第十六話 ハジメ、竜人達と再会する
異世界初、一人の朝を迎えた。
僕は身支度を始める。今日は、昨日の竜人達とお話しなければならないのである。
正直気は進まない。
宿では朝夜のご飯がつくということだったので、エントランスに向かうことにした。
「おはようございまーす。」
と、声をかけると、「おう、早いな!もうすぐできるから待ってろよ!」
という朝からよくそんな声出せるなーといった感じの威勢のいい声が厨房から返ってきた。
その十数分後、僕の座ったテーブルに料理が並ぶ。
「今日のメニューはパンとスープとサラダだ!ガッツリ食ってがんばれよ!」
という親父さんの作った料理は、思わず「うまい!」と言ってしまうほどであった。親父さんがうれしそうな顔をしていたので僕はさらにうれしくなった。
パンは自家製らしく、焼きたてのパンは外がサクッとしていて中はフワっとしている。焼きたてなのでアツアツだが、それがまたおいしく、これ売れるぜ?と思ったのだが、そこまですると宿屋の運営ができなくなるからと親父さんははにかみながら言っていた。
次にスープを頂いたのだが、これまた美味だった。味はコンソメ的な感じだったが、僕がいた世界で食べていたコンソメスープよりもはるかに味が深く、塩味とうまみが絶妙にマッチしていて、そのスープの中に埋もれている野菜たちは、味がしみているばかりではなく、野菜本来の味わいもきっちりと残っていて、朝の胃にうれしい味だった。
もちろん、サラダも新鮮で、しかもかかっているドレッシングは野菜のうまみを生かしながらも、オイリーではなくさらっとした舌触りで、味もちょうどよく、パクパクと食べれる後を引くおいしさだった。
ここ数日間、盗賊団で振舞われていた料理を考えると、この親父ただもんじゃないな?と思う僕であった。
そして僕は、大満足の食事を終え、ギルドに出向いた。
*
「よう!待たせたみたいだな?」
僕がギルドの酒場で飲み物を飲んでいると、そんな声が聞こえた。
声の方向に首を向けると、竜人達が立っていたが、どうやら人数が変わったらしく、5人の竜人達が僕の座っていたテーブルに座った。
「俺たちはもともと5人のパーティなんだ。全員竜人なんだが、この二人はまだAランクだから昨日は不参加だったんだよ。」
と、サイアスが説明してくれた。残りの二人は、まだ成人していないようである。
「はじめまして!僕はリグレアって言います!」
「俺はドルガって言います!これからよろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いします。僕はリベル・ファーストです。」
と、自己紹介が終わると、早速、とサイアスが昨日の件を尋ね始めた。
「んで、まずは、リベル、アンタなにもんなんだ?」
しょっぱなから核心を突くな!と思ったが、僕はまだ正体を明かすつもりはない。昨日は都合よく一人だったので、言い訳をちゃんと考えていたのである。
「僕はリベル・ファースト。ちょっとした冒険者です。僕は各地を回っていて、生まれは西にあるリヒテンシュタイン大聖国です。幸運にも魔法の才能があったようで、いろいろな魔法を習得していたのですが、ある程度国の魔法を覚えたあたりで、もっと別の魔法を手に入れたいと思い、旅を始めました。」
「なるほどな。それでそのランクなわけか。リヒテンシュタインっていうと、だいぶ遠くから来たんだな。」
「ええ。道のりは簡単ではなかったんですが、転移の魔法を覚えてからはかなり楽になりました。」
「転移の魔法だって!?ますますすげえな。そういや、昨日の魔法はなんなんだ?自慢じゃねえが、俺たちだっていろんな国を回ったしいろんな奴の魔法を見てきたが、あんな魔法を見たのは初めてだったぜ?」
「あの魔法は僕のオリジナルなんです。出所についてはお教えできませんが、氷の造型魔法の応用です。」
「造型魔法か…どんなもんまで作れるんだ?」
「一言で言ってしまえば、ほとんどなんでも作れます。たとえば…」
と、僕はここで魔法を発動させた。僕の手のひらに魔力が集まり、拳大の氷の玉が出来上がる。その中には、このルベリア冒険者ギルドの小さな模型が形作られていて、さらに小さくその中に竜人たちを象った氷像まで設置してある。
