第十二話 ハジメ、会見を開く
冒険者ギルドロビー。ここには、クエストを発注する窓口や、受注する窓口のほか、登録受付やパーティ申請窓口といった多種多様な受付があり、その横に長い受付カウンターの左右にはとてつもない大きさの掲示板が設置されている。
そこには、さまざまな場所からのクエストが乱雑に張り出されており、それらを冒険者たちが剥がして窓口にもって行くというスタイルになっている。
また、ロビーの入り口側半分は冒険者たちが情報交換をしたりパーティを組んだりする酒場となっているため、常に数多くの冒険者たちがギルドロビーに集まっているのである。
そして、僕である。何を隠そう、受付でのやり取りをこの多くの徴収にさらしてしまった挙句、1時間もしないうちに消えていった扉からギルド内でも屈指の実力を持つSSランクの男3人を引き連れて帰ってきたのだから、こうなることになるのは予想できた。もちろん、予想はできたが回避できるとは言ってない。
「オイ!最強剣士だぞ!」「アレマジだったのか!?」「帰ってくるのがやけに早くないか!?」「って言ってもシュラウドさんやハヤテさん、アリストさんまでいるぞ!」「おいよく見ろ!シュラウドさんたち顔に痣がある!」「ってこたぁ、あの男がやったってのか?」「オイ嘘だろ!?じゃあマジのマジに最強剣士が出たってのか!」「おいおいおい、冗談じゃないぜ!こいつは是が非でも俺たちのパーティに…」「まて!それなら俺たちだって!」「冗談じゃねえ!ここは俺たちが…」「まてまてまてやっぱり上位のパーティが…」
「これは想像以上ですね。」
「うん、ここまで反響があるとは思わなかった。」
「いかが致しますかハジメ殿。」
「いかが致しますかって、これ収拾つくの?」
「さぁ…未だかつてない出来事ですのでなんとも。」
僕の目の前には冒険者たちが殺到した。最強剣士を一目でも見ておこうと思う者、我先にと勧誘をしようとする者、多大な人の群れに野次馬をする者…数え切れないほどの冒険者たちが一様に押し寄せているのである。
正直、先の戦闘よりも恐怖を感じる僕であった。
「ではハジメ殿。先ほどのとおりに。」
「仕方ないねー。」
*
「会見?」
「はい。必要かと思われます。いかがでしょうか?」
時はさかのぼり、冒険者たちの前に姿を現す少し前。シュラウドさん達にそんな提案を持ちかけられた。
というのも、過去にない事例ゆえに、勧誘を行おうという者たちが殺到するだろうというのである。たしかに、それは予想しうることだろう。
だとするならば、会見でも開いて僕自身の意思を表明したほうが今後動きやすいというのである。
「うーん。実際に出てみないと分からないけど、これは無理だなって思ったらそうするしかないよね?」
「そうですね。ギルドとしても、冒険者たちが暴動を起こしたりするのは好ましくないので、できればそうしていただければありがたいというのが本音ですが。」
「わかった。じゃあ、人が多すぎるって思ったら会見を開こう。」
*
というわけで、会見を開くことになりました。
「えー、そんなわけで、ルベリア国冒険者ギルドに登録しましたハジメ・アツカワです。此度は、今までにない事例ということで、会見を言う形をとり、多くの人に僕自身の意思を知ってもらって、その旨を知っていただいてからここに対応したいと思います。」
ちなみに、会場はロビー。というか、結局あの場所からは動けなさそうだったので、そのまま行うしかなかった。
「では、質問がある人ー?」
と訊くと、いっせいに手が挙がった。
「じゃあ目の前のアナタから。お願いします。」
と、僕が指したのは人狼族の冒険者だった。
「はい、ハジメさんは他の冒険者とパーティを組む予定はあるんですか?」
「はい、組もうとは思っています。ただし、それが固定となるか、一時的なものとなるかはなんとも言えません。」
次の人ーというと、半数くらい手が挙がった。
「ハジメさんは最強剣士ということですが、ランクはどのくらいですか?」
「一応、SSランクという扱いのようです。」
「ハジメさんはどんなパーティと組みたいですか?」
「やはり、ランクや強さではなく、一緒に目標を達成しようと思っている人と組みたいです。」
「ということは、人種や種族は関係ないと?」
「はい、そうです。差別的な感情はありませんので。ただ、逆に差別的な感情を持っているような人とは組みません。」
「ハジメさんは…」
*
会見は数時間に及び、僕はたくさんしゃべった。こんなにしゃべったのは数年ぶりである。
結局、僕はクエストを受注するときに気が向けばパーティを組むということに落ち着き、その際には匿名で参加すると言っておいた。
多くの冒険者たちは、僕が人種や種族に縛られないということや、ランクや強さでは組むパーティを選ばないということに感銘を受けたようで、知らずのうちに株を上げたようである。
「あー!!!疲れたぁぁぁ!」
「お疲れ様です。して、本日はどうなされるので?」
時刻はすでに夜となり、未だに僕は一文無しなのである。
「うーん、どうしよう。」
「よければ俺の家で休みませんか?」
「えっ、いいんですか!」
「もちろんです。俺も少しはお話を聞きたいので。」
と、提案をしてくれたのはハヤテである。どうやら、同郷の出ということで、話が聞きたいようである。とはいっても、たいしたことは話せないというと、かまいません!と答えてくれた。
そんなわけで、僕はハヤテの家で一泊することになった。
さすがにここまでしてくれたのでは適当な話をすることも出来ず、僕はいろいろなことを包み隠さず話すことになったのである。
「ということは、ハジメさんはこの世界の出身ではないと。」
「そうなる。詳しいことは僕にも分からないんだよね。転生したときにはほとんど何も言われなかったし。」
「うーん、なるほど。しかし、別の世界でも日本は存在するってのが、なかなか興味深い。」
「多分、向こうの世界とは大して地形とかも変わりはないんだと思う。各々の世界の法則みたいなのが違うだけで、元となった世界は同じなんだろうね。」
「なるほど…。」
ハヤテは、僕の突拍子もない話を丸呑みしてくれた。例の盗賊団といい、ハヤテといい、この世界の人々は割りとそういうことは信じられるみたいだ。
ちなみに、盗賊団といえば、僕の称号に対してなんにも言わなかったので、その件に関しては文句をたれてやろうと心に決めてある。
結局、日本という国の文化について、違う点や同じ点などを話し合い、文明的に考えると、僕の居た世界のほうが上だということや、少なくとも東京という首都はないということ、代わりに、中央都という関東地方を全部合わせたような大きさの首都が機能しているということなどが分かり、一度足を運ぼうと僕は思った。
そしてその日はぐっすりと眠り、翌日からクエストを受けることとなった。
ちなみに、当方の国「日本」は、おおよそ10個の地方に分かれています。
中でも中央都は日本という国の中核であり、かなりの大きさを誇っています。東方の服装は、基本的に和装で、火の魔法が盛んであり、日本特有の剣タイプの武器、刀などもあります。
言語は共通語ですが、その中でも漢字を使うのが常であり、詠唱の仕方などもアルバニア公国のそれとは異なります。ちなみに、アルバニア公国は地球儀で言うとインドあたりです。




