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後付け強化系転生者ハジメくんの異世界漫遊記  作者: 結佐
第二章 ハジメ in 盗賊団
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第三十九話 ハジメ、世界大盗賊団武盗会に出場する 15

夜。


国立宝物庫では目立った大きな動きはない。

つまり、相手方のル・ボード・デュ・モンデはまだ動いていないということだ。

まあ、つまりそれは面倒なことになるという可能性が高くあるということを示しているが。


どちらにせよ、俺たちの作戦において、彼らが出張って宝物庫でドンパチやられることは想定していなかったし、妨害はおろか潜入することも多分ないだろうということは重要なファクターであるとも言えるが…。


万が一やつらがドンパチしたとしても、ブツさえどこかに行かなければさして問題はない。


俺たちは宝物庫の中にブツが大事にしまってさえあればいいのだ。


だからこそ、俺たちの作戦はうまく行く。



時刻は8時。そう。パーティの始まりだ。







「クリストファー。感度は?」


「オーケー、良好だ。いつでもいけるぜ。」


「わかった。それじゃ、はじめようか。」


「ラジャー。3・・・2・・・1・・・ファイアー!」


瞬間、宝物庫の周りで爆音が鳴り響いた。

別段、あたり一面が燃え上がっているわけでもなし。

その代わり、夜空にヒュルルルル…と火種が飛んで行き、大輪の花が星よりも明るく咲き誇ったのであった。


「な、なんだ!?」

「ありゃぁ花火か?」

「なんの祭りだ?聞いてないぞ?」


宝物庫の防護をしている魔法使親衛隊は宝物庫からいっせいに飛び出た後、爆音の正体を知り口々にささやきあった。


それは、宝物庫の近くを歩いていた通行人たちも同じであり、瞬く間に多くの人々がグランダルシアの中央へと集まってきたのであった。


「よしよし、花火はうまくいってるな。もっともっと打ち上げてやれ、クリストファー。」


「まかせろ!」


「さて、んじゃ俺たちも行くとするか。」


「ああ、行こうか。」


「会場に、ね。」


「おいクリストファー。転移先はどうだ?」


「花火に乗じて転送中。大丈夫、うまくいってるよ。」


「上出来だな。さて、それじゃ回収地点に向かうとするか。」







夜10時。俺たちの打ち上げた花火は盛大なフィナーレを迎え、観客たちは拍手をしながら、夜空を彩る陽動に感動の言葉をつぶやいた。


魔法使親衛隊も、役目をほっぽり出して花火を見上げる観衆となっていたし、受付嬢も、同じく観衆の一部となっていた。


ところで、その間グランダルシア国立宝物庫は、文字通りもぬけの殻だった。


人々は突然の花火に夢中だったし、誰もいなくなった宝物庫の中の宝物たちも花火と聞いて特等席へと飛んでいった。


そう、花火の打ち上げと同時にひとつずつ、宝物たちは俺たちが花火を打ち上げている場所に集まっていた。


それは、ダルタニアンが仕掛けたマジックアイテム、「空域指定転移札」による転移魔法。


部屋の隅々まで宝物を閲覧していたフリをしていたダルタニアンは、転移札による結界を作り出していた。


まず部屋の四隅。そして、高さ…つまり、高度指定だが。


それこそが、サラが受付嬢に渡していた例のネックレス。これが高さを決定する最後のファクターだ。


つまり、花火を見上げている彼女の胸元の高さが転移結界の高さを決定している。


部屋の四隅に転移札を貼り付けたのはダルタニアンのブーツだが、高さまでそこで決めるとすると、どうしても目立ってしまう。


だから、首から下げるネックレスによる指定を決行した。


ちなみに、クリストファーが部屋の照明を故意的に壊した後に直すという案もあったが、宝物が安置されている什器の高さがそこまでたいしたものではなかったので、最初に決めていたネックレスという案に落ち着いた。


