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後付け強化系転生者ハジメくんの異世界漫遊記  作者: 結佐
第二章 ハジメ in 盗賊団
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第二十九話 ハジメ、世界大盗賊団武盗会に出場する 5

昨日は酔いつぶれて家に着いたのが朝の4時でした。仕事もあったのでアナウンスなしで更新できなかったことを謝罪いたします。

そして、本戦第一試合の内容が発表された数時間後。


時はすでに夜の8時ともなっていた。試合会場、もとい、略奪対象である「グリフォンの涙」が安置されているグリンベルツ公爵家の所在地は、会場からおおよそ1時間ほども歩かなければいけない距離にあり、実際のところ、この時間にはそろそろ作戦を決行しなければならないといった時刻である。


まず、最初に移動を開始したのはサイレント・インセクトの面々であった。


グリンベルツ公爵家は、アンリッヒヘイゼン共和国首都、大都市アルセイナス(今回の大会の開催地もこのアルセイナスの端っこのほう、貧民街と呼ばれる地域の地下にある)の中央に位置する、富裕層が軒を連ねている地区、通称「貴族街」と呼ばれる場所の一角に存在している。

都市の中央に位置しているとだけあり、昼はもちろんのこと、この夜が始まったばかりの時間でも多くの人々の往来がある。

実際、軍が昼も夜も賊や他国の人間が攻撃してこないように見張っているアルセイナスという土地の、さらに重要な人々(貴族たちは少しでも何かがあるとすごくうるさいと衛兵たちは口をそろえて言う)が集っているこの貴族街で盗みを働くというのは、なかなかのものであると思う。


しかし、思い出してみると、ディアスは確かにこういっていた。

世界各地の盗賊団が集まって、「盗賊協会」の指揮の下、盗賊に必要なものである、勇気(無謀さ)、力(略奪力)、知恵(悪知恵)、運(悪運)を競い合う正当な大会なんだ。と。

なるほど。この本戦、確かにこの四つは必要不可欠だろう。というか、勇気(無謀さ)に関しては、もはや運営側が強いているようなもので、もっといろいろ考えられたろ?とも思う。


まあ、それはともかくとしてである。


サイレント・インセクトの基本スタイルは、「即進入・即奪取・即脱出」というものであり、気づかれず、余計な戦闘はせず、手の届かないところに早々に逃げるという理にかなったものである。


そのため、といってはなんだが、彼らは変装の達人なのである。会場では、おのおのが自分のコードネームであるものをモチーフにしたマスクを被っていたが、今回の作戦においては、イミテーションの魔法を使って貴族街の人々と同じような格好をしているのだ。


つまり、それは衛兵たちにも怪しまれず、しかも、貴族街の人々にとっては人を呼んでのパーティなどが日常茶飯事であるため、今まで見たこともない貴族が別の貴族のパーティに参加する、といったことは別に珍しくもないことであり、それゆえに彼ら4人が別々に移動手段を用い、グリンベルツ公爵家に向かおうものならば、そこにいる人々は「ああ、知らない貴族だが、彼らはどれほど金を持っているんだろうな?」などという推測しかできるまい。


つまり、絶対進入不可領域の一歩手前までは、たったひとつの魔法でたどり着けるということなのである。


さて、彼らサイレント・インセクトがスマートに目的地の中に侵入したところで、ブリッツ・シーフもまた、動きを見せた。


彼らは、サイレント・インセクトが動くのを待っていた、といっても過言ではない。彼らのブレインであるグレイス・オルドワルト。グレイスは非常に頭の切れる人物である。その彼が他の盗賊団と同じ内容物を奪取するという試合内容を聞いたとき、なにを思うかなど、愚問であった。


使えるものは、なんでも使う。


グレイス・オルドワルトはそういう人間である。彼は、非常に合理的な現実主義者なのである。


で、あるならば、ひとつどころのイレギュラーを頭に入れておくだけで、実にやりやすい展開に事態を動かすことなど、元軍師であった彼には朝飯前であるのだ。


すでに、グレイス・オルドワルトは、自らの右腕であるディック・アルフレッドを会場にもぐりこませていた。


このディック・アルフレッドという男は、世界でも屈指の鑑識眼の持ち主である。彼は、生まれつき魔法を見破る力があったのである。


さて、グレイスはディックがサイレント・インセクトの面々が舞台であるグリンベルツ公爵家のパーティにもぐりこんだという報告を受けた。ちなみに、この行動については彼はすでにそうなるであろうと絶対的な経験から予測していた。

