第十三話 ハジメ、クエストに行く 1
「どうもはじめまして。僕はリベル・ファーストといいます。今回は、よろしくおねがいします。」
「おう、よろしく頼む。俺はサイアス。見てのとおりの竜人族だ。」
「同じく竜人族のコロネアです。」
「さらに同じく竜人族のダイト。よろしくな。」
どうも、リベル・ファーストことハジメです。昨晩、ハヤテさんの家で一泊したんですが、ハヤテさんの提案により変装し偽名を名乗ってクエストを受けることになりました。
というのも、昨日の今日でハジメ・アツカワという人間がパーティを組むとめんどうなことになるから、とのこと。
ちなみに、変装といいつつも、実際にはスキルと魔法でさまざまな隠蔽を行い、結果見た目すらも偽装するということになっただけなのであるが。
それというのは、昨晩、これからギルドでクエストを受けていくにあたって、ハヤテさんと相談しつつ必要な魔法やスキルを手に入れておいたのである。
とりあえず、と入手したスキルは、「オーラチェンジ」と「ボイスチェンジ」。魔法は、「隠匿魔法」と「偽装魔法」の4つ。
オーラチェンジは、その人が発する波動や気配を別人に変えるというもので、ボイスチェンジはその名の通り、声質を変化させるというもの。
それに加えて隠匿魔法…いわゆる「ハイディング」系の魔法で、最強剣士の特性による追加特性「武士の憧れ」の効果を打ち消し、偽装魔法でギルドカードと名前、ステータスを偽装することで別人として受け入れられることが可能になるのである。
その他、さまざまな種類の魔法やスキルを一挙に習得したのだが、これに関しては多すぎるためにその都度発揮させていくほうがよいという結果になった。
参考程度にいえば、ほぼ全属性の魔法を習得し、リベル・ファーストというSランクの冒険者として遜色のないステータスになっているのである。
「いやー、それにしても助かったぜ。俺たち竜人族は物理に特化していてな。魔法はからっきしだから使えるやつで強いやつを探してたんだよ。」
「そうなんですか。お役に立てればいいのですが。」
「おそらくだが、全属性をすべて使えるという魔法使いも少ないし、剣も扱える魔法剣士とすれば、どんなパーティでもほしがるだろう。むしろ、今までで固定パーティに入っていなかったことのほうが驚きだ。」
サイアスと名乗る男は、僕のことをそう評価した。なるほど、この世界では魔法使いや剣士は多くいるが、そのどちらも扱えるという人間は少ないらしい。魔法使いは、近接が不得意ゆえに、短剣などの小型の武器で補っていることが多いらしく、逆に、剣士は魔法属性が付与されているボーガンやスローイングダガー、まれに弓などで遠距離に対応しているらしい。
「で、今回のクエストは…火山地帯だな。最近現れた竜族の魔物の討伐みたいだが…」
「ドラゴン系は物理にも魔法にも強いので、なるたけ弱点属性の魔法を付与した攻撃で防御を破った上で攻撃するのが基本的な戦い方です。」
「それで魔法を使える冒険者が必要だったんですね。」
「そうだ。しかも今回のクエストはSランクときてる。報酬も魅力的だが、ランクが高いということはそれなりの危険があるってことだから、強いやつが必要だったんだ。」
「わかりました。ご期待に沿えるよう尽力します。」
「まぁ、期待はしてるけど危なかったら逃げろよ。死んじまったら元も子もないからな。」
サイアスという男は饒舌で、このパーティのリーダーだろう。コロネアとダイトはあんまりしゃべらないみたいだ。もしかしたら、警戒されてるだけかもしれないけど。
というわけで、僕は竜人族のパーティと一緒に4人で竜種討伐のクエストに向かうことになった。
*
ヘルゴカニア火山。ルベリアより南東の地に存在する火山で、噴火の前例はないが溶岩が噴出していて常に熱気に包まれている。
