選別
第五章
選別
落下の速度で凄まじい風圧が襲ってくる。
このまま地面に叩きつけられれば即死は免れない。
それを想像するだけで、身体が硬直し、体制が上手くとれず、風に流される。
すると、手にしていた仮面が、ブォンという音とともに起動し、顔に張り付いた。
「生体データ確認。最適化完了。ミッション、地上への生還」
電子音声がそう告げると、身体が仮想現実と同じように変化していた。
腰には日本刀二対、籠手やその他の防具などが一瞬で身を包んだ。
だが、以前は全く感じなかった質量や質感がある。
仮面をずらし確認してみると、確かに実体化している。
視界の端に他の選手を捉えた。皆、ゲームの中と同じように変化しているではないか。
飛行船の中で電子催眠をかけられた可能性もあるが、この大会の裏で動く大金を考えると、その線は薄い。
とにかく、地上への生還がミッションとして告げられた以上、能力を駆使しなければならないと覚悟を決めるしかない。
考える間にもどんどん地面は迫っていく。
死を意識し、流れる血は冷たく感じ、鼓動の音以外は聞こえない。
他の選手たちの方に目を向けると、ある者はなす術なく落下していき、またある者は能力で飛行、滑空、減速と上手く対応している。
だが、自分の能力ではとても彼らのようにはいかない。
その時、刀から熱を感じ、すぐさま抜くと、刀全体が赤熱し緋色に輝いていた。
「オーバースキル、『烈火』発動」
再び電子音声が告げる。
感覚に身を任せ、二本の刀を振り抜く。
すると、炎が走り、渦巻くと、身体が上方に跳ね上がる。
温度差で空気が膨張され、浮き上がったのだろう。
無我夢中でそれを繰り返し、地面間際で渾身の力で振り抜くと、岩肌が一瞬にして溶けていった。
無事に地上に生還したのだ。
「ミッションコンプリート。モード解除します。」と、聞こえ、普通の姿に戻っていた。
それが合図に、全身に一気に負担がかかり、その場に倒れこんだ。