そこから導き出されるのは、敵である彼らを利用するという手段である。


それというのも、ディックもまた、変装の達人であるのだ。その能力を使い、グリンベルツお抱えの執事に化けていた。

そして、グレイスの指示により、公爵家の使用人には、本日パーティに乗じて賊が現れるということを伝えていたのであった。


ところで、ご存知であろうか。人間の心理を動かすことは、実は思っているよりも簡単だということを。

たとえば、手品師が手品を行う際、見られたくない部分を、人が注目したくなるような行動で隠す、といったものである。


今回の場合では、賊が侵入し、グリンベルツが誇る家宝を盗みにくるかもしれないという情報を流し、屋敷の人々の注目をそれらに注がせるという状況を作ったのである。


人は、一時を乗り越えると油断する生き物なのだ。つまり、ブリッツ・シーフが導き出したこの試合の最適解。それこそが、正面での戦いをするということであった。


時刻はすでに8時30分。使用人たち、ひいては屋敷の主たちでさえ、今日この日に家宝が狙われるという情報を知っていて、サイレント・インセクトが動き出したころ、訓練された使用人たちは、すでに行動を開始していた。


即進入、即奪取、即脱出。そんなスタイルが基本である彼らは、パーティの途中で合流し、絶対進入不可防護壁に守られた部屋へと侵入していた。


実は、この絶対進入不可防護壁。実は、確かに侵入は不可能なのであるが、進入できないのは実体を持つものだけであり、しかも中に入ったものが外に出る事に関しては考えられてはいなかった。


それを突いた奪取方法。それこそが、魔法の使用である。


たとえば僕のように、人並みはずれたクラフト魔法を使えば、実体を持たない状態で進入した魔力を使ってマジックハンドを作って壁から引き抜くということが可能なのである。


もちろん、それはあくまでたとえの話であり、僕だったらマジックハンドを使うかもしれないが、盗賊団はもっとシンプルなことを考えたのである。


つまり、サイレントインセクトが使ったのは、防護壁内部で膨張するものを作り出すという大胆な魔法であった。


言ってしまえば、風船のようなものである。


内部に魔力を侵入させ、目標物に達した魔力を実体化、膨張させ、「グリフォンの涙」が安置されているケースを防護壁から飛び出させた。

こうして、まんまと家宝を盗み出した彼らは、脱出を図る。


しかし、である。ブリッツ・シーフの策略によりこのような事態は想定済みであった使用人たちは、サイレント・インセクトが脱出するであろう場所に数十人単位で待機していたのであった。


グリンベルツ公爵家は、アイゼンリッヒ共和国の思想の下、使用人たちは戦闘のプロを迎え入れているのである。

ともすると、サイレント・インセクトの面々は、次々と現れる使用人たちと戦闘をしなければならなかった。

これには、サイレント・インセクトも苦戦し始め、進入、奪取からおおよそ30分も経過したあたりで、とうとうメンバーであるマンティスが使用人に捕縛され、かのアルドアもハイディングし続ける余裕もなく、彼らの得意なスタイルを封じられた脱出劇を行うも検討むなしく全員お縄頂戴という憂き目に会ったのであった。


そしてディック・アルフレッド。彼は使用人の先頭に立ち、マンティスその人を捕縛し張本人であった。彼は全員の捕縛が完了したのを見届けると、アルドアから「グリフォンの涙」を奪い取った。


そして、使用人たちに言い放ったのである。


「皆さん、お疲れ様でした。皆さんの尽力により、われらがグリンベルツ公爵家の家宝、「グリフォンの涙」を無事守りきることができました。どうか、本日はこの快挙を祝い、存分にお休みいただきたい!」と。


そしてまんまと「グリフォンの涙」を手にした彼は、無事取り戻したという安堵と戦闘の疲れを負う使用人たちに、「私が戻しておきます。戻りましたら、小規模ながらパーティを行うと旦那様が申しておりましたので、そのとおりにすることにしましょう。」

といった発言をし、そのまま屋敷を後にしたのであった。


サイレント・インセクト、実に4人もの捕縛(のちに脱走したらしい)。

ブリッツ・シーフ、実働犯1名、負傷なし。


そして会場に戻ってきたディックは、会場から一歩たりとも外に出ていないグレイスの元へと歩いていき、恭しく「グリフォンの涙」をささげたのであった。


「第一試合、ブリッツ・シーフの勝利イイイイイイイイ!!!!!!!」


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」



会場が盛大な叫びに包まれる中、22時45分。第一試合は、ブリッツ・シーフの勝利によって、幕を閉じたのである。




余談ですが、積みゲーだったCLANNADを久しぶりにプレイしました。

僕は智代一筋です。

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