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後付け強化系転生者ハジメくんの異世界漫遊記  作者: 結佐
第二章 ハジメ in 盗賊団
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第四十一話 ハジメ、世界大盗賊団武盗会に出場する 17

ゴーレムと剣士の観劇が繰り広げられているその間、残る1組の戦いがあった。


「おや、僕の相手は君か、キッド・トリスタン君。」


「ふん、誰かと思えばいけすかねぇキザ野郎じゃねえか。」


「ふふふ、僕の顔がうらやましいからって負け惜しみを言うのはやめなよ。」


「チッ、やっぱりいけすかねぇ。一瞬で終わらせてやる。」


「おおっと、僕は戦闘は専門分野外なんだ。」


「人を煽っといてなに言ってやがる?」


「煽る?人聞きの悪いことを言うな。僕は本当のことを言ったまでだよ。」


「よーし!ぜってー殺す!ぜってー殺してやるよ!」


「まったく・・・短気な男はモテないよ?」


「・・・お前、いい度胸だな・・・」


「おや、図星かい?」


「まぁ、いい。その挑発、乗ってやるよ女顔・・・」


「・・・ふふ。仕方ない、僕も久しぶりに戦ってみようかな。ただし、顔はやめてくれよな?お互い、悲しむ女がいるだろう?」


「ハッハッハ。それじゃ、ツラ以外蜂の巣にしてやるよ!!!」


「望むところさ。」


ダルタニアンはそう言うと、シュルリ、とどこからか鞭のような物を取り出した。


「んだ、そのヒモは。」


「ヒモ、か。言いえて妙だね。このヒモはグレイプニルっていうんだ。」


「そうか。聞いたことがあるぞ。魔法のヒモ。」


「魔法のヒモ。そうさ、魔法のヒモ。」


「だがそんなヒモが俺の弾をどう防ぐんだ?」


「防がないよ、ヒモだからね。」


「ハハハ。おもしれえなオイ。」


「このヒモはね、君に弾を撃たせないヒモなんだよ。」


「・・・撃たせねぇってか。いいだろ、なら。」


ズドン!という砲撃音。


「早いよ。」


「ケッ・・・防ぎやがるのか。」


「撃たせないってのは無理だったかもね。」


ダルタニアンの持つグレイプニルが、キッドの撃った銃弾を意思を持つかのように受け止めたのであった。

直後、銃弾に巻きついたグレイプニルがそれを放し、キッドの方へと向かっていく。


「ヘビみたいに動くんだな、そのヒモはよ!」


キッドはシュタッ、とそのヒモから離れる。本能的に、捕まるのはマズいと思うようなそのヒモと形容されたグレイプニルは、赤い鎖のような、しかし音のならない不思議なアイテムである。


「この世には存在しないもので作られた、とある聖遺物なんだ。」


グレイプニル。かつて、ギリシア神話において、魔狼フェンリルの四肢を縛っていたとされる、ドワーフの作り出した鎖である。

猫の足音、女の髭、岩の根、熊の腱、魚の息、鳥の唾液から作られたとされ、原材料となったそれらは、グレイプニルを形成するがために存在しなくなったといわれる。


「けったいなもの持ってやがるな。それは戦利品か?」


「そうさ。僕が盗賊稼業を始める前の、ね。」


ズドン!ズドン!と銃撃の手を休めないでグレイプニルを避け続けるキッドと、キッドが撃ちだす銃弾を予め予測して回避するダルタニアン。


両者ともに、狙いは確かだが、しかしそれゆえに互いにそれを避け続ける。


「そんで?そのヒモに捕まるとどうなるんだ?」


「それはもう、捕まってみてくれないとわからないんじゃない?」


「なら、結構だ!」


まるで鬼ごっこのような戦いは、いつ終わるとも知れない。

だが、均衡とは、崩れるものである。


リズムよく吐き出されるキッドの銃弾をいつまでも避けることはできず。

また、どこまでも追い続ける追っ手からも、いつかは追いつかれてしまう運命。


その「時」は、ほぼ同時にやってくるのであった。


「クッ・・・」

「ガハッ・・・」


終ぞ、キッドの片腕にたどり着いたグレイプニル。その瞬間、宙を舞っていたその細いからだの残りは、まるでゴムが縮むかのようにグン!と引き寄せられ、キッドの四肢を一瞬にして縛る。


しかし、その一瞬前に撃ちだしたキッドの弾丸は、そのキッドを捕まえたグレイプニルをもっていたおかげで引き寄せられそうになったダルタニアンの、傾いた体を撃ち抜いた。


一方は、赤い鎖に縛り付けられ。

一方は、闇夜を切り裂く弾丸に撃ち抜かれ。


どちらからともなく、地に伏せたのであった。


「やるじゃねえか、キザ野郎・・・」

「そっちこそ、一発でこんなにダメージを負うなんて、君の武器だって十分けったいなもんだよ・・・」


勝者はなく、また、敗者もないその戦いは、幕を閉じたのであった。







ところ変わって、今なお戦いを繰り広げる彼らがリーダー達。


しかし、その戦いもいずれは終局となり。


互いに攻撃を受けた後、どちらも譲ることなく命の駆け引きは続いていた。


腕が振られれば、剣が煌き。

刃が煌けば、火花を上げ。


されど血は滴り落ちて。




もとより、拳を用いた戦いはリスキーなものである。獲物は軽く、一度懐にもぐりこめば一方的。しかし、こちらの攻撃が届かずに、敵の白刃にさらされ続けるのは、やはりそれに見合う代償を備えていた。


