第四十六話 ハジメ、世界大盗賊団武盗会に出場する 22
復活とはまだ遠いですが、一応更新できるようになったので。
僕のもうひとつの作品、長らく放置していましたが、設定を変え中身を変え題名を変えて別の作品としてスタートします。よければ、そちらもご覧くださいませ。
「あー…暇だー。誰も出てこないし。帰っちゃおっかな…」
「…」
僕は、2時の方角の出口にたどり着いていた。その僕の目の前には、おそらくこの出口を見張っているのであろうウロボロスのメンバーがいるのだが。
「実際、盗賊とか捕まえたところで意味なくね?もっと有意義な悪の廃絶方法あるだろってのに…あーあ、かったりぃ。」
すさまじい負のオーラと、それに負けないそこはかとなくダルそうな声で独り言をつぶやいていた。
「マジで誰もこねぇ。ジークだけで十分だったんじゃねぇの?俺がここにいる意味ないって。かえろっかな。でもなー…もし誰かきたら面倒なことになりそうだし。」
「…」
「あーもー…暇!クッソ暇!帰ろ!」
そういって、名前も知らない英雄は「転移!」と唱えるとどこかへ消え去っていった。
「なんだったんだ…」と、僕が一人ごちるのも致し方ないことだった。
もちろん、僕とてここにずっといるわけにも行かない。手持ち無沙汰感あふれる面持ちで、残る最後の出入り口まで向かうことにしたのであった。
「…遅い。遅いぞ盗賊共!いつになったら出てくるというんだ!」
そして、この8時の方向にいる男も、さっきの男と似たり寄ったりなセリフを吐き散らしていた。とはいえ、こちらは臨戦態勢である。戦いたくて仕方がないといった面持ちだ。
僕としても、さきほどの男と戦闘するかと思いきや肩透かしを食らったので、暴れてやるのも辞さない覚悟であり、ここはひとつ、と声をかけてみることにする。
「こんにちは。」
「んんん?もしかしてその風貌、盗賊の方とお見受けするのだが…?」
「ええ、そうです。」
「おおおお、やっと来たか!!!相手が一人とは物足りないが…」
「…。」
「ふん、いいだろう、少しはやるようだ。このパーシヴァルの槍で貫いてくれる!」
「円卓の騎士…か。」
「…!?なぜ、そのことを?」
「なんとなく、分かった気がするよ。ギリシャ神話、ケルト神話、ニーベルンゲンの歌…どれもバラバラ、しかし、英雄という点だけが一致する。」
「な、何を言っているんだ…?」
「そこで質問がある。あんたの本当の名前はなんだ?」
「えっ!?」
「アンタたちウロボロスというパーティは、みんな英雄の名前を騙っている。それがコードネームなのかロールプレイングなのか知らないけど、少なくとも本当の名前じゃないと僕はにらんでる。どうなんだ?」
「…この世界において、まさかそんなことを聞かれるとは思わなかった。いいさ、教えてやろう。私の名前はまごうことなくパーシヴァルだ。そして…」
「転生者」
「転生者…やっぱり、そうなのか。」
「…というと、つまりお前も…」
「そう、転生者だ。」
「…名前は?」
「フィラー・ヴィルトス。とだけ、名乗っておくよ。」
「ふむ、いいだろう。しかし、何か気づいたようだな?」
「うん、分かった気がする。アンタたち、本物の英雄だったのか。そして、英雄として死んだ後、この世界に転生した…」
「そう、そのとおり。私も後から知ったのだが、英雄として祭り上げられた魂はこの世界に転生されるのだ。私はそれを知り、多くの英雄が名を連ねるこのウロボロスへと入ったのだ。」
「合点がいったよ。さて、おしゃべりはここまでかな?」
「そのとおり。さぁ、はじめようではないか。転生者と手を合わせるのは、滅多にないチャンスだからな。」
「いいさ。行くよ。」
「ゆくぞ、我が槍の一撃、受けてみよ!」
そう吐き捨てると、パーシヴァルは弾き飛ばされたようにこちらに槍を向けて突進してきた。
パーシヴァルの槍は、いわゆる刃が先端についているものではなく、ランスと呼ばれるタイプの槍である。
ランスは切ることよりも刺し貫くことだけを考えられている、刃のない円錐状の刺突部に持ち手がついた形である。
ランスはなにより長くて重いため、取り回しがしづらく、近接戦闘や乱戦においてはその特長を生かせず、馬上からすれ違いざまに刺し貫くのが主な使用方法であり、このパーシヴァルのように、馬に乗っていない状態で使われることは少ない。
