第二十二話 ハジメ、試し切りをする
「おはようございます。」
朝になると、僕は、ルベリア冒険者ギルドに向かった。
昨日の宴の席に向かうと、全員が全員そこで寝ていたので、起きるのを待った。
当然、昨日僕が書いた置手紙など読まれているはずもなかったので、サイアスの額から剥がしておいた。
そして彼らがほぼ同タイミングで起きたことに少しビックリしつつも、朝の挨拶を済ませたのであった。
後から聞いた話だと、竜人たちはほぼ毎朝決まった時間に起きるようになっているらしい。
「おう、リベル!おはよう!なんだ、ギルドでまた一晩過ごしちまったようだな。」
「うぅ…飲みすぎました…」
「おう、お前ら、もっとシャキっとしろ!」
「イテッ!お、起きてますよ!」
「僕らは低血圧なんです…イテテ…」
僕は、サイアスがリグレアとドルガを小突くのを見て、コイツラ本当に自由だな、と心の中で思ったのだが、口には出さなかった。
*
それから十分程度経過し、全員がきちんとした顔つきになったところで、新しい武器の試し切りをするためにクエストに向かうことになった。
選んだクエストは、武器の作成で資金が消し飛んだ彼らに同情し、少し難しいがお金がたくさん手に入るクエストを選択した。
余談であるが、僕が武器つくりに没頭している間に、リグレアとドルガはSランクに昇格したらしい。なので、今回受けるのは、Sランク以上でなければ参加できない上位のクエストである。
討伐対象は、ボルケーノドラゴン8体の討伐である。
インペリアルサンダードラゴンとかいう強敵を倒した彼らにとっては、試し切りにちょうどいいだろうと踏んでのことだ。ただし、僕はオリハルコンがほしかったので、火山以外のクエストは眼中になかったというのは内緒である。
*
なんでも、今回討伐するボルケーノドラゴンは、急に現れたらしく、どうやら先日のボルケーノドラゴンは産卵のためにエネルギーを欲したメスだったらしい。無事産卵を終えて体力を取り戻そうと狩をしている最中に僕らに狩られたようだが、その卵がいっせいにかえったらしく、しかもその気性の荒さゆえに縄張り争いをした結果、急激に成長した8体のボルケーノドラゴンがそこらを闊歩しているらしい。
そんなわけで、僕らは別れて散策し、見つけ次第討伐するという形をとることとなった。当然、僕は単独行動である。
5人は、もしものことがあるといけないと言い、コンビネーションの練習も兼ねて5人で動くようである。
僕としては、そのほうがありがたかったので、「じゃ、またあとで。」と言い残して一人転移した。
先日に引き続き、探知スキルは大役立ちである。僕のインベントリの中には、オリハルコンやアロンダイトがたくさんストックできた。さて、そろそろ動くか、と思った矢先、前方にボルケーノドラゴンが確認できたので、せっかくだし、と、インベントリから超電磁魔弾砲を取り出して試射してみることにした。いや、インドラのパーツで威力は見たのだが、実際に生きている敵に撃つのは初めてだったので、物はためしに、ということである。
ボルケーノドラゴンは、哀れなアロンダイトリザードを捕食している真っ最中であった。どこかでみたような光景だな、と思いつつ、僕はレールガンを構えた。
魔力を流しながら、引き金を引く。
すると、内部に埋め込んである魔方陣が反応し、魔法によって作られた弾丸が発射された。すさまじい放電と共に、音速を超える速度で魔弾はボルケーノドラゴンに直撃した。
瞬間、小さな爆発が起きたと思うと、魔弾はボルケーノドラゴンの背後にあった山肌に激突し、大きなクレーターを作った。
あれ?あたんなかったの?と僕は思ったのだが、よく見るとボルケーノドラゴンの体に大きな風穴が開いていた。
あ、これやべーやつだ。
久しぶりに僕はそう思った。近寄ってみると、拳大の大きさだったはずの魔弾が貫通したであろう部分は、直径1メートルほどの大穴が開いていた。
これ、威力高すぎじゃね?と戦慄したのだが、どちらかというと、この死体見られたらアカンと思った僕は、すぐさま死体をインベントリにしまいこんだ。
直後、別のボルケーノドラゴンが、岩肌で起こった大きな衝撃につられてやってきたようである。
ならば、と、僕は腰に刺してある雷神刀に手を伸ばした。
じゃあ、どうせなら奥義使ってみようと思ったのである。
そして発動するのは、雷神流奥義・居雷。
これは居合いぬきと同じである。というか、雷の力を使って、ただでさえ神速と呼ばれる居合い抜きの速度をさらに上げるという脳筋な技であり、たぶん僕ですら捕らえられない速さだと思う。それを扱えるのは、ひとえに特性のおかげである。
と、ボルケーノドラゴンが僕に気づき、その脚力でグン!と近寄ってきた。僕は久しぶりに見切りの極意の恩恵にあやかり、ボルケーノドラゴンの前足によるひっかきの間合いを見切ると、それを紙一重で交わして居雷を放った。
やはり、僕でも捕らえ切れなかったその神速を超える太刀筋は、ボルケーノドラゴンの体を抜けたようであった。
直後、僕の背後で背中合わせになっているであろう彼の体は、上下に真っ二つに別れた。
いや、えげつなくね?と僕は思ったが、やっぱりこの死体もみせられたもんじゃなく、即効でインベントリにしまったのだが、今度は居雷の際に一瞬だけとどろいた雷鳴につられて、3体目のボルケーノドラゴンが姿を現した。
これに僕はヤケになってしまい、いくとこまでいってやる!と、雷神刀を構える。
次に放つのは、遠雷である。この技は、居雷と同じ動作をするのだが、少し魔力を加えて刃から雷を飛ばす遠距離攻撃である。
件の3体目とは距離があったので、使ってみようと思い立った。
僕は一度抜刀した雷神刀を鞘に収めると、フッ!と息を吐きながらもう一度抜いた。
瞬間、ドゴォオオン!という雷鳴が鳴り響き、刀身から青白い雷が一直線に彼に向かっていった。
というか、雷の速度は光と同じなので、雷鳴がなったのは着弾した後だったりするのだが、やはり威力がすさまじいということに気づいたのは、熱に強いはずのボルケーノドラゴンが消し炭になっているという事実を目の当たりにしたからであった。
これはさすがに回収できない。ていうかもはやグロい!ってなレベルであったのだが、そうこう考えてるうちに4体目のボルケーノドラゴンが姿を現した。もはやバーゲンセール状態である。
僕は、そろそろ打ち止めなんじゃないかなー?と思ったので、大技を試してみることにする。
その名を、神鳴葬斬という。数ある雷神流奥義の中でも、もっとも威力が高いこの技は、発動するために僕自身が体内で電気を作り出す必要があった。
特性の細胞雷震を発動させると、僕の体が青白く発光し始めた。体中に力がわいてくるのを感じた僕は、そのまま地面を蹴った。瞬間、景色が後れて見えるような錯覚に陥り、しかもボルケーノドラゴンは何もせず突っ立っているようにしか見えない。
神鳴葬斬は、この雷を纏った状態で勢いをつけて踏み込みながら敵を一刀両断する奥義である。
僕は妙に手ごたえを感じないで刀を振り切った。
瞬間、僕が移動しすぎてやはり背中合わせになったであろうボルケーノドラゴンの体は、やはり鳴り響いた雷鳴と共に姿を消したようである。
時が遅く感じられた僕だからこそ捉えられた真実は、僕が振った刀に当たる前に体が木っ端微塵に引きちぎれ、消え去っていく彼の姿であった。




