彼はまた引き気味の顔で僕と話していた。
「ん…あれ、なんで僕縛られてんの…?」
「あ、お目覚めかな?」
「あっ、キミ!これキミがやったの!?解いてくんないかな!?なんか、体にうまく力入らないんだけど!!」
「ダメでしょ、だって解放したらまたあの変な光線撃つじゃん。」
「えー…そしたら僕ずっとこのままなの?」
「いや、盗賊たち全員避難させたら解くよ。」
「それまで暇じゃんか…ていうか、なんで出入り口見張ってたはずの彼らまで縛られてんのさ…」
「僕が倒したからだよ。」
「え、ここに居る全員を!?」
「いや、戦わないでどっかいったのが一人と、思わずぶっ飛ばしちゃってどこ行ったかわかんない人が居るから…」
「じゃ、じゃあ出入り口誰も見張ってないってこと!?」
「そうだよ。」
「えええええ!?それ困るよ!ウロボロスの名折れじゃないか!」
「知らないよ。僕だって会場にこんな大穴開けられてWTG中止の危機でキレそうなんだよ!王様と約束してんの!!宝物返すって約束してんの!!」
「え!?それこそ何の話!?」
「君には関係ない話だよ!」
「じゃあなんで言ったの!!?」
「…流れ?」
「うわぁ…」
「あー…なんか体中ひりひりするぜ…ん?アレ?どうして俺縛られてんだ?」
「あ、ヘラクレス!起きたの!?」
「あれ、ジークじゃねえか。どうしてお前まで縛られてんだ?つうかほかの連中も縛られてるじゃねえか。」
「それは…」
「あ、それ僕が君を倒したからだよ。」
「あ!!お前!!…そういや、俺こいつに焼き殺された気がするぞ…?どうして生きてんだ?まさか俺、幽霊とか…」
「なんなんだコイツ…おいジーク。この人バカなの?」
「あ、そうなの。この子おバカさんなの。」
「オイ!バカバカ言うんじゃねえよ!くっそ、こんな紐なんてすぐ引きちぎって…あれ、力はいんねぇ!!マジ幽霊かもしんねえぞ俺!」
「幽霊だったらヒモくらいすり抜けるでしょうが…」
「あ、そうか・・・俺、バカだったわ・・・」
「…もっとマシなやつはいないのか…」
「う、うーん…ハッ!ここは…アレ、わたしなんで縛られてるの…?」
「あ、起きたか!君ならまともに話ができそうだ。えっと、確かアタランテだよね。」
「えっ・・・あっ、あなたは…わたしの速さに唯一勝った人・・・」
「アレ?聞こえてる?」
「わたしの…はじめてを奪った人・・・」
「あ、コレダメなやつだ。」
その後、ヘラクレスと口論するジーク、目覚めないパーシヴァル、どこかの世界に行ってしまったアタランテを尻目に、僕は盗賊たちの転移を開始した。
当然、WTGは中止である。また、各盗賊団が奪取したお宝は彼らに帰属されるらしく、僕がグランダルシア国王に返すと約束したフェニックス・フェザーはル・ボード・デュ・モンデの下にあるので、後日もう一度戦いを吹っかけることにしたのは、彼らには内緒だ。
そして、盗賊たちの転移、もとい転送が終了し、会場に残ったのはウロボロスを捕縛してくれているアルトワーレのダルタニアンと、ナイトグラスホッパーの面々だけとなったころ、ウロボロスの彼らも落ち着きを取り戻したらしい。
「…なんか、ごめんね。」
「いや、いいんだけど。まぁいいや、ジーク、解放したら素直に帰ってくれるのか?」
「うーん、そんなわけないじゃん!といいたいところなんだけど、正直キミに勝てる気しないし…ていうか、確実に僕のこと殺せたのに殺さなかったわけだし・・・」
「うん、君だけはマトモみたいでよかったよ…それじゃ、解放するけど、今後一切WTGには関わらないでくれるかな?」
「うん、解放してくれるなら。どっちにしろ、久しぶりにクエストに失敗したわけだし、もうやる気なくなっちゃったし。それに、ここに居ない君が倒した人たちも探さないといけないしね・・・」
「わかった。ダルタニアン、ちょっときてくれ!」
「あぁ、お呼びかな、フィラーさん?」
「悪いんだけど、グレイプニル解いてやってよ。彼ら、帰るみたいだから。」
「了解。解除!」