なおのこと、デメテルは胸と腹を切られていた。


確かに、傷は大して深くはなかった。されど、裂傷は裂傷である。

徐々に出血は続いていた。ゆえに、時が来たとき、デメテルの頭は朦朧としていた。


方や、グラトニーも無傷ではない。彼は彼として、デメテルの重い打撃を頭部とボディにもらっていたのである。


じわり、じわりと体内にダメージを与える打撃。当然、打撃をもらった肋骨は3本ほど折れていたし、それを起因とする内臓へのダメージも大きかった。


さらに、頬を殴られたダメージは、軽い脳震盪を併発させ、やはり脳へのダメージもあった。


つまり、その「時」がきたとき、両者ともに、すでに気力だけで戦っていたのである。


ついに、両者の戦いは終わりを迎える。


もう、行くしかない。そんな思いが、両者の本能にささやきかけたのだった。


繰り出された、渾身の一撃。


グラトニーが決死の斬撃を繰り出し、それがデメテルの左腕を切り落としたと同時。デメテルの経験と仲間の思いを乗せたストレートは、再びグラトニーの頬を捉えた。


左腕という重みを失ったデメテルの右腕は、皮肉にも、今までより速かった。


また、体のバランスを失った彼が、倒れこむように、体重を乗せたのも決定打となりえた。


グラトニーはその一撃により頭部を激しく損傷し、前のめりに地面に倒れたし、デメテルも体に受けたダメージの蓄積と、多くの失血をしたために、気力で動いていた体も機能を停止した。


互いに、すれ違うように倒れた彼ら。


仲間たちの思いを背負ったリーダー達は、最後まで戦い抜いたのであった。







そして、残る戦いはひとつ。


剣士と、ゴーレムの活劇であった。


土ぼこりが舞うほどに重い拳を振るうゴーレム。

それを避けては何度も何度もその頑強な体に剣を打つ剣士。


剣はその度重なる攻撃に鋭さを失っていて。

拳はすでにひびが入り、それでもなお振るうことをやめなかった。


時に、道具というのは日々の手入れが肝心である。

どんな鉄でも手入れを怠れば錆びてしまうし、機械は油を差さなければ動かなくなってしまう。

クリストファーは自分の作品を愛していた。だから、そのメンテナンスは欠かさなかった。

もちろん、シャルテも自分の剣の手入れは欠かさなかった。

しかし、形あるものはいずれその形を失うものである。

特に、長く使っていたものはそうだ。どれだけ手入れを行っていても、絶対に壊れてしまうものなのである。経年による劣化には、形あるものはすべて勝てないのである。


それゆえ、国を出たときから扱っていたシャルテの剣は、もはや直せないほどに傷を負っていた。

対し、クリストファーのゴーレムは、数多の部品からなるものであり、それゆえに劣化したパーツは取り替えている。


それが生む結果とは。


何百回もの斬撃を行ったシャルテの愛剣は、とうとうその頑強なゴーレムの体を打ち崩すことはできず、根元から折れてしまったのである。


「あ、あぁ・・・僕の剣が・・・」


「もらった・・・!」


剣は折れた。


その隙は大きかったのである。


空中で、気を散らしたシャルテの小さな体を、ゴーレムの拳は捕らえた。


うめき声を上げたシャルテは、そのまま吹き飛ばされ、岩へと激突。


そのまま、気を失ってしまったのであった。







「ふぅ…さて、と。残ってんのは僕たちだけだな。」


クリストファーは、そう言った。


「うーん、そうだね。私は本当なら傍観者なんだけど。」


「甘いね。ここはもう戦場なんだぜ?」


「それはその通り。でも、エンディングは近いさ。」


「負けないぞ。」


「いいや、君はもう負けてるのさ。」


「どういう意味だ?」


「君は闘えるのかい?」


「当然だ、僕のウォークラフトは世界一だ!」


「違うさ。君は(・・)闘えるのかって訊いているんだよ。」


「…まさか…」


「そう、君の大事なお人形は、もう動けないのさ。」


「そ、そんな、ワケない!いけ!」


しかし、ゴーレムは動かなかった。まるで、自分の出番は終わったとでも言うように。拳は、固められたままだった。腕は、もう上がらなかった。


「ど、どうして…」


「ああ、言っておくけど私じゃないよ。」


「…あのシャルテとかいうヤツ…か。」


「そう。彼は強いんだ。」


「くそ…でも、僕だって負けない。ゴーレムが駄目でも、僕だってアルトワーレだ。」


クリストファーはそういうと、短剣を懐から取り出して構えた。あくまでも、負ける気はないといった表情だったが。


「そうか。その意思はすばらしい。でも、埋められないものはあるよ。ほら、君はもう動けない。」


クリストファーの体は、すでに弦の網の中だった。


「な、なんだこれ…」


「君は彼と戦っているときも、終始そこから動かなかったね。ここは戦場だ。闘っていたのは君の道具でも、君は戦場に立っていたんだ。」


「クッ…」


「それじゃあ、エンディングだよ。」


「…いいさ。次は負けないからな。」


「ハハ、覚えておくよ。それじゃ、もらっていくとするよ、君たちのお宝は。難攻不落の宝物庫を破った君たちの事を詠うのは、君が私に勝ってからにしてあげよう。」


「好きにしろよ!」


そして、幕引き。


アリュールの歌声は、そのままエンディングへと続いていった。


第3試合勝者、ル・ボード・デュ・モンデ。

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