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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
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災難

 いつまでもこうしていても埒が明かない。

 分かってはいるけれど、何故か体が動かないのだ。冷たい廊下に座り込み、膝を抱えたままぼんやりと彼が消えた場所を見つめる。先程まで会話して抱きしめられて、頬を合わせたのに。あれは幻だったのか妄想だったのか。


「……江里口くん」


 一体何に見つかったんだろう。なんで消えたんだろう。何を隠して何を喋ろうとしたんだろう。疑問ばかりが浮かぶけど、答えなんて誰も返してくれない。何せ、彼は消えたんだから。

 胸元からお守りを出してジッと見つめる。今は何も私に知らせてはくれない。もしかしてお知らせ機能が無くなったのかもしれない……。そう考え付くとより心細くなった。


「江里口くん」


 もう一度彼の名前を呼ぶ、もちろん返事はない。

 いつも仕方無いなとばかりに話を聞いてくれたり、力を貸してくれたり助言をくれたりしてくれていたのに、いなくなってしまった。その事実をきちんと受け止めて、立ち上がらなくては。このままここでウジウジしていてもただ時間が経つだけで意味なんてない、だ。


「よっしゃ!」


 勢い良く立ち上がって自分のお尻を叩く。これからする事があるのだから、嘆いてばかりじゃ駄目だ。授業はもう始まっている、急いで私は教室へ戻ろう。

 焦る気持ちを抑え、普通に歩く。教室棟に入ると、トイレの前を通り、5組、4組と教室が並んでいる。1組がとても遠く、そして近いと感じた。1組の前に来ると、そっと扉を開く。静かで誰もいない。なぜなら1時限目は理科で、第一理科室に行かなければならないからだ。

 廊下に人の気配は無い、私は急いで江里口くんの机に行くとカバンを開いた。緊急時の事だと許して欲しい。教科書、ノート、筆記用具。カバンの中身を全部出したけど、特に手がかりに繋がるものは何も無かった。

 教科書もノートも軽く中身を確認したけれど、何も書いていない。筆記用具の中を見ても特に目立つものは何も無い。他の収納場所にあるかもしれないと、カバンの側面や中にあるチャックを開けていく。見つかったのは、一枚の写真だけ。


「これは……」


 それは一年生の時のオリエンテーリングの写真だ。みんなで作った夕飯を囲んで笑っている。

 私物はそれだけだった。他は何も無い。綺麗な教科書。黒板を写しただけのノート。必要最低限の筆記用具。


「そういえば、そうだったよね……」


 いつも何かを出してくれるときは、ポケットの中を色々探りながらだった。プレゼントした小物入れがここに無いのは使ってくれてるからだよね?

 今思えば、自分の事ばかりでなく江里口くんともっと普通に話をしたかった。今更な事を思いながら、丁寧に私は教科書をカバンへ片付けた。

 写真だけを引き抜いて。

 理科の準備をすると、第一理科室へと向かう。目の前で消えたなんて言えない。だから送ってきたと話して普通に授業を受けなければ。ハンカチで目元を拭い、教室を出た。

 理科室に着くと先生へ授業に遅れた旨を謝り、同じ班の人の場所へ行き、座った。


「保健室で休まなかったの?」


 村野さんがノートを開いて見せてくれる。


「ノートありがとう。うん、やっぱり授業を受けたくて」

「そうだよね。来週期末だなんて、憂鬱だわ」

「うん、わかる」


 気持ちを切り替えて授業に集中する。後で泣いてすっきりしよう。公私混同しない、今の私は公、公的な私になれ。ここは社内じゃなく客先だ、演じきれ。

 2時限目で江里口くんが学校にいない事が問題になり、3時限目ではクラス全員に行方を訊ねられ、4時限目では最後に会ったと思われる私が先生に呼び出された。期末テスト作成中の為、職員室の外で確認をとられる。


「江里口くんはどこへ行ったの?」


 イライラを隠さない担任から聞かれるも、私の答えは決まっていた。


「保健室の前まで一緒にいたんですが、私は授業に戻って欲しいといわれたので戻りました」

「保健の先生は見ていないそうよ」

「ですから、私は入らなかったので」

「本当に保健室へ行ったの?」

「はい」

「なら江里口くんはどこに行ったの?」


 『今度はイライラしている自分を抑えて優しく聞いてあげる先生』を見ると、若いな、と思ってしまう。そんな片鱗を見せて私を脅そうとしているのだろうか? 意味のない事を。


「わからないです。青い顔をしていたので、心配です」


 しおらしく話すと、鼻息荒く大きなため息を付く。そうですよね、担任ですから自分のクラスの生徒がいなくなるなんて監督不行届です。彼の荷物もあり、家にも戻っていない、そうなると誘拐の線でも出るかもしれません。


