第二十七話 ハジメ、世界大盗賊団武盗会に出場する 3
Bブロックの試合は、Aブロックとは違った戦いが繰り広げられていた。
どうやら魔法を使えるものが居たようで、それも攻撃魔法ではあるのだがかなりエグい感じの魔法を使っていた。
というのも、彼が魔法を唱えて発生させたのは毒の霧であった。彼が放った毒の霧は入り口を占拠。そのせいで入り口は死体の山、もとい死亡転移の光の氾濫が起こっていて、ただでさえ視認しにくい霧の中、そこかしこで死体が転移してそこらじゅう光っているので見ているほうとしても目に痛い光景であったが、実際その場に居た盗賊たちにとってはまさに地獄のようだったであろう。
そんな地獄を作り出した本人は恐らく味方までもを会場へと転送、悠々と探索を始めて出場券を見つけ、一人として生き残っていないフィールドをゆっくりと歩いて本戦に出場したようである。
これには盗神パンも「忙しくて実況する暇も無いが、とりあえず「ナイトメア・グール」本戦出場おめー!!!」と言い残して死体をひたすら蘇生する作業を行っていた。
想定外の戦闘模様であったが、開始から大体1時間くらいで終了し、「Cブロックいくぞー」という少し疲れたパンのアナウンスにより、即Cブロックの予選が開始された。
Cブロックは速攻…それこそ5分とかからず終了したのであった。
というのも、目的のアイテムを探知できるスキルを持った盗賊が居たようで、本来なら迷うはずの迷宮をスルスルと走りぬけ出場券をゲット、そのままハイディングの魔法を唱えたその盗賊は、相当練度が高かったのか、誰にも見つからずにゴールした模様である。
「おっとおおお!!これは最高記録だ!!!スマートに誰も殺さず盗み出した「サイレント・インセクト」のアルドアに惜しみない拍手!!!!」
「ウオオオオオオオオオオオオ!!!!」
コレには僕も拍手せざるを得なかった。というか、僕にはどこに居るのか完全にわかっていたのだが、恐らく探知を使っていた他の盗賊たちの監視の目をかいくぐるさまはまるでステルスアクション映画をみているようであった。
直後、「Dブロック準備ー!!!」という掛け声があがり、それから1分ほどしてDブロックが始まった。
恐るべきテンポである。
Dブロックはというと、これまでの予選からすればかなり普通の展開となった。
もはや普通とはなんだろうか?という疑問すらあがるこのWTG予選だが、普通といえば普通なのである。
というのも、少しずつ数が減っていく盗賊たち。そしてやっとこさ出場券を見つけ手に入れた盗賊が襲われ、ドンドン出場券を持っている盗賊が変わり、最終的にゴールしたのは入り口に待ち構えていた盗賊たちの一人であったからである。
なるほど、これが本来の予選らしき戦いなのであり、だからこそディアスはこの戦法を取るといっていたのだと納得した。
ちなみに勝利したのは「アルトワーレ盗賊団」という大手の盗賊団であった。
そして来たるEブロック。僕らの登録してあるブロックである。例によってDブロック終了後に転送されることになり、ちょっとした作戦会議を始める僕らであった。
「とりあえず、俺たちは例年通りゴールで出場券を待ち構えることにするぞ。」
「うむ、それがいいだろうな。」
「自分、先行組が行った後で罠を仕掛けますね。」
「あ、僕は悪いけど一人で探しに行くからね。」
「あ?なんでだ?」
「だって、もう待ってるの疲れたし。」
「…ディアス、ここはひとつ、他の盗賊団にこのフィラーの実力を見せ付けて牽制しておくのも手だと思うぞ。」
「うーん…そうだなぁ。まぁ、なんとかいけるだろ。毎回予選は突破できてるしな!というわけで、好きにやって来いフィラー!」
「あ、そしたら自分の仕掛けた罠には気をつけてくださいね。」
「わかった!」
と、そこまで話したところで転送が始まった。
*
「おーし、行って来い!!」
「アイサー!」
と、僕は意気揚々と出発した。僕はまず、雷神流奥義・旅雷を発動した。旅雷は自分の足の裏に雷を生み出すことで、移動速度が尋常じゃないくらい速くなる技である。
バリバリバリー!!と音を出しながら一人他の盗賊たちを措いて目的地、つまり、探知によって発見した出場券が隠されている場所へと一直線に進んでいく僕の姿に、他の盗賊たちは度肝を抜かれたようだ。
「なんだアイツ…」「まさか探知もちか!?」「つうか早すぎだろ!」「オイ!追いかけてもつかまんねえぞ!どうする!?」「…待つか。」「だな。」
などという会話が後続で繰り広げられていることなど露ほども知らない僕は爆走し、妨害なく出場券を手に入れたのであった。
さて、ここからだな?と僕は気合を入れることにする。
敵がどこに居るかもわからないし、罠が貼られている可能性もある。ならば、それらを迂回して出口に向かうのがいいだろうと、僕はそのまま別のルートで出口へ向かうことにした。
当然、1200人もの盗賊の集まるフィールドであるからして、普通に探しに行った連中と鉢合わせすることも遭ったし、探知で僕の場所を察知して襲いに来るやつらもいたが、そこはそれ、僕のボルケーノナイフが活躍する場面である。
まず、鉢合わせした彼らに関しては、僕も探知を発動させながらだったので接近には容易に気がついた。なんなら、スピードは圧倒的に僕のほうが上。ならば、と、すれ違いざまにナイフで切りつけながら駆け抜けていく。
彼らからすれば、向こうから光が見えたなーと思った次の瞬間超高熱の刃で体を切り裂かれ強烈な痛みを感じた後気づけば会場というわけのわからない事態に陥っているはずであり、ちょっと悪いことしたかなと思う僕であったが、今度は居場所を察知して襲ってくるやつらと戦うことになったため、そんな思いは彼方へと消えた。
襲ってくる彼らは、それなりのスピードはあったものの、僕の早さにはかなうはずも無く、追い抜いては縋る敵をカウンターで切りつけ、上から跳んできたと思えばこっちも跳躍して切り返し、さらに背後からナイフを投げてくる敵があれば、少し卑怯だがナイフに仕込まれている機構を使って炎の飛刃を放ってやり返し、とまることなく出口へと向かう。
そして出口では僕の出待ちというか、最初に追い抜いた盗賊たちがアイツを倒すのは俺たちだ!と互いに攻撃しあっていたため、その数に辟易した僕は少し卑怯だが範囲をかなり広げた閃却万雷を戦闘地点のど真ん中で発動させて大多数を会場送りにし、ビビらずに立ち向かってくる盗賊たちを心の中で褒め称えながらナイフで迎え撃って打ち倒してゴールまで駆け抜けたのであった。
経過時間にして4分。最高記録である。
*
「俺たちはとんでもないものを見ているぜ!!!!迷宮を駆け抜けるその姿はまさにイダテン!!!!毎年優勝候補と歌われる「ナイトグラスホッパー」!今年はとんでもない隠し玉を持ち込んできた!!フィラー・ヴィルトスという無名のルーキーに惜しみない拍手!!!!」
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
大歓声である。ちなみにナイトグラスホッパーの面々はドン引きしていた。
「お前ホントすげえな。」
「すさまじい活躍だったな。俺たちの出る幕が無かったぞ。」
「自分、巻き込まれてやられちまったっす!」
と、ニッケの髪の毛が若干焦げていたが、勝利は勝利なので、僕としてはかなりのドヤ顔であった。
その後も予選は続いていき、各ブロックの本戦出場者が決まったところで、本日は解散となったのであった。
ちなみに、翌日から本戦である。