溶岩溜りが多く、その地に生息している魔物たちは火属性への耐性が非常に高い。そのためか、溶岩溜りの中に魔物が潜んでいるという場合も多いらしく、冒険者は、その熱気と敵がどこにいるかわからないという恐怖と戦いつつ道を進むことになる。
この地に生息する生き物はほぼすべてが肉食で、その獲物となるのは鉱石を主たる食物としている「鉱石蜥蜴」や死んだ生物を糧とする「火山の掃除虫」。それらを食す「サラマンダー」というジェダイトリザードより大きなトカゲ類や、さらにそれらを獲物とする「火喰い鷹」などが主たる生物とされる。
今回のクエストにおいての討伐対象は、その「火喰い鷹」すらを捕食する大型の竜種、「ボルケーノ・ドラゴン」である。目撃例は極端に少なく、「サラマンダー」の亜種ともされるが、翼を持たない竜種の中では極端に気性が荒く、強靭な脚力による跳躍で空を飛ぶ魔物を捕食したり、「ジェダイトリザード」の上位種であり、長い年月を経て外殻が異常に発達した「超硬殻竜」を力任せに殴りつけて破壊するなどといった行動を見せる。
二足歩行ながらもその移動速度は非常に速く、並みの冒険者では逃げることすらできないとまで言われる。
それ単体で生態系を崩壊させ、繁殖してしまえばそれこそ手が出せなくなるので、基本的に目撃例があればすぐさま討伐依頼が発生するのである。
そこまでして火山にこだわらなくても、と思うかもしれないが、この火山から採れる鉱石はどれも純度が高く、冒険者垂涎の品とも言われる武器の材料になるオリハルコンやアロンダイトという希少な鉱石はアルバニア公国領においてはこの地でしか採掘できないのだ。
ゆえに、火山でのクエストではそれらの鉱石を持ち帰ることを念頭においてパーティを組まれることが多い。過酷な場所だが見返りも大きいのである。
今回参加したパーティもその例に漏れず、それらの恵みを頂いて帰るための採掘用の装備が整っているがゆえに、ハジメは参加することにしたのである。
*
「あぢぃー!!!」
と、声を上げたのはサイアスである。竜のうろこという頑強な天然の鎧を生まれつき持っている竜人といえど、モロに溶岩が露出しているような火山では暑さを感じるらしい。
「まったく、リベルはなんでそんな涼しい顔していられるんだ!」
「えーっと、装備のおかげ、ですかね?」
僕は氷魔法により冷気を服の中にまとわせているのだ。ただ、正確に言うと、今着ている服に対して魔方陣を書き込み、冷気を放出する服に作り変えたのであるが。
「なるほど、冷却効果のある服ですか…それって結構高価なんじゃありませんか?」と、コロネアが口を開いた。当の本人も、割と涼しい顔をしている。おそらく彼もまた、似たような装備をしているのだろう。
「そうでもないですよ。僕は、自分で作れますからね。」
「え、なんだソレ。ずるくね?」
「魔方陣を埋め込むだけですよ。」
「さらっていってるけど、それ結構な技術だよね。」
「…まぁ、Sランクならこれくらいは…」
「俺はSランクの魔法使いを知っているが、そいつも魔方陣を物体に埋め込むのは結構手間がかかるし難しいって言ってたぜ。しかも、魔法に対して適性のある素材は高いから、自分で作るって言ってもお金がかかるって言ってた。」
「そうですか…では暇なときに作って小金でも稼ごうかな。」
「恐ろしいこというなお前。」
道中にそんな会話をしながらでも敵を倒して進めるくらいに、このパーティは強かった。というのも、僕が氷魔法をちょっとずつ使い、コロネアが冷気をまとった弓でほぼ百発百中で敵を射抜けるからであった。
この地の魔物は火耐性が強いが、何しろ常に熱せられているので急激な冷却に弱いのである。
僕らは、まずは鉱石を採掘してみようという目標を持ち、火山の各地にある洞穴のような場所を探しては入って採掘をしていた。




