見えない勇者
また、敵が襲ってきた。僕はそれを剣の一振りで斬り捨てる。
もう、何度目だろうか。敵の勢いはとどまることを知らず、愛用している剣も自分もボロボロだ。
チラリと後ろを見る。
煌びやかなドレスは土で汚れ、ヒールも片方は脱げてしまっているが、それでも、瞳の中の光と、気品を失わない後ろ姿。
僕は、彼女を守るために戦っている。
しかし、その瞳が僕に向けられることは無い。
彼女は、僕が見えない。
正確に言うと、僕は彼女に『存在していない』のだ。
その為、彼女は僕が聞こえないし、僕は彼女に触れられない。
僕は彼女をずっと見てきた。
彼女が国を治める凛々しい姿も、街の子供達に見せる優しい笑顔も、隣の国の王に恋する姿も。
もちろん、彼女が大臣に騙され国を追われた時だって。
ずっと、見守ってきた。
彼女は、信じた臣下に裏切られようとも、決して憎まずただ悲しい笑みを浮かべただけだった。その表情を見たとき、僕は決めた。彼女を最後まで守ると。
敵には、僕が『存在している』。
僕は敵に攻撃され、僕は敵に攻撃できる。
斬って斬って斬って時々斬られ、僕は進んできた。
もう少しで、隣の国だ。そこまで行けば彼女は助かる。
そんな油断が、僕の剣筋を鈍らせた。
僕の横を敵が通り抜ける。その刃は、結界に入ろうとする彼女に届く。
僕は、迷うことなく愛剣を投げた。
その剣は、彼女を救った。
剣を失った僕は、四方八方から剣の攻撃を受ける。
でも、もう大丈夫だ。彼女は結界の中。
後はきっとこの国の王が彼女を守ってくれる。
彼女を泣かせたら、許さないからな……
自分の国を取り戻した彼女は、石碑をひとつ建てた。
『見えない勇者様へ』
そんな題から始まる言葉を刻んだ石碑を。
その石碑を見て、微笑んだのは誰だったのだろうか。
読んでくださってありがとうございます。
Dokuroっていうゲームやってたら思いついたので書きました。
これもそのうち長編で書いてみたい。