表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/12

プロローグ

 



 深夜、僕は日課となっている日記をつけていた。


 内容はその日1日遭った事と自分の心情を綴るだけの簡単な物だ。


 今日の分を日記を書き終えた時、ちょうどノートが全ページ埋まった。


 このノートはもうお役御免なようだ。


 机の引き出しを開けると今まで書いてきた日記が整理して収められている。


 たった今書き終えたノートを仕舞おうとした時、ふと懐かしさを感じて以前書いた日記を読んでみたくなった。


 思いついたら即行動、僕は引き出しの中にしまっていたノートを全て取り出し机の上に積み上げた。


 思った以上にノートが多い。


 よくもまあ、こんなにも書き上げたものだと自分でも感心してしまった。

 

 机の上に山となって積まれているノートを見て苦笑を漏らすと一番上のノートを手に取り早速読み始めた。











 「×月●日、2年1組鈴木卓也に僕のノートを踏みつけられた。 このカス野郎め。 放課後奴の教科書とノートをすべて踏みつけておいた。



 ………

 ……

 …



 ●月△日、2年2組大野木蓮、相沢修也、久住康友らの不良グループに呼び出されリンチされた。 暴行を受けただけじゃなく喝上げもされた。 絶対に許さん。 奴らの靴箱に犬の糞を入れといた。 これぞ天誅である。 思い知れバーカバーカ。



 ………

 ……

 …



 △月×日、クラス委員の杉野学と眼が合った。 なんとなく見下された気がしたので奴の机に鼻糞をつけといた。 生まれながらの劣等者の妬みというものを思い知るがいい。」











 ……………日記というか完全に恨み辛み帳になってるし!!






 虐められっこの僕がこの日記を書き始めたのは小学校の頃。


 ある時学校の僕のクラスでイジメがあった。


 ターゲットは僕の友人だった。


 クラスメイトが皆その友人を虐める中僕だけはその子の味方でいた。


 落書きされていれば一緒に消し、物が隠されれば一緒に探した。


 悪口を言われたら庇い、友人を慰めもした。


 こんなことは所詮一時のことだと……飽きたら止めるに違いないと。


 その後、しばらくして友人に対しての虐めは止んだ………虐めのターゲットを僕に移し変えて。


 虐めは酷いものだった。


 友人の時に周りの空気を読まずに庇おうとする僕に鬱憤が溜まっていたのだろう、それを晴らすかのように暴力、盗難、辱め、恐喝等々、犯罪行為と代わらないことを受ける羽目になった。


 そして何よりの堪えたのは味方が一人もいなかったことだ。


 僕が守ろうとした友人は僕を守ってはくれず虐める側へと加わったのだ。


 それでも僕は抗ったが世界は僕が思う以上に理不尽だった。


 僕への虐めはいつまでたっても終わることはなく、教師に訴えても相手にされず、家族は僕の苦しみを理解してくれなかった。


 そんな時、ふとしたきっかけで書き始めた日記は自分の中に溜め込んでいた感情を吐き出すツールとしてずっと僕の助けになってくれていた。


 悲しみ、怒り、絶望、恨み、妬み、嫉み………内容はどれも自らに降りかかる理不尽な出来事に関しての感情や不満について書かれている。


 こうやって感情を吐き出す事が出来たおかげで僕は潰されずに生き続ける事が出来ているのだと思う。






 恨み辛み帳と化した日記を書き続けてはや10年。


 ノートの数は100冊を超えている。


 我ながらよくこれほどの日記……恨み辛み帳を書きたものだと思う。


 10年間分の呪詛を書き連ねたノートの山……なんか見てると邪気が出ているような気がする。


 画面から人が出てくるビデオやら必ず手元に帰ってくる人形とかあるぐらいだし人を呪うノートがあっても不思議じゃない。


 物は試しである。


 僕はノートの山の前に跪くと手を組んで祈り始めた。




 「我が呪詛を刻まれた呪われた書物よッ!! 今こそ力を解き放つがいいッ!! 我が想い、祈りに応じ世界中の糞共を呪いたまえッ!!」




 ………

 ……

 …




 「ま、何かあるわけないか」



 こんなことで人を呪えるなら誰も苦労はしない。


 漫画やラノベとかだとここからイベントが発生するのだろうが現実はこんなものだ。


 事実は小説よりも奇なり、というがそんなことはない。


 時計を見るともうだいぶ遅い時間になっていた。


 そろそろ寝ないと明日に響く。



 「はあ…、もう寝よ」



 僕は憂鬱な気持ちで寝床についた。


 起きればまた地獄のような一日が始まる。


 現実なんて糞食らえだ。



 「こんな世界なんか呪われてしまえばいいのに」


































 「汝が願い、しかと聞きどけた」


 「………へ?」



 気が付いた時、僕は真っ白な部屋に居た。



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