「知らないなら、そうはっきり言いなさい」


 不機嫌な矛先をこちらに向けないでください。


「知りません」


 ここは大人しく弱者を演じて授業に戻ろう。私ばかり責めていても進展ありませんので、ここら辺で終わらせて欲しい。


「もういいわ、授業に戻りなさい」

「はい」


 江里口くんが消えても、彼の存在は消えなかった。これは危険なことかもしれない。教室へ戻りながら、これからを考える。だってこのままじゃ誘拐事件になる可能性があるからだ。彼の住所はどこだろう。家族は? 彼の情報が全く無い。

 本当、私って友達ですらなかったのかも。だって彼のことを全く知らない。


「でも、戻ってくるって言った」


 なら信じよう、ちゃんと待ってるよ。そして今度こそ本当の友達になろうと思う。4時限目が終わり、給食が始まる。給食では机を班毎に集めて白いテーブルクロスを掛けるのだ。毎週ローテーションで選択していくんだけど。いつもより会話が少ない。それは江里口くんが消えたからだ。

 ぼんやりとご飯を食べていると、武智くんがおずおずと話してきた。


「江里口、本当にどこに行ったんだろうな」

「そうだね」

「先生が学校を探し回ったけどいなかったらしいね」

「家に帰ってたりしないかな」


村野さんも心配している。


「やっぱり私が行けばよかったね」


設楽さんが不満げに話す。保健委員なのについて行かなかった事を先生に責められたからだ。


「私がって言ったから……ごめんね」

「しょうがないわよ。もう」


 まるでお通夜のような給食を終えて、私は体育館へ向かった。これから遥ちゃんと楽しく水原くんを見学しなくてはならない。私はちゃんと笑えるだろうか。

 体育館の入り口で、遥ちゃんが待っていてくれた。冬真っ只中なのに、外でだ。


「遥ちゃん!」

「あ、花音ちゃん。来たんだね」


 両手を息で暖める彼女が痛々しくて、もう手を掴んで擦ってしまう。


「中に入ってなかったんだ、寒いでしょ!」

「うん、でも一緒に入りたかったから」


 ほんわか笑顔で言われると、キュンキュンして嬉しくなる。


「じゃ、早く入ろう! 期末前なんだから、風邪を引いちゃうよ」

「そうだね」


 重い体育館の扉を開き、中に入ると昼休みを楽しむ人たちがけっこういた。風が無い分まだマシだけど、やっぱり寒い。


「えっと、水原くんはどこだっけ」

「しぃいい、花音ちゃん声が大きいよ」


 遥ちゃんが恥かしそうに私の袖を掴む。


「大丈夫だって、プレイに夢中なら案外聞こえないって」

「でも、でも」

「ほらほら、もっと近くに行こう」

「驚かれちゃうよ」

「私が興味を持ってるからでいいじゃない、気にしない気にしない」


 私の腕に縋る彼女と一緒に、体育館の壁側を歩いていく。ステージ近くに水原くんがいるからだ。


「あれ?一人?」


 バレー部員が何人かいると思っていたのだけれど、いたのは彼1人だった。


「多分来週から期末だから……」

「そっか。でも頑張るね」


 水原くんは1人で練習していた。トスだろうな、あれは……ずっと真上に飛ばし続けている。延々としているが痛くないのかな? そんな彼を遥ちゃんはジッと見ている。本気で好きなんだろうな、なんだか羨ましいかも。私の袖を握っていた手は、胸の前に組まれている。今話しかけても聞こえないだろう。


「遥ちゃん、座って見ようよ」

「ウン……」


 私だけ座ってみる。彼女は座らない。ほらね、やっぱり聞こえてない。ここまでくると重症かも。立つのもなんなので、そのまま座っているとノックされた。体育館には下の方に窓があって外から丸見えなんだった。振り返るとそこには彼がいた。


「や、明智くん」


 窓を開けて挨拶する。……開けなければ今すぐここに来そうな気がしたので。


「伊賀崎、体育館で何をしているんだ?」

「それは」


 水原くんへ視線を戻すと、彼の側には折りたたみ椅子が置いてあった。バスケットボールやバレーボールも。あれって危なくない? 立ち上がろうとしたら、手首を掴まれた。


「どうした」

「ごめん、ちょっと」


 明智くんには珍しく、しっかり掴まれていなかったのでそっと離れる。そしてボールに夢中の水原くんの側へと移動した。折りたたみ椅子がなぜこんな所にあるんでしょうかね? きちんと片付けしないと先生に怒られませんか?


