第十七話 ハジメ、次のクエストへ 1
「んで、早速なんだがクエストに行かないか?」
「…どんなクエストですか?」
パーティに加入するという話がまとまり、僕らは軽食を取りつつ雑談していた。そして、時刻が10時を回るというときに、サイアスが提案したのである。
「ああ。っつうのも、さっきの話を聞いといてなんだが、また別の竜種討伐のクエストが追加されたみたいなんだ。」
これだ。と、サイアスが差し出してきたのは、「落雷山」と呼ばれる場所のクエストであった。落雷山は、山の地面の中に多くの呼雷石という電気の魔力を内包する鉱石が大量に眠っているといわれる山地で、一年中雷が落ちまくるおかげで荒廃しているといっても過言ではないほど過酷なフィールドである。
だが、そんな場所でも生物は生息しているようで、電子を主食とする昆虫種がいたり、雷を自分に落としてその電熱をエネルギーに変える奇妙な木と、それらを食す大型の草食獣「サンダーライノ」や、体内に電気を溜め、それを放出して獲物を狩る「ブリッツビースト」が電気をためにやってきたりする。
そして、このクエストの討伐対象。「インペリアルサンダードラゴン」。この地でしか生まれないとされる希少な竜種である「サンダードラゴン」の突然変異種で、電気エネルギーを体内で生み出すことができるサンダードラゴンの特性に加え、この突然変異種はより攻撃的な気性と、他の生物が体内に内包する微量な電気を増幅、内部から放出させて内側から獲物を崩壊させるという特殊な攻撃方法を持っているため、付近の魔物の生態バランスを著しく崩壊させるために、目撃された場合、即クエストを発注される。
「なるほど、落雷山ですか。いいですね、僕も電気石は素材としてほしかったんです。」
というか、僕にとって竜種は完全に眼中になかった。というのも、電気を発することができそうな鉱石と言う、特殊なアイテムに興味があるのである。
それが手に入れば、おそらく便利なものをたくさん作れるんじゃないかと考えたわけである。
「よっしゃ!じゃあ決まりだな。このクエストに行くぞ!」
サイアスはノリノリだった。おそらく、インペリアルサンダードラゴンの竜玉が目的だろう。
というのも、突然変異種で普通種のそれよりも強い上位の力を持っているインペリアルサンダードラゴンは、確実に竜玉を体内に保持しているのである。なんなら、ボルケーノドラゴンよりもよっぽど強いのであるが、その魅力には抗えなかったのだろう。心なしか、竜玉を手に入れていないであろう他の4人も期待をしているようである。
「そのまえに準備をしましょうか。転移を使おうと思うので、一時間後にここに集合でいいですか?」
それを知っていた僕だが、電気石を採取するのが第一目的なので、そのための準備をしたかった故の発言である。
「わかった。それじゃ、お前ら後でな。」
というサイアスの発言で、僕らは別れた。
ちなみに、今回のクエストを受けることができる条件は、Sランク保持者3人以上のパーティとのことであり、基本的にはSランク以上の冒険者しか受けることはできないが、パーティのリーダーが認めるのであればAランクの冒険者でも連れて行けるようである。つまり、今回は6人のパーティでの参加である。
報酬は500万ルクスと高額であるが、一人頭は83万ルクスである。それでも、昨日よりは儲かるので、僕としてはありがたかった。
*
そして一時間後。僕は新たに魔法を習得していた。それは空間魔法というものであり、なぜ習得したのかといえば、無限にアイテムを入れられる倉庫がほしかったからである。なにせ、電気石でどんなモノが作れるかわからないのである。大量に採掘して大量にストックしておきたい。
そんな思いから、どんどん人間離れしていくのも仕方がないなと思いつつ、「無限倉庫」という、チートな魔法を習得したのであった。
そして徐々に集まってくるメンバー達の顔つきは、どれも真剣そのものである。全員が全員、竜玉を狙ってやがる。僕はその気配に、少し引き気味であった。
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「とうちゃーく!」
