第二十五話 ハジメ、世界大盗賊団武盗会に出場する 1
「んで?予選は簡単、8つのブロックに別れている迷宮型コロシアムでのバトルロワイヤルで、隠されている本戦出場券を持って入り口に帰ってきた人が加入してる盗賊団が上位に上がるってことであってるんだっけ?」
「そうだ。ちなみに俺たちの基本的なスタイルは、最初は入り口に隠れていて、出場券を持っているやつが疲弊しているときに襲って略奪してそのままゴールするって寸法だ。」
「だから卑怯だよ!」
「卑怯で結構だ!なぜなら盗賊だからな!!!」
あれから数日、僕は盗賊の心得をきちんと(?)教えてもらい、偽名を使って(契約はしたけど名前は出場選手名簿には書かれていなかったので変更可能だった)WTGに参加することとなった。
メンバーは4人。ディアス、アッシュ、僕と、ここ最近で急成長したニッケである。日数的な猶予はあったので、僕はリベル・ファーストで使っている武器はすべて封印し、今度はボルケーノドラゴンの素材で作った新しい盗賊っぽい武器を持って参加することにした。
盗賊っぽいといえば、ナイフ!というわけで、ボルケーノナイフという武器を新しく作ったのである。
ボルケーノナイフは、逆手で持つのに適した湾曲した太い刃が特徴のナイフで、手の部分には鉄甲のようにガードがついていて、受け流しながら勢いを乗せて敵を切ることができる構造になっている。
ボルケーノと名前がついていることから予想できるとおり、刃は高熱を保持していて、常に陽炎をまとっているという中二仕様である。
当然、鎧をやわらかくしながら切ることができる上に、切りつけた体組織は焼かれて出血はしないが、代わりに回復にかなりの時間がかかるというなかなかエグい武器である。
ちなみに偽名は、「River First」の並び替えで、「Firer Virts」、つまり、フィラー・ヴィルトスというものである。
はてさて、そんなこんなで、僕らは今回の開催国であるアンリッヒヘイゼン共和国に来ていた。
アンリッヒヘイゼン共和国は、アルバニア公国の西にあるでっかい国である。アルバニアと同じく、多くの領土がある大国のひとつであり、軍隊や自衛団の練度は大国の中でもかなり高く、領土もそれなりに大きいために戦争したらタダではすまない。
現在は、大国同士できちんと条約が締結しているために、よっぽどのことがないと戦争には発展しないのであるが、それはそれと共和国の兵たちは毎日の研鑽をかかさない。
また、このアンリッヒヘイゼン共和国は人種差別の無い国であり、亜人種だけでなく、時には知能の高い魔物までもが人間と共生して暮らしているという稀な国である。
そんな背景もあってか、民は人間よりも亜人種や獣族、魔物のほうが多いときたものである。共和国、恐るべしといったところか。
そんな国であるからして、自衛団、引いては軍隊、そして政治の中心ともなる機関ですら、種族関係なしの完全実力主義である。
ましてや、そんな国でWTGを行うという盗賊協会は、多分世界一命知らずな協会なんだろうなと僕はにらんでいる。
ところで、種族関係なしという国風ゆえに、全種族が一緒に暮らしている国がほとんどなので、各属国では本当にさまざまな品物や製品が作られているので、アンリッヒヘイゼンで手に入れられないものはない!とまで言われるほどであり、そんな国に降り立った僕は、WTGのためという事実を抜けば、心からワクワクしているのであった。
そんなわけで。
開催まであと数日あるWTG。数日あるなら全部の国回れるんじゃないか?と思った僕は、転移でさまざまな国を駆け巡ることにしたのである。
そして開催日の前日、なんともまあ僕は衝動買いをしまくったおかげで、なんだかんだで3200万ルクスほどだったお金が100万ルクスくらいに減ってしまった事実に驚愕していた。
ただ、いろいろなものを作れる僕としては、倉庫夢のようなアイテムたちが詰め込まれているから後悔はしていない。
