陰謀
第九章
陰謀
「アイザック様、七天人様より入電、モニターに出力します。」
ヨレヨレのスーツの男がデスクの椅子に深々と腰掛け、あくびをしながら応える。
部屋の中央に、立体ホログラムが映しだされ、そこには、七人の人物たちが、皆一様の紫のスーツに身を包み、一列に座っている。
「これはこれは、七天人の皆様お揃いで、ご機嫌麗しゅう。」
皮肉っぽく男は挨拶をする。
もちろん、モニター越しの人物たちの機嫌などには全く関心はない。
「若造がッ!相変わらず性根が腐っとるようだな。まあいい、本題に入ろう。兵器及び適正者の選別テストは順調かね?」
小柄な肥満体の男が尋ねる。
「予定の4割というところですかね。いきなりの現実世界での実用はかなり難しいでしょうね。歴代優勝者ですら、最初のステージで何名か脱落してますしね。しかし、ご安心下さい。今回の実験データを元に、量産の目処がつくと思えます」
ヨレヨレのスーツの男は、キィキィと椅子を揺らしながら、そう答える。
「ほう、だが時間はあまりないが、本当に間に合うのかね?先日の月面での異常な磁気嵐による被害は甚大だ。観測所の調査によると、空間拡大速度がさらに加速しているとも聞くが。」
七天人の他のメンバーが切り返す。
「それよりも、奴らの先兵にどう応戦するかの方が難しいでしょうな。そのためにも、プロトタイプの実戦運用を提案しますがね。」
そうアイザックが答えると、七天人にざわめきが起こる。
「しかし、君、あれは今の我々人類に扱える代物ではなかろうに。第一危険すぎる。忘れた訳ではなかろう。あの惨劇を。」
また、別の者が机をドンと叩き、声を荒げる。
「全て一任して頂くしかありませんな。貴方方の安全は優先事項です。ご安心を。それでは。」
そう言うと、男は通信を遮断した。
「よろしいのですか?あのような態度をお取りになられて。」
秘書の女性が不安げに尋ねる。
「さあ、私は神様ではないからね。何でもかんでもは出来ないよ。賽は投げられた。それだけさ。」
それだけ答えると、男はあくびをしてから、目を閉じた。