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後付け強化系転生者ハジメくんの異世界漫遊記  作者: 結佐
第二章 ハジメ in 盗賊団
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番外編 少年と宝石龍 2

昨日の出来事を起因とする頭痛と倦怠感により続きを載せます、ゆるしてください。

ラースは、頭のいいほうである。このように雷が落ちるような状況で、開けた場所に居るのも木の下に居るのも得策ではないと知っていた。

また、雨による服の重みと体温の低下は、体力を著しく消耗させることも知っていた。

ラースは、頭がよかった。ふと、思い出したのは、御伽噺に出てきた洞窟。振り返れば、山は近かった。

ラースはよろよろと立ち上がると、山のほうへと歩き出した。

雷鳴と、降りしきる雨に恐怖を抱きながらも、まずは状況を変えるために、である。


おおよそ、十数分でそれらしき洞窟が見つかった。

おそらくは、地すべりによって入り口が狭くなってはいたが、子供一人が入るには差し支えないほどの大きさの入り口であった。

雨風をしのぎ、炎で暖を取るには最適だった。

ラースはすぐさま服を脱いだ。そして毛布をかぶり、携帯していた発火装置を取り出した。

メタルマッチ、と呼ばれるもので、マグネシウムの棒を削り、粉末状にしたところに火花を散らせて火を起こす道具で、濡れても乾かせば使えるのである。雨の多い地域では、もはや必需品である。

洞窟内には、幸いにして枯れ木がいくつか落ちており、それらを燃やして暖を取った。体が温まり、服も乾き始め、干し肉をいくつか腹に入れてようやく落ち着けたラースは、状況を整理し始めた。


まずは、見失ってしまった仲間たち。村の子供たちは、おそらく大丈夫だろう。確証はないが。でも、探検中に雨に見舞われるのはよくあることだし、僕らは避雷石を持っているから、自分のように吹き飛ばされることはあっても、直撃はしない。村からの距離は歩いて二時間もかからない距離だし、走れば一時間くらいだ。無事に戻れるだろう。それに、最年長のマリスは頭が切れるから、ちゃんとみんなをまとめているはずだ。

彼はおそらく、僕が生きていれば洞窟に退避するということにも気付けるはずだ。だから助けは来る。雨が止んだら、助けが来る。


そこまで考えたところで、ラースは顔を上げた。

洞窟の奥のほうに、光が見えた。


「なんだろう、あの光は。」


そうつぶやいた声は、洞窟を反響した。


ラースは、好奇心に駆られた。

生乾きの服を着て、ゆっくりと光のほうへと歩き始めた。


洞窟は、奥のほうに行くにつれ、大きくなっていった。そして最奥へとたどり着くと、光がみえるのは穴だと気づいた。


メタルマッチをこすると、一瞬洞窟の中が照らされる。みれば、落盤した岩が重なって奥への道をふさいでいるが、光が見えている部分は岩が抜け落ちているようで、どうやらラースの小さな体であれば入れそうだった。


ラースは、一瞬考え込んだ。


まずは、安全の確認。


ラースは、もう穴を通り抜けること自体は決めていたようだった。

穴から腕を出し、マッチをこする。どうやら、通り抜けた先に穴があるわけでもなく、通り抜けても問題はなさそうである。


よし、行って見よう。


12歳という若さの少年なら、誰しも冒険願望があるものである。ラースもそれに漏れず、自身の内側からこみ上げてくる好奇心に抗えなかった。


穴を抜ける。どうやら洞窟の天井から光が差し込み、その光を受けてなにかが反射しているようだった。


ラースは、綺麗だ。と思った。あれは宝石だろうか?そう考えながら、まばゆさの中を進んだ。

近づくにつれ、それがひどく巨大だということに気づいた。それに応じて、洞窟もまた非常に大きいのだと悟った。

そしてもうひとつ。光源は、どうやら生きているようであった。


「まさか…」と、思わずつぶやいた。


数十年も前の言い伝え。今はもう存在しないといわれていた生物。宝石龍。


まさにその言い伝えどおりの、美しく気高い生き物が目の前に居ることを悟った。


「誰だ…?」


そしてその生物が、人語を話すことを知った。


「人間か?」


そしてその声が、耳ではなく頭から入ってくるということに驚愕した。


「久方ぶりだが…我を殺しにきたというのか?」


そしてその意思が、明確な殺意だということに恐怖を覚えた。


むくり。と、その生き物は鎌首をもたげた。

翡翠色に輝くその眼は、射抜くようにこちらを見ていた。

ラースは、体が動かなかった。蛇にらみとでも言うのであろうか。今まで急速に動いていた心臓までもが、その一睨みで一瞬のうちに沈黙したような気すらした。


「だんまりか。いいだろう、死に行く者に言葉など必要なし。」


ゆっくりと立ち上がる宝石龍は、洞窟の天井から差し込む光を浴びて、より一層煌いた。


「よく見れば、小さいな。まだ子供ではないか。」


雄雄しく立ち上がる宝石龍は、ラースが恐怖におののき固まっていることに気づいた。


「ふむ、どうやら殺しにきたわけではなさそうだ。」


ラースはいまだ状況が把握しきれておらず、声すらも出せず、宝石龍がもとの形に戻り、寝息を立てるまで、その姿を見ていることしかできなかった。

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