「…いったい、どんな脳みそしてんだアンタ…」
と、サイアスは目を丸くしていた。造型魔法と呼ばれる魔法は、その装飾や形、パーツの種類や大きさなどによって魔力消費が異なり、しかも頭の中で演算と言う形でさまざまなことを処理するので、細かいものを作るほど難しいとされるのである。
「いえ、ただの一魔法使いですよ。」
「あんた、どこぞの二つ名もちなんじゃねえのか?」
「ハハハ。違いますよ。無名です。」
二つ名とは、ギルドや国に多大な貢献をした高名な人物に名づけられるもので、たとえば先日戦闘したSSランクのハヤテやシュラウドなどには、二つ名がついているようである。
ちなみに、ハヤテは「影中の急襲者」、シュラウドは「艶麗なる剣士」、アリストは「猛進する大剣」などという二つ名がついている。
基本的には、戦闘スタイルによって名づけられるようである。ちなみに、名づけるのは匿名の冒険者複数であり、誰かが言った二つ名が世間に浸透すると勝手にギルドカードに登録されるようだ。
故に、新参者である僕はほとんどその力を見せていないので、二つ名は持っていない。持っていないというか、むしろ称号のほうで有名なので、たぶんそっちが浸透しているのだろうから、ついたとしても「最強剣士」というひねりのない名前だろうと思う。
「よし、大体アンタのことはわかったぜ。で、本題なんだけどよ。俺たちと固定でパーティを組まねえか?」
「すいません、僕のスタンスとして、固定は組まないんです。」
「なんでだ?」
「僕はいろんな国を回りますが、その国に滞在する時間は決めていないし、かといって、同じところには何年もいたりしないんです。だから、この国に縛られるとなると、僕の生き方が貫けないのでお断りしています。」
「それなら問題ないぜ?俺たちもそんな感じだ。ルベリアにきたのは1週間ほど前だしな。」
「そうなんですか…」
ふむ、と、僕は困ってしまった。同時に、迷いもできる。というのも、これから本当に各地を転々とするつもりなのだが、行く先々でさまざまなパーティを組むと成ると、正直今回のような説明を含めて面倒なことになると予想できるからである。
その点、固定と言う形でパーティを組んで各地を転々と回るのなら、説明しなくてもいいし、組むの相手の特性や立ち回りなども理解できるから、魔物と戦うときも楽でいい。
「それでは、僕の出す条件を飲んでくれたらその話をお受けします。」
「おお!そんで、その条件ってのは?」
「まず、固定パーティは組みますが、僕はやりたいことがあるので、必ずしもあなた方と同じクエストに行かなかったり、別のクエストに一人で言ってしまうということを許してください。そして時には、物を売ったり作ったりする時間を作って長めに同じところにいると思うので、それも許してください。」
と、つまり僕が言いたいのは、固定は組むけれど、僕は自由に行動してもいいですか?ということである。
「んーと?」
「つまり、こういいたいわけだ。「俺に頼るな。俺の好きなようにさせろ。」って。」
「語弊はありますが、大体そんな感じです。」
「なるほどな。うーん、それならいいんじゃねえかな。」
「飲んでくださるんですか?」
「おう。っつうのも、俺たちも大体そんなスタンスなんだよ。今回は3人で受けたけど、それは竜種の討伐だったからだ。理由は大体わかると思うけどな。」
「そうでしたか。それでしたら、僕も自由にしますが、もちろんパーティを組むということなので、それなりにお手伝いしますね。」
「ああ。それでかまわない。よろしくな、リベル。」
そんなわけで、僕はどうやら固定パーティを組むことになったようだ。
竜人達とパーティを組むことになりました。ほとんどのコミュニケーションはサイアスがとっています。おしゃべりです。
コロネアとダイトは言わなきゃいけないと思ったことしかほとんど言いません。
リグレアとドルガはいろいろしゃべりますが、二人で話すことが多く、積極的に他のメンバーと話すことはあまりありません。




