第十八話 ハジメ、次のクエストへ 2
今回もちょっと残酷な描写があります。
その後も僕は電気石を集めに集めまくった。
すでにストックは十分に集めた!というところで採取をやめたのだが、めぼしい石の場所は大方掘りつくしてしまったからか、心なしか落雷が少なくなった気がする。
しかし、彼らはまだインペリアルサンダードラゴンを見つけられないのか?
と、少し気になるところではある。音沙汰なしと言うか、別れてから既に2時間は経過している。そろそろ見つかってもいいんじゃないの?とは思うのだが、実際にサイアスは転移してこないので、探索魔法を使ってみる。これは最初のクエストのときに入手しておいた魔法で、広範囲の生物や鉱石の反応を限定して探すことができる魔法で、これのおかげで件のオリハルコンも見つけられたし、今回の電気石が大量に埋まっているポイントなどを探し当てることができたのである。
と、おおよそ2キロほど離れたところで、特大の電気反応を察知した。おそらく、こいつがインペリアルサンダードラゴンだろう。というか、もしかして戦闘中だったりするのだろうか?
気になったし、もしもということも考えられるので、僕は転移をすることにした。
*
「どうしてこうなった。」
と、僕はつぶやかずにはいられなかった。というのも、絶賛戦闘中なのだが、どうやらSランクの冒険者と言うものを少々見くびっていたらしい。
竜人たちは、手放しに感嘆するほどのコンビネーションでインペリアルサンダードラゴンと対峙していたのである。
インペリアルサンダードラゴンは、二足歩行可能な翼を持つタイプの四本足の竜種で、その体内で生み出す電気により磁場を発生させて浮遊しながら飛翔することができる生き物である。
故に、常に空対地の戦闘が繰り広げられるのだが、インペリアルサンダードラゴンが狙って打ち出す雷を竜人たちは避けながら遠距離武器をぶつけて少しずつ体表の鱗や甲殻を削っているようである。
その甲斐もあって、どうやら互角以上の戦いを繰り広げているのだが、なにぶん相手は突然変異種の強力な竜種である。現状は有利そうではあるが、体力も向こうのほうが上だし、どうにも攻めあぐねているようで、徐々に押されてきてはいるようだ。
このままだと、そろそろ誰かしら雷撃の直撃を避けられずリタイアする未来が見えるのだが、なかなかどうしてがんばっているようである。というのも、彼らはほぼ常に動き回り、的を絞らせないようにして死角にはいったメンバーが攻撃するといった効率的な動きをしているのだ。
これには舌を巻くしかなく、避けきれずに攻撃を食らうこともあるが、そのフォローも完璧なので、耐えられているようだ。
この様子だと既に戦闘を始めてから20分程度は経っていそうである。
このまま攻め続けて倒すか、危なくなったら助けようと、僕はしばしの間傍観に撤することにした。
と、思った矢先である。
突如、上空の雲から一筋の落雷。落ちた場所は僕の数メートル横であり、というか僕が超直感により避けなければおそらく一撃で戦闘不能になると思われるほどに、その落雷は強力であった。本来の雷であれば、影響のないはずの爆心地は、小規模のクレーターかと思うほどに抉れていたのである。僕は、あっぶねー!とも思ったのだが、しかしどうやらこれは自然の雷ではない様子だということに気がついた。
雲の中に、何かがいるのである。目を凝らしてみてみると、これまたサンダードラゴンらしき姿をしているのだが、目の前で戦闘中のそれよりも大きく、しかもやたら強そうであった。
僕は、もしかして、と仮想を立てる。もし、目の前で戦闘している相手が単なるサンダードラゴンだったら?
もし、上空の雲の中に隠れているあの竜種が僕らの本来の討伐対象であったなら?
そう、考えるのが当然である。しかし、どうやら目の前の追い詰められてきている竜種は、特徴から考えるに明らかに討伐対象のインペリアルサンダードラゴンである。
普通のサンダードラゴンは、戦闘中の竜種よりも小さいし、なにより翼の大きさが小さいのである。
つまり、実際、目の前で戦闘している竜種はインペリアルサンダードラゴンその人と考えて差し支えない。ということは、上空のアレはなんなのか。
僕は、もっと考えてみる。そういえば、雷竜種はサンダードラゴンだけではない。突然変異種であるインペリアルサンダードラゴンは、あくまでサンダードラゴンであり、雷竜種というくくりがあるのなら、当然他の雷竜種もいるはずだろう。
だとするならば、討伐対象ではない雷竜種であると考えるのが妥当である。
そして、雷雲を発生させ意のままに上空から雷を落として獲物を狩る上位の雷竜種がいることを、クエストに出発する前に調べていたことを思い出した。神の使いとも言われ、生息数が極端に少ないが時折現れては災害級の被害をもたらすSSSランク指定の超危険生物。その名を、「雷神竜」と言う。
彼の落とす落雷は、まさしく神の裁きともいえる。電熱もいわゆる雷とは比べようがないほど高く、その電圧は件の電熱をエネルギーに変えるフシギ生物である「エレクトリック・ツリー」すらも一度の落雷で塵と変えてしまうほどであり、小さな村であれば何回かの攻撃で滅んでしまう。
僕はその新たな敵が、気まぐれで破壊活動を行う迷惑な天の使者だと断定することにした。おそらく、現状のパーティメンバーでは攻撃することすらできずに死んでしまうであろう。
