第十四話 ハジメ、クエストに行く 2
今回は、ちょっとだけ、残酷な描写があります。
「出ないなー、希少鉱石。」
と、サイアスが嘆いた。すでに僕らは8箇所もの洞窟を発見しては採掘をしているのだが、出てくるのは鉄鉱石ばかり。というのも、オリハルコンやアロンダイトといった希少鉱石は、難しい性格のようで、地熱で死ぬほど暑いような場所にしか存在はしない。
「まあ、そんなものですよね。」
「そーかぁ…結構奮発して採掘用の道具買い込んだのに失敗だったかな。」
「ねえ、僕思ったんだけどさ…」
と、コロネアが言った。
「もしかして、こういう洞窟の中にはないんじゃない?だって、僕らが見つけた洞窟って採掘の跡があったじゃない?だとしたら、他の冒険者がもう掘り当ててたりして。」
これに対して、「たしかに!」とダイトが賛成した。
サイアスは「それにしたって一個くらい出てもいいじゃねえか。」と言ったが、内心は「だよなー」と思っているのだろう。そういいつつもこの8箇所目の洞窟から抜けるべく、道具をまとめ始めていた。
僕はといえば、実はこっそりと特性を発動し、どこに希少鉱石が眠っているかわかっていたりする。ちなみに、今までめぐった洞窟にもあるにはあったが、サイアスはすでに掘られていた場所を掘り進めていて、実は反対側の壁の中に眠っていたり、後数センチ横を掘っていたら出たのに!という歯がゆい思いをしている。
さらに言えば、今掘り進めていた場所の30センチほど先にオリハルコンが眠っているのだが、なんてタイミングで撤退しようとしているんだ!と、このサイアスという男の運のなさを理解し始めている。
「サイアスさん。もうちょっと掘ってみませんか?」
と、そろそろいい加減我慢ができなくなったので提案してみる。
「いや、出ないだろ。やめだやめ!こうなったらとっととドラゴン倒して帰ろうぜ!」
どうやらサイアスという男は、ケチをつけられるとヤケになるタイプのようだ。僕は内心、舌打ちしながら力任せにしまわれていなかったツルハシを振り上げた。
僕の筋力パラメータは、実際、この中にいる誰よりも高いというのは内緒である。
カツーン!という小気味のいい音が洞窟に響く。
「おいおい、でねえって!」
とサイアスが言うが、僕からすれば「いや、ここにあるから!」といいたいくらいだったが、そこは我慢してもう一度振り上げる。
僕が鉱石のある場所がわかるということを言わないのは、そういう特性やスキル、魔法が存在しないからである。正確に言うと、オリハルコンやアロンダイトといった希少鉱石はすべからく魔力を含んでいて、それらが発する魔力を検知できる人はいるのだが、それはあくまで特性と言う概念を超えた個人の才能に近しいものであるため、的確に場所が判断できるという者は存在しないため、こんな歯がゆい思いをしているのである。
「ほら、ありましたよ。」
というわけで、先ほど掘っていた部分をちょっと掘り進めて出てきたオリハルコンを手に僕が言うと「まじかよ…」とサイアスが落ち込んだのと同時に、ダイトとコロネアは「まじかよ!」と驚いたのであった。
*
「いやー、それにしても、ようやっと目的を果たせた気がするぜ。」
と、機嫌が直ったらしいサイアスが言った。
僕としては、ソレが目的だったのかよ!と突っ込みたいくらいであったが、そもそもオリハルコンは希少鉱石の中でも特に希少なもので、今回掘り当てた拳大の大きさのものでもこの世界では300万ルクス…日本円で換算するなら1200万円ほどの価値があるのだ。これは大金である。基本的には頭数で割ることになるので、一人頭75万ルクス。
一クエストでの報酬が、Sランクだと50万ルクス(これも頭数で割る)と考えると、大きな実入りである。
そんなこんなで僕らは今回の目的のひとつを達成し、じゃあとりあえず進もうぜ!というサイアスの言葉に乗って竜種が目撃された頂上付近まで、先のような会話をしながら進んだ。
*
「アレか。」
「アレだな。」
「アレですか…」
「アレみたいですね。」
と、僕ら4人が声を合わせて見据えた先には、少し大きく開けた場所で、まさにアロンダイトリザードの甲殻を殴り割って捕食しているボルケーノドラゴンの姿があった。