とはいえ、僕と彼の1対1の状況であるからして、僕からすればその攻撃は非常に厄介である。
というのも、そもそも彼の装備している槍は、普通のランスよりも大きく、円錐状の切っ先は腕の近くまでをガードするように伸びているのであり、いくら受け流しても、こちらの攻撃が向こうに通るほどまで接近するのは難しい。
なおのこと、ランスを装備する騎士はサブウェポンとして短剣であったり剣であったりを装備するのが普通である。この大きなランスを主とした突進を繰り出すあたり、彼の筋力は見た名以上にあるだろうから、いかな片腕、それも利き腕じゃないとしても、ノーマークで突っ込んでいってサブウェポンの剣で切られましたなんてオチは避けたいところなのだ。
さらにそのランスの特性上、こっちが受け流す気で向かっていったとして、狙い済ました腕の伸縮状態からの突きは、下手すればこちらが思っているよりも長い間合いとなっている場合もある。その場合、こちらの攻撃が通る前に、その重い一突きをもらって戦闘不能になる、もしくは、体のどこかしらに丸い風穴を開けられて大ダメージになることは考えなくても分かることだ。
ゆえに、まず突進を回避し、がら空きの背中に遠距離攻撃を加えるというのが僕の考えた筋書きだ。
そんなわけで、彼の突進を回避し、振り向きざまに遠雷を撃とうとしたのだが、僕は驚愕のうちにその行動をあきらめざるを得なかった。
なぜなら、僕が突進を横っ飛びに回避した瞬間、彼は上半身をグルリと返し、空中にいる僕に向けて鋭い突きを放ってきたのである。
まさか前方にしか攻撃できまいと高をくくっていた僕が悪いのだが、その予想だにしない刺突はなんの予想もしていなかった僕の体に一直線に伸びる。その速さたるや、なるほど英雄だと思わざるを得ない。
僕だって、細胞の雷震も使用していなかったので、その突きはいかな見切りの極意といえど、見切れても回避するには体制が悪すぎた模様である。
僕はこの世界で初めて、その身に攻撃を受けたのであった。
腹部に、燃えるような痛み。前の世界ですら受けなかっただろうその痛みは、生ぬるい戦いをしてきた僕にとっては到底耐えられるはずもない。
「ウワアアアアアアアアア!!!!」と、獣のような悲鳴を上げる。
「…その程度の痛みで、悲鳴を上げるとは女々しいやつだな。」
と、涼しい顔で言ってのけるパーシヴァル。僕の体は神の力を得ているから、神力のこもっていない武器では傷つけられないはずであったが、やはり当初の考えどおり、英雄たちの攻撃自体に神力がこめられているようであり、僕の体を守るその力を超えていったのである。
あいにくとして、僕は回復魔法なんて覚えていなかった。だから、痛みに対し不慣れな部分もあり、言霊の支配者の力を使うといった考えにも及ばず、血が吹き出るその傷にただただたじろぐばかりである。
しかし、パーシヴァルはすでにもう一度突進を行う様子であり、いつまでも痛がっては居られない。
僕はすぐさま細胞の雷震を発動し、アイギスを呼んだ。瞬間、僕の体が青白く光だし、その光に被さるように鎧が僕の体を覆った。
そして今度は、真っ向から突っ込んでくる彼の槍を見切ろうと、刀を構えた。
「ほう、鎧を換装するか。しかし甘いぞ!!」
彼は知らない。今の僕は先ほどと違い、彼の槍の速さに追いつけるほどの動体視力を持ちえていることを。
彼は知らない。今の僕は神の雷すらも受け止めてしまう鎧を纏っているということを。
そして、彼の放った槍の一撃が僕の見定めた地点に達した瞬間、僕の体は跳んでいた。
刀はまだ抜いていない。なぜなら、間合いはもう少し先だからだ。
僕は彼のランスの切っ先を回避し、火花を散らせながら刀の鞘をランスの形に沿って走らせながら接近していた。
そしてその間合いにたどり着いた瞬間、上向きに刀を引き抜き、そのまま上段からの袈裟切りを見舞う。
彼は反応すらできず、僕の白刃をその身に受けた。
瞬間、辺りに響く轟音。まさに神の拳が落下したがごとく、雷鳴とともに亜音速の速さで振り下ろされた刀。
本来ならば、消滅を伴うその一撃は、彼の体に吸い込まれていった。
僕が我に返ったころ、彼の体は地に臥し、その結果を象徴するように、彼のランスは切っ先から地面に突き刺さり、その風貌を晒していたのであった。