ならば、僕がやるしかないのである。ちらっと、電気石を取りすぎた所為かもしれないと思ったが、どうやらそれっぽいなと思ってしまったので、いや、そんなことはない!と考えつつも、やるしかないと臨戦態勢をとったのである。
ちなみに、メンバーたちはおろか、討伐対象でさえ彼の存在に気づいて居ないようであった。
まず僕が取ったのは、メンバー達の戦闘に被害が及ばないように転移をするという行動であった。
短距離の転移を繰り返し、僕は落とされる雷撃をかわしながら徐々に場所を移動していった。それは成功したのではあるが、やはり雷撃は僕を追尾して放たれているようなので、インドラの攻撃対象が僕であるということを知ってしまうという結果になった。
インドラは、どうあっても雲の中から移動する様子はなく、高みの見物とばかりに雷をガンガン落としてきた。
僕はといえば、転移を繰り返しながら前回使った氷造形魔法、アイススナイパーライフルを作ったのであるが、今度は撃つ暇がない。
それならばと、防御をしてその隙に撃とうとも思ったのであるが、展開した土属性の防御魔法、グランウォールが一撃で崩壊するのを見て、これはアカンと考え直した。
今回のクエストは、きっと電気石の採掘で魔力を消費するのだろうと先読みし、魔力量の底上げと自動回復する特性を追加していたのは幸運だった。
故に、僕は魔力を気にすることなく短距離の転移を繰り返してはいるのだが、いかんせんインドラの放つ雷撃はそれこそ無限に発生させられるようで、いつまで経ってもイタチごっこのようである。
ああ、めんどくさい!と思った僕は、雷撃を防御するのではなく、身代わりを作ることにした。
というわけで、新たに土属性の魔法を発動した。
「アイアンニードル!」
そう言い放った瞬間、僕を囲うように鉄で作られたいくつもの棘が出現した。
僕の思惑通り、インドラが放った雷撃は僕よりも高い位置にあるその避雷針に直撃しているようで、どうにか発射する時間を稼げたようである。
僕は、一心に恨みを込めて「発射!」と一声叫びながら、雲の中にある頭部に向かって土属性の徹甲榴弾を発射した。
初速からして、そもそも僕ですら避けられないほどの速さで飛んでいく銃弾には、さしものインドラも反応できなかったのか、はたまた避けるに足らずと思ったのかわからないが、思いっきり直撃した。
インドラも例に漏れず、外殻周辺には高電圧をまとってはいるのだが、僕はあらかじめ雷耐性を銃弾に付与しておいたので、その影響も受けず、ボルケーノドラゴンのときと同じように頭部にかなりの衝撃を伴う銃弾がクリティカルヒットしたようである。
インドラ、実は常に雷雲に隠れ雷をぶっ放すだけの生き物ゆえなのか、まさか雷撃の雨の中受けたことのない重い一撃を食らうことに対しての耐性はなかったようで、地上に向かってフリーフォールしながらようやくその姿を現した。
なるほど、インペリアルサンダードラゴンとはやはり別種であろう。その体は、キラキラと輝く金属のような黄金色の外殻と、自らの感電を抑えるためなのか、黒い絶縁体のような皮膚で覆われている。
そこまで確認したところで、インドラはたぶん生まれて初めて地面に落下した。
直後、彼の頭部で徹甲榴弾が爆発。本来ならこれでお陀仏といくところであるが、さすがにSSSランク指定の災害級生物である。あまりの衝撃に大きなダメージを受けながらも、生きているようである。
だが、僕はそんなこと予想していたので容赦はしない。生きているならまたとばれないうちに、と、先ほどのアイススナイパーライフルを構えた。
実はこのスナイパーライフル、元となったバレットM82がセミオートマチック…つまり、連射が可能であるので、僕は間髪要れずドンドンドン!と弾装が空になるまでインドラの頭部に弾をぶち込んだ。
これにはさすがに耐えられなかったのか、頭部を何発も突き刺さる弾丸から逃げるように体をよじるが、そこはそれと魔法の銃弾であるからして、かわそうと思っても早々よけられる代物ではなく、相手が相手なのでと僕も魔力を微塵も抑えずにぶっ放してしまったので、彼としてはたまったものではない。
あまりの痛みに気絶をしたのだろうが、衝撃と痛みは彼の意識を覚醒させ、そして閉じるという結果を何回も繰り返したので、とうとう起き上がろうとしていた体を地面に臥せってしまった。
しかも、直後に徹甲榴弾は爆発し続ける。もはや銃声なのか爆発音なのかわからないほどに多重に音が聞こえ、爆発による発煙で彼の頭部の様子がわからなくなってしまった。
音がやんで僕が何発撃ったのかもわからなくなったころ、ようやく煙が晴れたときには、ボルケーノドラゴンのときと同じく、彼の頭部は見る影もなくなったようである。僕はやっぱりやりすぎたなーと思ったのだが、しかしこれメンバーには見せられないな、と思い、例の倉庫に全長20メートルにも及ぶ彼の死体をぶち込んだのであった。
ハジメ君が使っているメビウスインベントリは、ほかの作品で言うところのボックスだと思ってくれれば問題ありません。
ちなみに、メビウスインベントリの入り口はどこにでも出せるので、その死骸をぶっこむのに運ぶの無理だわと思ったハジメ君は死骸の真下に入り口を作り、落とし穴的な要領で入れました。