「報告にあったとおり、まだ若いけど成体だな。どうする?」
「どうするって言っても、定石どおり遠距離から魔法を撃ってあの厄介な鱗を弱体化しないとなんもできないな。」
「そうは言っても、この距離だぞ。この遠距離から魔法決められるのか?リベルよう。」
そう、ボルケーノドラゴンがいるのはおおよそ300メートルは先である。ボルケーノドラゴン自体大きいので発見は簡単だが、攻撃を当てるとなると話は別である。
僕らは岩陰に身を潜めてその様子を眺めているのだが、この隠れている岩の先には、そのボルケーノドラゴンがいる場所までに遮蔽物がなく、これ以上前に出れば発見されてしまい、その強靭な速さで一瞬にして距離をつめられてしまうだろう。
「うーん、まぁ、やってみましょう。捕食してる最中ですし、油断はしてるはず。」
と、僕がそんなことを言いながら魔法を発動させる。
この世界の魔法は、本当に何でもありで、形や効果、大きさや効果範囲など、術者の想像力や発動の仕方、込める魔力によって変化する。
たとえば、あのように遠距離にいるのなら、僕は前の世界の知識を使い、あるものを作り出した。
「氷造型魔法、我流式狙撃氷弾銃。」
「なんだそのなげぇ杖。みたことねえぞ。」
「それ、どうやって使うんですか?」
外野がうるさいが、説明はしない。ちなみに、作り出したのは元の世界で言うアンチマテリアルライフルとも呼ばれる軍用対物狙撃銃、バレットM82という長距離射程、そして物体を簡単に貫通するほどの威力を持つスナイパーライフルを基に氷魔法で作り出したもので、込める銃弾は氷魔法の属性がついた徹甲榴弾(装甲に穴を開け、遅れてその開いた穴から爆発を内部にぶち込む銃弾)である。
まさに、硬い装甲とも考えられる鱗を持った竜種にはうってつけのものである。
「まぁ、みててください。あ、どこ狙えばいいですか?当たった部分の鱗消し飛ぶタイプの魔法なんですけど。」
「え!…うーん、そんな威力あるなら頭狙ってくれれば後が楽だな。」
「そうですね。竜種は頭を狙っとけば間違いないです。」
ダイトとコロネアがそういうので、僕は標準を頭に置いた。ちなみに、本来の銃器なら風や距離によって標準をずらすのだが、この魔法で作られた銃にはそんなものは関係ない。標準においたものをロックオンし、そこに一直線に飛んでいくからである。
「じゃ、行きますね。発射!」
瞬間、爆音が当たりに響き渡り、なんの準備もしていなかった竜人たちは耳をやられたそうである。
一方、僕はといえばそんな銃を撃ったのははじめてであったが、耳を保護する魔法はかけていたし、発射の衝撃に耐えられるだけの筋力はあったのでさして影響はない。
とにもかくにも、魔法によって生成された氷属性の徹甲弾は火山の熱気にも負けずに一直線にボルケーノドラゴンの頭部に吸い込まれていった。
ボルケーノドラゴンは突如飛来した音速を超える魔弾に反応はしたが避ける時間はなく、その重い衝撃に頭が吹き飛ぶような感覚を受けた。
銃弾は頭に突き刺さったままである。
「オイ、なんかお前すごくねえかその魔法。あんな竜種があそこまで一回目の攻撃でダメージ受けるって早々ないぜ?」
とサイアスが興奮しながら言った。
「そうですね。ちょっと威力ありすぎましたか?」
「いや、そんなことはねえ。だが、アレのおかげで頭の鱗ははげたみたいだし、あとは俺たちの物理攻撃でもいけそうだ!行くぞ!」
と、サイアスの掛け声で竜人たちは岩陰から飛び出した。その速さはなかなかのものだったが、彼らは肩透かしを食らうことになった。
飛び出して一秒。50メートルほど距離をつめた彼らは、おのおのボウガンやナイフを使いながら近づいていく。
しかしその瞬間、徹甲榴弾が爆発した。
氷属性の爆発魔法なんて彼らは聞いたことも見たこともないとあとで語ってくれたが、それを直に見た彼らは戦慄したという。
ボルケーノドラゴンの頭部は、その爆発によって吹き飛んだのである。
「うわ、えっぐいなー。」
と、僕はいまだ岩陰に潜みながら、その様子を見ていた。




