降下
第四章
降下
本戦出場者45人を乗せた大型飛行船がニューヨークを飛び立った。
街が遥か彼方に見えた頃、窓のシャッターが全て降り、中央に巨大モニターが点灯した。
「諸君!本戦出場おめでとう。これからこの飛行船はグランドキャニオンに向かって航行する。大会開催中は君たちファイナリストは外部との通信は一切断ち切られることになる。」
船内がざわつき始める。
「申し遅れたが、私は大会最高責任者のアイザック・キートンだ。今大会は、10年目ということもあり、今までにない形態のバトルを行ってもらう。まずは君たち全員に、大会専用の特別なインターフェイスをお配りしよう。」
男が指をパチンと鳴らすと、インターフェイスである仮面が壁から迫り出してきた。
「不正防止と、今大会のルールに合わせた特別仕様の物だ。君たちの能力を最大限に引き出してくれるだろう。」
本戦出場者全員が仮面を手に取ると、今までの戦闘データが表示され、最適化がされた。
「では、今大会の特別ルールを説明しよう。君たちには、これから世界各地を周ってもらい、特別なフィールドでバトルを行ってもらう。ただし、今までとの最大の違いは...」
大会責任者の間に、全員の間に冷たい恐怖が流れた。
「仮想世界ではなく、現実世界で戦ってもらうことになる。もちろん、最悪の場合死ぬことになる。では、諸君の検討を祈る。」
次の瞬間、船内の全員の顔が凍りついた。
誰も何も口にしない。当然だ。現実世界でこのTMWのバトルをやるなんて、不可能だからだ。
すると、床からゴォンという音がし、我に返った。
だんだんと冷たい空気が吹き上げてきて、皆一様に身構える。
船の端から光が差し込み、奥の選手から声があがった。
「おい!どういうことだ。床がスライドしていくぞ」
選手全員の視線がその声の主に突き刺さる。
そして、突風が流れ込むと、全員が空中に放り出された。
落ちて行く。地上4000メートルの上空から、グランドキャニオンの岩肌へと。