ところが、途中から僕についてきたニッケとディアスに関しては僕の金遣いの荒さにとことん引いたようで、わずか数日で3000万以上も使ったのかよ!!と全身全霊でツッコんできた。
そして本日は開催前日である。
僕はその日を使って異次元にこもり、いろんな武具やアイテムを作ってWTGに備えることにしたのであった。
*
そして、WTGの当日となった。
まずは、予選である。
正直、僕としては最後の最後で略奪するという卑怯極まりなく失敗したら予選通過もできないというリスキーな戦法には従えなかったので、予選は絶対に自分の力で一番に出場券をゲットし、そのまま逃げ切ってやるから入り口で待ってろ!とディアスたちに伝えた。
「相当やる気だな!最初はあんなしぶってたのに」
とニヤけながら笑うディアスに心底ムカついたが、僕も大人であるからして、毅然とした態度で「勝負とは正々堂々とやるもんだ」と言ったところ、「盗賊からすりゃアマちゃんだぜ!」とさらに笑われたので、絶対に見返してやる!と心に誓ったのであった。
そしてそんな会話を繰り広げている僕らが建っている場所、会場となる地下に立てられたコロシアム。そこには、1万人ほどの盗賊たちが集結していた。
「ヘーイ!レディイイイスエエエエンドジェントルメエエエエン!そんなやつらはここには居ないな!?そう、ここは生きるために盗んで盗むために生きてきた、俗物共が集まる最低のコロシアムだぜええええ!!!!」
そんな文句を放ちながら、コロシアムの中央にド派手な煙幕と共に現れたのは、道化師のような格好をした男であった。
観客、もとい参加者たちは「ウオオオオオオ!!!!」という歓声を上げているが、その絵面はなかなかにムサい。というか、みたところ女性の盗賊など少ない上にこんな武盗会に参加することも少ないと思われるためにムサ苦しいのはしかたないのであるが。
「さてさて、毎年恒例ともなったこのWTG!!!今回は記念すべき30回目!!!そろそろ世間のお偉いさんたちも俺たちの存在に気づいているころだが、そんなときだからこそデッカク!派手に!スマートにやつらのお宝をいただいてやろうじゃねえか!!!!」
「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
なんてクソ迷惑な大会だよホントに!!!というか30回ってことはすくなくとも30の国は被害を受けてるってことじゃねえか!
「さぁてぇ、それじゃあルーキーたちにもわかるようにやさーーーーしく予選のルールってもんを教えてやる!耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ!!!」
と、道化師の男が言うと、彼の周りには光魔法で作り出されたと思われるディスプレイが浮かびあがった。どうやらそれで図を交えつつ教えてくれるようだと思ったのだが…
「戦闘形式はバトルロワイヤル!!しかし、ただ殴りあうだけじゃアツいけど盗賊のナンバーワンを決めるには少し能筋ってもんだよなぁ?だからバトルロワイヤル式で競争相手をぶっ飛ばして迷宮を進み、どこかに隠されている本戦出場券を手に入れ、それをもって出口に帰ってこられたチームが本戦にいけるって寸法だ!!お前ら、殴って逃げて奪って隠れて盗賊っぽくハジケやがれえええ!!!」
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
たしかにわかりやすい説明であったのだが、ディスプレイには子供の落書きのような図解しか写らなかった。
どうやら、場面場面の図解であるようなのだが、絵が下手すぎてわからん!と思った矢先、ディアスが「ああ、あの図解毎年ああなんだよ。ま、俺たちにはわかるけどな!」と言い出したので、僕は絶対盗賊になれないと思ったのであった。
「さあまずはAブロックの予選を始めるぜ!!Aブロックの登録チーム共、今すぐに転移を始めるから転移札を持ってるリーダーの体に触れて待ってろ!!!」
どうやら、間髪居れずに予選が始まるらしい。ちなみに、僕たちが登録しているのはEブロックである。




