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プロローグ「始まりは修羅場」

 この広い大陸は四つの部族が支配していた。

 北を支配するはあらゆるものを操る能力、操術みさおじゅつを得意とした部族『仙翁(せんおう)一族』

 東を支配するは魅惑の踊りで見る者すべてを魅了し、その踊りによって様々な術を発動させると言われる部族『天条(てんじょう)一族』

 西を支配するは天地を思い通りに、想像通りにコントロールできるといわれる天地創造、もとい天地想像の力を持つ部族『ユメノ一族』

 そして、南を支配するは強靭な肉体を持ち、剣術を極めし部族『岸野(きしの)一族』

 四つの部族は仙翁族を中心とし、大陸の各地を治めていた。

 この体制は長い年月の間保たれ、大陸は長い平和を築いていたのだった。


 しかし――。

 XXX年、突如南方より出現した魔族がこの平和を壊す。


 魔族たちは大陸の人々を次々と襲ったのだった。

 それは人々に驚きと焦燥、そして恐怖を強く植え付けた。

 魔族たちは彼らの長である魔王エミリオンを筆頭に大陸の北へ北へと進軍を開始。各地に魔族支配の領土を展開させる。四つの部族はこのことを世界平和、人類絶滅の危機とし共闘を誓った。

 ここから熾烈な四部族連合VS魔王軍の争い「人魔大陸争奪戦争」が始まることになるのだった。


 四部族連合軍はまず、魔王討伐のためのスペシャルチームを結成。

 それぞれの部族から選りすぐりの精鋭を選出した。

 北からは仙翁 南雲(なぐも)

 東からは天条 イルマ。

 西からはユメノ みくる。

 南からは岸野 修真(しゅうしん)

 これら四人により部隊は結成され、彼らは「魔王討伐特殊部隊」と名づけられる。


 少数ながらその圧倒的な個々の力によって魔族たちを次々となぎ倒し、着実に四人は魔王軍を攻め立てていく。そしてそう時間はかからず、四人は魔王軍が東に築いた城、魔王城にたどり着く。最後の砦ということもあり魔王城には魔王軍幹部たちが勢ぞろい。彼らはそこで初めての苦戦を強いられたのだった。


 広い魔王城内で最奥に位置するここには辿りつけたのは俺だけだった。

 王座に深く腰掛け、不敵な笑みを浮かべる魔王エミリオンはこちらを注視している。

 片肘を付き、頬杖をするその姿はふてぶてしく、俺のことなんて目にないようだった。

 

 「あら、ここまで来るなんて素晴らしいわね」

 「覚悟しろっ! 魔王エミリオンっ!!!」


 俺はそんな彼女の態度にたまらず飛び掛かる。

 こいつは、一体どれだけの人を苦しめたのかわかってない。否、恐らくわかってなおこの態度なのだ。

 ――許せない。 


 「くっ……!」

 俺の持つ、秘剣『叢雲(むらくも)』の刃は空を切る。エミリオンは王座から突然として姿を消したのだ。

 刹那、耳元に嫌な感覚を覚えた。


 「あの三人はどうしたのかな? ふふふっ」

 瞬時に瞳を移動させ、その禍々しい二対の角を確認すると、俺はすぐさま右へ飛び退いた。

 あの三人――南雲、イルマ、みくるちゃんは今も魔族幹部および魔族たちと戦っていてくれているのだろう。三人は絶対にそいつらを倒してくれる。

 だから、俺はこの魔王エミリオンを絶対に倒す。


 俺はエミリオンの言葉に答えずに距離を詰め、再び剣を振りかざした。

 だが、なんなくエミリオンには躱され、あろうかとか剣の柄を手の上から握られてしまった。

 「だ、か、ら、あの三人はどうしたのかな?」

 「っ! ……」

 エミリオンにぐっと引き寄せられ、ほぼゼロ距離で対峙する形になる。

 続いてエミリオンは俺の顔を覗き込むようにして告げた。

 

 「あの三人、今頃逃げ出したかもしれないよ」


 エミリオンの妙に自信ありげな紅の双眸に想いが揺らいだような気がした。 


 「だって考えみてよ。なんで魔王のところに君一人で来させたのかな? 自慢じゃないけど、アタシ魔族軍の中でも一番強いよ?」

 エミリオンの視線が俺を舐めるように移りゆく。不快感が襲い、俺は思わず身じろぎしてしまう。


 「そもそもなんで魔王城に君たち四人だけなんだい? アタシたちの存在は人類存亡の危機だったじゃないのかい?」

 エミリオンの人間そっくりの作りをした手が俺の顎下を撫でる。くすぐったい感覚が全身に走った。


 「わからないかい? なら教えてあげよう」


 そして――。

 魔王は俺の耳元で囁くようにいった。


 「所詮、君たちは自族のことしか考えてないんだ」

 うるさい。

 「だから、自分のところにいる戦士たちを派遣しない」

 耳障りだ。

 「君たちは選ばれた四人なんだよ。生贄としてね」

 うるさいって言ってんだろっ!

 「人間様もアタシたち魔族と同じで――醜い生き物だよ」

 うるさい……



 ドクン。



 ウルサイッ!


 ――イチイチウルサインダヨ……ッ!!!


 「修真さんっ!」

 「修真君っ!」

 「シューシンっ!」

 

 ホラ……ウソジャナイカッ!!!!!

 


 そこからはよく覚えていない。

  


 けれど次に目が覚めた時、俺は『英雄』になっていた――。

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