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夜明けの朝のハロー&グッバイ

なんとまさかの500PV突破!!


読者の皆様、ありがとうございます!!

 



 今、僕の目の前には一人の女の子の姿があった。


 腰辺りまで伸びた長い白銀色の髪。


 身体は華奢で透き通るような白さのお肌。


 顔立ちは幼いながらも非常に整っており、眼は少々つり上がり気味な紫眼で、鼻は高く、小さな唇もプニプニしてて柔らかそうだ。


 僕が笑顔を浮かべると鏡に映った女の子も笑った。




 「邪神様……勘弁してくれよ」



 ………どうやら信じがたいことに、この美少女こそが今生の自分なのだ。






 早朝、僕は自室をひっそりと抜け出すと自分(アリア)が世話になっている薬師の先生の治療所の倉庫に居た。


 記憶が完全に蘇った僕は自分の姿がどんなものなのか確認したくなって、どうしようか考えていたら倉庫に普段は使わない大きな姿見が置いてあったのを思い出したのだ。


 僕は倉庫に置かれていた姿見で自分の姿を確認しながら邪神の手紙を読んでいた。







 『まずは永久君の転生先なんだけどね、君の与える力が最大限活かせる肉体を探してちょーどいいのがあったからその子の体に転生させることにしました。 いきなりオギャーから始まると大変だろうから記憶と一緒に授けた力を封じた状態でね。 記憶が統合された時点で力も解放されているから自由に使うといいよ。 ……えっ、性別が変わってるって? むさい男より可愛いおにゃの子の方が見ていて楽しいから変えたに決まってるじゃん』



 僕が思わず溜め息をつくと鏡に映った女の子……僕も同じように溜め息をついた。







 僕が女の子だったと判明した昨夜、トイレで上げてしまった僕の叫び声を聞きつけた先生を誤魔化すのが大変だった。


 僕に問いかけてくる妙齢の女性……僕の『先生』であり親代わりでもあるフィオーラさんに転生したことを告げる訳にもいかず、トイレに居た虫が飛び掛ってきて驚いたと誤魔化そうとしたのだが。


 『アリアちゃんって虫とか平気じゃなかった?』と、信じてもらえず。


 確かに小さな子って女の子でも虫とか平気で触っていたりするよね。


 我ながらえらく腕白っ子な模様。


 しどろもどろになって誤魔化していたらなんとか信じてもらえたのはいいが、僕は体長1mを超え、触手を体中から生やした金色のゴキブリに襲われたことになった。


 ………いやいや、そんな化け物(キメラ)の存在信じちゃ駄目でしょ先生!!


 もの凄く突っ込みを入れたい欲求に駆られたが大人しく部屋に戻った後、僕は一晩中付きっ切りで先生が看護を受けながら眠りに付いたのだった。








 昨夜のことを思い出し少し憂鬱な気分になるが今は落ち込んでる暇などない。


 今は少しでも早く現状を把握し、前世と今生の記憶が混じった今の私に馴染んで周囲に違和感を持たれない様にしておきたい。


 今の僕(・・・)は前世の望月永久としての人格が色濃く出てきていると思う。


 姿見に映る自分の姿を見て、それが自分の姿だと理解している筈なのに違和感を感じてしまっている自分がいるし、何より自分のことを『僕』と呼んでいるのがいい証拠だ。


 自分の一人称は『私』と言っている記憶があるしね。


 今の環境に溶け込むのならこういう細々としたことから変えていく必要があるだろう。


 僕はもう望月永久ではない。


 この世界に生きる少女、アリア・ヴァレイなのだから。






 薄暗い倉庫から出ると廊下の窓から差し込む朝日に眼が眩んだ。


 目が慣れると遠くの山から顔を出し始める太陽に照らされた景色が眼に入る。


 前世で見た田舎の山村のようなのどかな風景。


 だけどそれはとてもキラキラと輝いていて新しい夜明けを祝福してるように見えた。




 「お休み、僕。 そしておはよう、私」



 新しく生まれ変わった私の誕生日にぴったりのいい朝だ。





 「アリアちゃ~ん、何処にいるの~?」


 「あ、やば……。 今、行きま~す」



 先生の呼ぶ声が聞こえ、慌てて返事をして部屋へと向かった。



 「もう! 大人しく寝てなきゃ駄目って言ったじゃない」


 「ごめんなさい。 でも、もう体調の方は大丈夫です。 今日からまた朝の作業を手伝わせて下さい」


 「ほんとに大丈夫なの? もししんどかったらすぐに言うのよ」


 「はい先生」



 先生が部屋から出て行くと私はすぐに服を着替え始めた。


 寝巻き用の貫頭衣を脱ぐと戸棚から白色の長袖のシャツと茶色のズボンと取り出し、着込む。


 思ったより自分の裸を見ることに抵抗は無かった。


 前世で読んでた小説だとこういう展開の時の主人公って自分の裸を見るのを恥ずかしがったりしてた筈。


 まあ、まだ女として成長してない幼い子供の体を見るのを恥ずかしがったりしていたら完全にロリコンだしね。


 それにこれが自分の体だとちゃんと受け入れていられているのも大きいのだろう。


 そう思うと少し嬉しく感じた。


 着替え終わると部屋に置いてある小さな鏡を使って髪を整える。


 髪が長いからそれだけでも一苦労だ。


 髪を整え終えるともう一度鏡を覗き込んだ。



 「……これにも早く慣れないと、ね」



 私は苦笑を浮かべると頭から生えた漆黒の角(・・・・)を一撫でし、それを隠すように帽子を被り部屋から出た。







 私の名前はアリア・ヴァレイ、今年で7歳になる女の子。


 親が死んで困っていたところを薬師の先生……フィオーラさんに拾われて、今は先生の助手をやっている。


 前世の記憶とやらを思い出してしまった、ごく普通の……魔人種族の女の子である。


 

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