「確かステージの下が収納場所だよね」


 折りたたみ椅子を畳むと、ステージの下の取っ手を引っ張る。ゴロゴロと重そうな音がして引き出しの様に開く。3つ引き出しがあるけど、もうここに入れてしまおう。余裕のありそうな隙間に椅子を押し入れる。


「よっこいせ」

「伊賀崎!」

「あ」


 衝撃が背中に掛かる。これはヤバイかも。そう思うのにどうして体が動かないのだろうか。瞬間そんな事を考えたのだけれど、そのまま折りたたみ椅子の海に飛び込み、体をしたたか打ちつけた。


「っ……」

「わ、ごめん、大丈夫?」

「たたたた! いい、自分で立ち上がれるから、触らないで」


 私を助けるために左肩を掴んだんだろうけど、先週の傷が癒えていない場所なだけに情けない声を上げてしまった。


「でも」

「いいから、自分で起きれるよ」

「花音ちゃん、しっかりして」

「大丈夫だって」


 ゆっくりと上半身を起こすと、体が悲鳴を上げていた。めちゃくちゃ痛い。これは痛いぞ……じくじくする。折りたたみ椅子の収納場所から体を離すと、その場に座り込んだ。


「花音ちゃんっ」


 遥ちゃんの心配そうな声に応えたいけど、今は無理。静かに体の痛みが治まるのを待つ。骨は折れていないはず、指先の感覚も足の感覚もある。


「一条の友達か?」

「あ、うん、1組の花音ちゃんなの」

「俺、先生呼んでくるよ」


 水原くんの声に、ストップを掛けた。ちょっと今、先生と話したくない。


「いい、大丈夫」

「でも……」

「ほら、先週階段から落ちたから、その傷が痛いの」


 二人に大丈夫だと知らせるよう、にっこりと笑う。


「でも危ないから、そのステージ、元に戻してくれるかな?」

「あ、ああ」


 水原くんが収納場所を閉めていると、やっぱり彼が来た。


「伊賀崎」

「なに? 明智くん」


 彼にも笑って見せた。大丈夫です、私は健康ですよー。


「そうだ、水原くん」

「え」

「背中ぶつけたでしょ」

「うん。俺がぶつかったから」

「違う」

「でもぶつかったから」

「今日病院に行ってね」

「へ?」

「今、肩痛いでしょ」

「君の方が痛そうだよ」

「じゃ痛いんだ」

「君がクッションになってくれたから、そんなには」

「駄目、絶対見てもらって? 痛みが引かなかったら、危ないよ」

「それは君の方が」

「私は病院に通っているもの。だから大丈夫」

「……俺は最近病院で検査したよ」

「今怪我したのに前日行った病院で何がわかるのよ」

「う」

「体を大事にしないと、スポーツ続けられないよ?」

「花音ちゃん」

「ほら、ファンだって心配してる」

「え、やだ、そんな」

「この先スポーツを本格的に続けたいなら絶対病院に行って見てもらって」

「たいした怪我じゃないのに」

「プロの選手なら些細な怪我でも病院へ行くわ。男子一生の仕事にしたいんなら、行って!」


 言葉が荒くなってしまったけど、これがバレー人生を終わりにさせてしまう怪我に繋がったら、全てに申し訳ない。


「お願い。深刻な怪我になったら私、一生辛い」

「分かった……」


 彼はそう告げると、バレーボールを片付け始めた。


「遥ちゃん、手伝ってあげなよ。彼も体を打ちつけたんだ」

「! ……うん」


 頷くと彼の後を追っていく。そこで一息ついた。すると、上から声が降ってくる。


「満足か?」


 座り込んでいる私には、立っている明智くんが高すぎて首が疲れそう。上を向いたけど、すぐに床に視線を戻す。


「ええ。満足よ」


 でも椅子にぶつかるのと、私と一緒に倒れるのってどちらが怪我として酷くないかな? もしかして余計な事をしてしまったのだろうか? 考え込んでいると、大きな手が私に迫っていた。