と、ダルタニアンが唱えると、彼らを縛るグレイプニルがシュルシュル!とダルタニアンの元へ帰っていった。
「あー・・・なんか、どっと疲れたよ・・・。それじゃ、また会う機会があれば。」
「ようフィラー。お前強かったな!次やるときは負けねーからな!」
「お前の一撃、見事だった。また手合わせ願おう。」
「フィ、フィラー…さん。ま、また会おうね。」
と、彼らは思い思いの別れの言葉を言った。僕はそれを受け取り、「それじゃ、またね。」と返した。
それを認めると、彼らはしょっぱなに空けた大穴に向かってジャンプすると、4人仲良く北のほうへと消えていった。
「じゃ、送るよダルタニアン。」
「ああ、悪いね。それじゃフィラーさん、どっかの窃盗で見舞えるときがあれば。」
「ああ、またね。」
そして、ダルタニアンも僕の発動した転移によって、アルトワーレ盗賊団の元へと帰っていった。
そして、残るは僕ら、ナイトグラスホッパー。
「いやー…まさかWTGが中止になるとは思いもしなかったぜ。」
「こんなことは初めてだな。まぁ、俺たちは何もしてないが。」
「俺、初めてなんでわかんないんすけど、今までバレたことなかったんすね。」
「そうそう。オレッチが張った結界すらぶっ壊してきたからね!アイツらやべーよ!」
「うん、あの。パン様まだ居たんすね。」
「ていうか、なんで、さもメンバーみたいな顔してここに居るんですかアンタ。あとどこ行ってたんですかアンタ。」
「アレ、オレッチ蚊帳の外?さすがにひどくない?オレッチだってー、神殺しの連中が現れたらさすがに引っ込むしかないって!」
「神殺しって…まぁ、でも、彼ら英雄だし、そう考えれば神様も殺せてしまうのか・・・」
「そうなんだよー。まぁ?ハジメっちも俺のこと殺せるし?人のこと言えないけどね?」
「あ、名前まで知ってるんですか?」
「いや、だって俺神よ?曲がりなりにも神よ?」
「うん、なんつうか、すごく申し訳ないんだけど、全然神様っぽくない。ただのチャラいやつじゃん。」
「チャラいとかマジハジメっちきっついわー。」
「やっべー、すっげー殴りたい。」
「まーま、それは置いといてさ。今回のことは本当にありがとね。キミが居なかったらほんと、俺の信奉者激減って感じだから。」
「あ、そうなるのか。」
「そうそう、感謝感謝。」
「してんのかソレ…。おもっくそバカにされてる気がするんですが!」
「いや、してないって!お礼に、オレッチの力、授けちゃうから!」
「えっ。」
「そぉい!」
――ハジメは盗神パンの祝福を受けた!
――ハジメは盗神の力の特性を手に入れた!
「どんどん…チートと化していく・・・。」
「いいじゃん、人外系人間。もともと人間超えちゃってるんだから、ちょっとくらい神の力もらったって変わんないって!」
「その状況がおかしいんですよ…」
「まぁ、いいじゃんいいじゃん!んじゃ、今日はありがとねー!また会おうぜ!バーイ!」
「・・・」
僕とパン様のそんなやり取り。そしてそれを見ていたディアス達の目といったらもう、引いてるとか言う目じゃなかった。完全に人外を見てる目だった。
当然、そんな状況だから、「じゃ、帰るか。」と僕が言ったときも「お、おう…」といったような感じだったし、アジトに帰ってきたときなんか、すごい空気だった。
そしてその夜、帰還パーティと銘打って盗賊団で宴を行ったのだが、ディアスもアッシュもニッケも浴びるほど酒を飲んでいたのであった。
ちなみに、僕は神の力によって人間界の酒では酔わなくなったらしい。どうやら毒物扱いのようである。
その夜は団員全員大盛り上がりで、深夜まで宴は続き、翌日は全員死んだような顔だったとか。お酒って怖いね!
やっとこさ、WTG編終了です。ホント、こんな長くなるとは思わなかった。
ちなみに盗神の力の詳細は以下の通りです。
特性:盗神の力
説明:すべての「盗む」という行為が失敗しなくなる。「盗む」という行為に及ぶ際、すべてのものごとが都合よく進む。




