勝者
阿修羅の仮面
第一章 勝者
西暦2150年、環境汚染と資源の枯渇により、人類はいよいよ本格的に宇宙開発に乗り出し。
ようやく月面都市の開発した頃、地球上ではユビキタスコンピューティングの発達により、ヴァーチャル、つまり仮想現実の中で、教育や経済、娯楽などの大半が行われるようになった。
特に、ヴァーチャルリアリティーゲームは、国境や言語を越えて親しまれていた。
中でも、サバイバルゲームの発展として、仮面を着け様々な能力でバトルを行なう、THE Mask Warrior、略してTMWが爆破的な人気を博していた。
近年では、多額の賞金が得られる大会も数多く行われ、ビジネスとしても成り立っている。
優勝者は、CMや映画の出演や、新たなビジネスへの投資などで成功を掴んでいた。
今年は、TMW世界大会10周年ということで、これまでの優勝者たちも交えた、グランドチャンピオンシップが開催される。
「青コーナー、大会成績10勝0敗、AKIRA!!!」
歓声がどっと会場が沸く。
「赤コーナー、大会成績8勝2敗、コジロー!!!」
応援サポーターがウェーブを行ない、選手を激励する。
「それでは、TMW日本代表選考大会決勝を行います。それでは、両者とも位地について。ファイッ!」
ヴァーチャル世界に降り立ち、仮面を装着し、全身が仮面の特性に合わせ変化する。
相手が早速仕掛けてきた。
こちらの特性は「侍」、向こうは「猪」、真っ正面からの力押しではまず勝てないだろう。
「赤コーナー、いきなり猛攻をかける!しかし、青コーナー、地形を上手く利用し回避する。」
こうしたパワータイプ相手には、必ず大きな隙がある。そこをつけば勝てる。
「だが、赤コーナーの猛攻に、障害物が次々と破壊されていく!このままでは時間の問題か?青コーナー未だに反撃の様子を見せません。おっと、青コーナー、フィールド中央に立ち、目を瞑った。これは自殺行為だ。」
観客席からはブーイングが巻き起こる。それをさらに実況が煽る。
「赤コーナー、この最大のチャンスは見逃さない。すかさず突進していく!これまでか、青コーナー。」
衝突の瞬間、砂煙が立ち上がる。
観客は皆、息を飲み静寂が流れる。
「雌雄を決したようだ!果たして勝者はどっちだ!」
砂煙が晴れ、勝者が立ち上がる。
「勝者は、青コーナー、AKIRAだぁーッ!TMW世界大会日本代表はAKIRAだぁー!」
その瞬間、天まで突き抜けるような、歓声の声が鳴り響いた。