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序章 

ふと思いついたので続きも思いつきで適当にやります。

僕はこのお話の主人公、厚川一創(あつかわはじめ)。日本に住む24歳のフリーターである。

特技は、言葉遊びと寒いダジャレを言うこと。

言ってはいけないタイミングでも、考え付くと口に出してしまうことから、社会的には不適合との烙印を押されている。

そんな僕がいつも通り寒いダジャレをかましたところ、それが割りと重要な会議であり、バイト先の社長と別の会社の社長との融資の話が決まりそうだったのにそんなことを口走ってしまったところ相手方の社長のテンションが下がってしまいご破算に。

当然というか何というか、社長の怒りは頂点に達し、クビを宣告され会社から追い出される。直後、「退職金だ!」といって投げつけられた水入りのペットボトルが頭に直撃し、目の前が真っ暗になった。



これはつまり、僕は死んだってことだろうか。視界は変わらず闇の中なのだが、意識があるということはつまりドラマやアニメでは定番の三途の川を渡っているということなのだろうか。


と思いきや、ふと小さな光が視界のど真ん中に見えた。


点滅というよりは、強くなったり弱くなったりを繰り返しながらも、だんだんと大きくなってくるその光は、よく見ると人のような形になったようである。


「はじめまして、一創。」

「おおう、それはダジャレですか?そんなシャレはやめなシャレ!」


およそ神々しさを含んだその光が透き通ったような声で語りかけてきたときにはもう遅く、僕は例によってまたダジャレを言ってしまったようである。


「…私は転生をつかさどるもの。」


一瞬の間をおいて、スルーすることを決め込んだのか、光はそう続けた。


「あなたは気づいているかもしれませんが、どうやら死んでしまったようです。」


ああ、やっぱりそうなんだ…と、僕は思った。なんだか、受け入れてしまっている自分がいることに気付いたのは少し前のことだ。クビになった挙句ペットボトルごときで人生の幕を閉じるとはとてつもなく恥ずかしい死に様だったのだろうが、正直目的もなく目標もなく日々をすごしていただけなのでこれといった衝撃はないのである。


「しかもその死に様があまりに見るに耐えなかったので、こうして私があなたの元へやってきた、というわけです。」


どうやら死後の世界でも僕の死に様はそういうことになっていたらしい。

そりゃそうだろう。僕だって目の前にいるやつが「いやね、重要な会議でダジャレをかましたらご破算になってキレた社長がペットボトル投げつけてきてそれが頭に当たって死んじゃったんですよ!」と言ってきたら「そりゃまた…」といわざるを得ない。

どうやら光は神様的な存在みたいだし、なんなら爆笑モノだったのではないだろうかと疑うほどだ。


「というわけで、私の力であなたにもう一度人生を与えることにします。あなたの生前の特技を特性として与え、20歳まで若返らせて蘇りを行います。しかし、元の世界で、というわけにはいきません。あなたには別の世界での人生を送っていただきます。」

「は、はぁ…」

「説明は省きますが、あなたの世界で言うと「剣と魔法の世界」での第二の人生が決まっております。」


ははぁ。と、僕は考えをめぐらせた。つまり、携帯小説やライトノベルではもはや定番中の定番、転生を行うというのである。しかも僕の意思は関係ないようで、決定事項ですといわんばかりの憮然さである。


「もちろん、あなたの住んでいた世界には魔法はおろか剣等の近接武器での戦闘はなかったので、それらを考慮し特性の強化を行った後にその世界へと送り込むこととします。何か質問は?」


特性、というのはいわゆるスキルのことだろう。大体の定番といえば、不死身であるとか、剣技が超絶うまくなったりとか、無尽蔵に物を作り出せるとか、そういう能力のことだ。というと、僕の特技をスキルに変えるってことは…アレ?僕に特技ってあったっけ。


「質問がないようなので続けさせていただきます。あなたの特性は「言霊の支配者」と「モノづくり神」です。「言霊の支配者」は、あなたの言葉遣いやつむぎだす言葉によってさまざまな効果を及ぼすもので、端的にいってしまうと、あなたの言葉はほぼ現実になるという能力です。「モノづくり神」は、なんでもつくることができるという能力です。」


いや、思ったけどなかなか強くないですかそれ。そんなに僕の特技はよかったのか。


「ちなみに今回お付けした特性は、生前のあなたの人間的価値に反比例した有用さを持ちます。」


ん?それってつまり、いったとおりになるような有能スキルとかもってるってことは…


「僕の価値ってそんな低かったんですか?」

「申し上げにくいことですが、その通りです。あなたの人間的価値は大きさでいうなら太陽とアリくらいの差がありました。」

「とんでもなく低いっすね。」

「はい。だからこそ、私が現れたともいえます。」

「それはいったいどういうことでしょうか。」

「あなたの価値は先ほども申し上げたとおり、太陽とミジンコほどの違いがあります。」

「いや、さっきより小さくなってないですか?」

「ゆえに、得られる能力も非常に強力です。」

「すごいスルースキルですね。」

「実は、あなたの転生する世界では少々の問題が起こっており、それの解決には強い転生者が必要でした。」

「と、いいますと?」

「端的にいってしまえば、その世界は滅び行く運命です。そこには、異種族間との諍いや戦争、資源の枯渇や魔王の復活、それにともなく魔物の攻撃性の増加などがあります。」

「それ少々じゃなくないですか?」

「ですので、あなたの得た超特性で世界の問題を解決していただきます。」

「この人話す気ねえな!?」

「お分かりいただけましたでしょうか?それではいってらっしゃいませ。」

「いや早い!答えてな…!」


一方的にしゃべられた後、不意に視界がぐるぐると回りだした。ああ、これもう本当にいってらっしゃいませじゃないか。


グルグルした視界の歪みに目を閉じた僕が、足が地に着く感触を覚えて目を開けると、鬱蒼とした森が目の前に広がっていた。


「ウッソー!!!」


異世界ではじめてのダジャレであった。


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