第十五話 ハジメ、クエストに行く 3
「マジかよ…」
俺、サイアスは目の前で起こった出来事に戦慄した。
あのリベルとか言う魔法剣士がぶっ放した魔法は、一発だけでダメージも高く、普通の魔法使いが使う氷魔法とは少し違ったし、一撃であの竜種の頭殻をぶち破った。
その威力は見ててスゲェって思ったし、あんだけでかい穴があれば俺たちが畳み掛ければ苦戦はするだろうが倒せると思ったんだ。
ところがどうだ。あの頭に残った丸い筒みたいなやつはそのままなのかと思いきや、やたらでかい音を立てて爆発しやがった。
面食らって足を止めちまって、やべぇすすまねえと!と思って敵の姿を捉えたら、なんとまぁあの竜はぶっ倒れちまいやがった。
よく見ると、頭が吹き飛んでやがる。どんだけ魔力込めたらああなるんだ?
あのリベルとかいう魔法剣士、さっきのオリハルコンといい今の魔法といい規格外すぎるだろ!
*
と、サイアスが思っていることなど知らない僕は、ボルケーノドラゴンが倒れたのを確認して、「あ、これやりすぎたやつだ」と思いながら、岩陰から出て死体に近寄っていった。
竜人たちが立ち止まって呆然としてる横を通り、ボルケーノドラゴンが死んでいるかどうかを確認する。
…見事なまでに頭部が吹き飛んでいて、「あの魔法、威力もっと抑えないと厄介なことに巻き込まれそうだ」と思った。たぶん、手遅れだと思う。
我に返った竜人たちが僕の近くに集まってきた。
「どうやら、一発で十分だったみたいですね。」
と声をかけると、サイアスは「ま、まぁ、とりあえず、帰ろうぜ?いろいろ聞きたいこともあるしな」と言った。
クエストを受けると、転移の魔法が込められた札をいくつかもらうのだが、それは使うと周囲の物や人を一瞬のうちにギルドに運んでくれるのである。
と、言うわけで、僕らはボルケーノドラゴンの死体と、彼が捕食していたアロンダイトリザードの死体と共にギルドに帰ったのである。
*
「お疲れ様でした。無事、達成したようですね。」
「あ、ああ。」
「報酬を受け取る際はこちらの札をお持ちくださいませ。…今回は、こちらの魔物を解体します。解体係を呼びますので、こちらでお待ちください。」
と、転移した先で待機していたギルド関係者が引きつった笑みを浮かべながらそう言うのを見て、僕は心底やらかしたと思った。
「あ、どうも。解体を担当しますプロイセンっす。えーっと…これって、ボルケーノドラゴンっすよね…どうして頭以外無傷なんですか…」
解体工も目の前の事態に疑問を抱いたようである。
まさか、「使った魔法の威力をあんまり抑えてなかったもんで、一発で頭吹き飛んじゃいました。」なんていえるわけもなく。
「…ノーコメントで。」
と僕が言うと、竜人たちは白い目で僕を見てきた。
どうやら、触れてはいけないと思ったらしく、解体工も「そ、そうっすか…じゃ、解体しますかね…」と、若干引き気味である。
そして無言になった僕たちの間には微妙な空気が流れたが、そのプレッシャーを受けながらも解体していたプロイセンが「あ、コイツ竜玉もってるっす!やりましたね冒険者さん!」と言った瞬間、竜人たちはさらに白い目で僕を見た。
「…竜玉持ちを一撃で…」「あの距離から頭をピンポイントで命中させて…」「オリハルコンみつけたときもまるでそこにあるってわかってたみたいだったし…」
などと、言っていたのは聞こえなかったことにした。
竜玉と言うのは、竜種の中でも特に能力の高い固体が胎内に宿しているレアなアイテムで、市場価値は2000万ルクスを下らない。というのも、先のオリハルコンなどの魔力と連動性がある鉱石と組み合わせることで、その竜種の特性を備えた強力な武器になるからである。
また、竜人族にとって、竜玉を使って作られた武器を得ることは名誉とされているのである。故に、彼らも僕を引いた目で見ていたが、すぐに竜玉に目を移していた。
だが、「あんま竜玉とか出ないんで説明ないっすけど、基本的に竜玉はもっとも討伐に貢献した冒険者のものになるっす!」というプロイセンの発言を聞いた彼らは、僕をすごい形相で見始めた。
忙しそうですね、などとのんきなことを考えたが、なるほど、今回の討伐は僕が魔法一発で倒したので当然竜玉も僕のものになるのである。
「なぁリベル、アンタは竜人族のこと、知ってるか?」
サイアスが、あんまりにも感情を押し殺しているようですがるような声を出しだので、
「ええ、知ってます。というか、僕にとってはあんまり必要ないので、あなた方で話し合ってコレどうするか決めていいですよ。」
と、僕は言うしかなかった。
*
結局、3人のうち今まで一番パーティに貢献したサイアスが手に入れることになったらしく、「信じられねぇ…」と涙ながらに言っていたのを見て、なんだかんだよかったなぁと僕は思ったのだが、さすがに彼らもタダでもらうというのは気が引けるらしく、今回のクエストの報酬金、50万ルクスは僕にそのまま譲ると言ってきた。
僕も本来の目的としては、お金がほしいだけだったので、少し後ろめたい気分になりつつも、ありがたく報酬を受け取り、他にも何か言いたげ、というか、確実にさっきの魔法のことや、行きがけに魔法を使えるメンバーがほしいといっていたので、パーティに固定として参加しないか?といったことを聞かれそうだったので、
「いろいろ聞きたいことはあると思いますが、今日は一度お暇させていただきます。また明日、ここで落ち合いましょう。」
と言って、僕は無理やりギルドを後にしたのだった。
*
そんなこんなで、やっとこさ、僕はギルドの近くにある宿屋に向かった。
店主は気さくな人で、「おう、始めてみる顔だな?」と言ってきたので、「ここにははじめてきたんです」というと、「なら、これからしばらくここにいるのか?」とたずねてきた。
僕としては、しばらくルベリアにとどまり、いろんな材料を買って物を作ってみたいと思っていたので、「はい、そのつもりです」と答えたところ、「そうか!うちにしばらく宿を取るんだったら安くしといてやるよ!」と提案されたので、ありがたくその好意に甘えることにした。
そして僕は、異世界に来て一週間ぶりに、一人の夜を過ごしたのだった。