と、いの一番に声を上げたのはサイアスである。到着したフィールド、落雷山は、まさに荒廃しているといった表現がしっくりくる、生き物なんていないんじゃねえの?といいたくなるような不気味な場所だった。
というか、3秒に一回はどこかしらに落雷しているのが見て取れるため、ここホントにはいってくの?と本来なら思っていたところだが、メンバーはすでに竜玉の魔力に心を奪われているようで、意に介していない様子であった。
かくいう僕も、電気石なる未知の材料に危険を省みない覚悟である。
そんなわけで、僕はとりあえず、とサイアスに転移札を渡した。これはクエストに向かう前に支給されたものであり、インペリアルサンダードラゴンを発見したらそれを使って僕の元に転移してくれ、という旨で渡したものである。
基本的に竜種は、甲殻や鱗やらで外からの物理攻撃に強く、ことにインペリアルサンダードラゴンを含む、雷竜といわれる種類は常に高電圧を体の外にまとっているため、どうしたって遠距離攻撃をして外殻に穴を開けなければ返り討ちにあってしまうのだ。
サイアスは「了解だ。」と言って僕の渡した札を受け取った。
「それじゃ、僕は電気石採取してくるので、後であいましょう。」といって、僕は5人と別れた。
*
「大漁大漁!」と、僕は上機嫌である。
氷造形魔法で、螺旋機構を作り出し、この世界にはないであろうドリルを作り出した僕は、めぼしい場所にそれを突き立ててガンガン地面を掘っていった。
すると出てくる出てくる電気石。端からメビウスインベントリにぶち込んで、その大漁振りに驚きながらも、自分の認識が間違ってなかったことを知ったのである。というのも、電気石はその鉱石自体が電気を生み出すことができる、いわば永久電池のようなものだったのである。コレがあれば、電気を主動力とする機械やアイテムがたくさん作れるのだ。
調子に乗った僕は、直径にして20メートルほどの大穴をたくさん作って電気石を大量に採取しているのである。
と、視界の端から何かが飛んできた。一瞬のうちにそれを視認した僕は、後ろに跳んで避けた。どうやら、電気の魔弾のようである。
電気を放出するその姿は、まるで雷神を無理やり獣にしたような姿であり、流線型が多く見られるその体つきは、獲物を狩るために進化したと思われる。
そう、先ほどこの地にやってくると述べた攻撃的な魔獣、ブリッツビーストである。
全長は5メートルほど。背中に無数に生えた棘状の体毛は、体内からあふれ出る電気に逆立ち、ビリビリと帯電している。
同じように帯電している長めの手甲のような爪は、下手な金属よりも硬く、耐熱性に長けている。切り裂かれれば、電熱と体内に流し込まれる高電圧で身動きが取れなくなるほどの痛みを伴う。
だがしかし。僕の敵ではない。
「お返しだ!」と、僕は魔法を発動した。大地より突き出る堅牢な土の針。その名をグランニードルといい、土属性の攻撃魔法である。
ブリッツビーストは反応したが、僕の発動した魔法の効果範囲は並の魔法使いのそれよりもはるかに広い。
上空に跳んで避けようとするも、その範囲と長さに避けきれず、足を貫かれて落下した。
落下した先には当然、グランニードルが突き出ているため、ブリッツビーストは電気を放出して空中でブースト。どうにか突き出た棘の地面を抜けきりこちらを見るころには、並外れた瞬発力で迫る僕に今度こそ反応できず、土の造型魔法で僕が作ったアース付きの槍を体に突き刺された。
瞬間、絶叫を上げるブリッツビースト。土魔法で作られたこの槍は、ブリッツビースとが体内に蓄積している大量の電気を地面に逃がす。一度にかなりの電気が通電したブリッツビーストの体は、自分が耐えられる以上の電熱と、神経を焼け焦がすような痛みを伴う高電圧にさらされて停止していった。
僕は倒れたブリッツビーストに止めを刺すと、戦利品とばかりにその腕を切り落として件の倉庫にぶち込んだのである。
これで新しい武器が作れるな、と、僕は思わぬ褒賞に笑みをこぼした。
ハジメ君はただの一般人でしたが、この世界の知識を得たときに、命のやり取りについてある程度知識として得ています。
そのため、魔物と戦闘することに関しては、すでに苦手意識や生き物を殺した、という恐怖感その他に対しての耐性がついています。