だから、クリストファーが待っているその森の中に、グランダルシア産宝物展覧会が繰り広げられている。


そして、今俺たちはその物品をまとめていた。







「よう、久しぶりだなグラトニー。」


俺たちは、俺たちの代わりに宝物を盗み出してくれた競争相手に挨拶した。


俺たち、ル・ボード・デュ・モンデとアルトワーレ盗賊団、チーム・ナイトホークは腐れ縁。なんでかっていうと、何度も何度も盗みの邪魔をし邪魔されてきたからだ。どうにも、このグラトニーとかいうやつとは感性が似通ってるらしい。


俺たちが狙うお宝をそいつらも狙ってることが多すぎる。だから一時期は連絡を取り合って別のお宝を狙うことにしたこともあった。


「ああ。来ると思ってたよ、デメテル・スカーリンド。それと、お仲間の皆さん?」


「今日はお礼を言いに来たんだ。俺たちの代わりにお宝を集めてくれてありがとうってな。」


「言ってくれるな。当然、俺たちが絶対にブツを手に入れるってのは織り込み済みだったってわけだ。」


「ああ、それなりに評価してるからな。初奪取の名誉はくれてやる。だけど、ブツは渡してもらおう。」


「ハハハ。そんな易々と渡すと思ってるのか?」


「思ってない。だから、戦う準備をしてきたんだ。」


「そうだろうな。思いっきりやる気満々って感じだ、君たちは。」


「さて、受け取ってもらえるかな?俺たちの果たし状をさ。」


「いいだろう。どちらにしろ、選択肢はなさそうだ。それに…」


「それに…?」


「いい加減、俺たちと君たち。雌雄を決するときだと思っていたからな。」


「お前ならそういってくれると思ってたよ。」


「まぁ、盗みの技術は俺たちのほうが上だって証明したところだからな。」


「ほーう。相変わらず達者な口だな。」


「君には言われたくないけどな。さぁ、はじめようか。」


「ああ。お前ら、行くぞ。」


そして、戦いの火蓋が切って落とされた。







「覚悟しろよ、デメテル・スカーリンド!」


「それはこっちのセリフだ!」


デメテルとグラトニーは獲物を構えて向き合った。デメテルの獲物はメリケンサックのような刃がついた鉄拳で、超硬度鋼により作られた父親の形見である。対し、グラトニーの獲物は刃渡り60センチほどの双剣。魔力感応鋼によって形作られた刀身は、こめた魔力によって様々な付加効果を得ることができる。


初手、デメテルが鉄拳で殴りかかる。直進的で間合いも狭い鉄拳を扱うのは難しく、攻撃する面自体が肉体と近いために、リスキーな武器だ。


それを補う真骨頂。それが圧倒的な超至近距離での攻撃である。

数多くある武器種の中でも、拳を主に使う攻撃は反撃の可能性を狭めることができる。つまり、相手の腕の先に武器があるという時点で、懐に踏み込めば一度突き放すまでは殴り放題なのである。

相手が反撃をするには柄の部分や刀身の根元近くで攻撃するほかなく、近ければ近いほど相手の呼吸や動きを見切りやすいので、攻撃を防ぎつつボディに何発か打ち込むことができる。


鉄拳という武器の特性上、相手の体に打撃を与えることでじわりじわりとダメージを蓄積できるので、後になって響いてくる。それゆえに、達人の域まで達した拳術使いは、攻撃を完封して相手を倒すことができるという。


「近づけるとでも思ったか?」


対し、グラトニーの双剣。一撃で相手を戦闘不能にまで追い込む重い一撃を有する、ディアスが扱うような大剣とは違い、手数で相手を圧倒する武器である。


また、二振りあるその剣は、場合によっては攻撃と防御どちらにも有効で、片方で攻撃を受け流しもう片方で切りつけることができる。

そのほか、片手剣と同じ要領で使い、ダメになったらもう一本を使うといった運用もできるため、長期戦向きである。


互いの武器は共に至近距離専用であり、リーチは双剣の方が上だが、有利不利でいえば、至近距離まで持ち込まれた際には鉄拳の方が有利である。


そして、その明暗を分けるのは、武器自体の重さである。


鉄拳の方が軽く、取り回しやすい。

対し、双剣は二振りあるために、リーチが短いが思ったよりも動きづらいというのがあり、デメテルの拳は受け流すといったことが難しい形であるため、グラトニーは不利な戦いを強いられるのであった。

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