「ちょ、ちょっとストップ!」


 片膝をついた明智くんが私に手を伸ばそうとしていたので、少し後ろへ体を背けて彼の手を拒否する。


「どうした」

「手を貸してくれるのは嬉しいけど」

「嬉しいけど、なんだ」


 好意や気遣いは嬉しいけど、力が強すぎて痛いのだ。今はかなり無理をしているので、出来ればそっとしておいてほしい。


「えーっとね、そのね」

「なんだ」


 じわじわと手が近づいてくる。


「その、きっと私の腕を掴んで持ち上げようとしているよね?」

「いけないか?」


 やっぱりそうですか! 毎回そうでしたもんね。苦笑していると、何か問題でもと首を傾げられた。問題ありだよ。


「気持ちは嬉しいけど、痛いのよ」

「痛い?」

「腕だけで持ち上げられると、かなり腕が痛いの」

「痛かったのか?」

「は、は……うん」


 彼の手が止まり、戸惑うように引っ込む。良かった。今あれをやられたら、確実に叫び声をあげそうだから助かる。


「ならば腕でなければいいんだな?」

「へ」


 両脇の下に手を入れて持ち上げられそうになる。


「いた、いたたったた、それも痛い」

「そ、そうか?」


 明智くんが急いで私を床に降ろした。


「大丈夫だよ、痛みって結構時間と共に減るから。もうしばらく」


 そう告げるも、彼がそっと寄り添ってきた。


「な、何を」


 私に覆いかぶさるのではないかと驚いていたら、そのまま抱き上げられた。


「ちょ、待って、これは」

「動くな。力が入ってしまう」

「1人で歩けるから」

「すぐに歩かないお前が悪い」


 自分より体温が高い、これはカイロ代わりと思うべき?


「か、花音ちゃん」


 ボールを片付けてきたらしく、遥ちゃんが戻ってきた。


「明智すごいな」

「水原、体育館の扉を開けてくれ。保健室へ行きたい」

「分かった」

「花音ちゃん大丈夫?」

「ちょっと大丈夫じゃない……」

「なら急ごう」


 明智くん、明智くん、君は気付いてないのかい? 周りの視線に。


「ひーん」

「大丈夫か、伊賀崎?」

「いろんな意味で辛い」

「無理をするからだ」


 体育館の扉を開けると中庭があり、そこに面するように保健室がある。


「こんな事なら江里口を探さず、お前の側にいればよかった」

「え」


 探していたんだ、彼は。話すべきなのかな、目の前から消えた話を。


「開けたぞ」

「助かる」


 保健室のある棟の扉を水原くんが開いてくれた。すぐに入り込むと、そこに保健室がある。今度は先に着ていた遥ちゃんが扉を開く。


「あ。先生がいない」

「じゃ、俺呼んでくる」

「頼む」


 保健室の中に入ると、誰もいなかった。珍しい、普通先生がいないなら鍵が掛かっているのに。


「痛かったらすぐに言え」

「う、ん」


 明智くんがソファーの上にゆっくり下ろしてくれた。そこまで痛くない。


「ごめん、ありがとう」

「いや。あの時、伊賀崎の腕をしっかり掴んでいれば」

「そしたら水原くんが怪我してただろうね」

「お前分かって……」

「いや、ごめん、忘れて」


 失言してしまいそうだ。ここは沈黙を貫こう。


「あの、私も先生を探してくるね?」

「え、ちょっと」


 遥ちゃんが笑顔で保健室の扉を閉めた。沈黙撤回、明智くんと二人きりにしないで。彼女へ伸ばした手が空しく行き所を失う。


「何を考えている?」


 私の隣に座ると、明智くんが威圧してきた。説教タイム入るの?勘弁してよ、私病人なのに。


「ごめん、ごめんって。お父さん、ごめんなさい」

「お父さん?」

「違った、明智くんごめんなさい」


 彼は私の手を掴むと、隅々まで見たり指を曲げたりと確認を始める。なすがままになっていたけど、腕をつかまれたとき、痛みで声が出てしまった。


「打ち身だけか……?」

「そうだよ。後は湿布だけで大丈夫よ」


 痛むけれど、両腕で元気だポーズを取ると、制服の上着の裾を掴まれる。


「これはどういう事だ」

「え」


 制服の上着を捲られ、中に着ているシャツも捲りあげられた。いきなりで何も対処できなかったけど、これってどうよ。


「この怪我はなんだ!」

「その……」


 お腹が外気に晒されて、寒い。


「これは打ち身だよ」

「制服が新しい。急に成長したわけじゃないのに新品なのは何故だ」


 どうしてそこに気が付くかな?


「新しくないよ。大事に着てるんだから」

「違うな。ここの裾に傷が少しあったはずだ。だがそれが無い」

「え、憶えてるの?」

「ああ、憶えている」


 なんて記憶力のいい! でもそんなところにほつれなんてあったっけ?


「それよりもこのガーゼの下だ。なんの傷だ」

「それは、少し怪我して」

「襲われたときの怪我か?」

「……ハイ」


 彼の手がガーゼに触れようとしたとき、ストップが掛かる。保健の先生である吉松先生が入り口に立っていた。


「何をしてるの?」

「伊賀崎の怪我の具合を見ていました」


 明智くんが動じる事無く話す。


「怪我は私が見るからあなたはそろそろ教室へ戻りなさい」

「わかりました。伊賀崎、またあとでな」

「……」


 無言で返す私を許してください。


「花音ちゃん、今日はもう部活無いから一緒に帰りましょうね」

「伊賀崎さん、すみませんでした」


 先生を呼んでくれた水原くんと遥ちゃんも一緒に退室して行く。扉が閉まると先生がため息を付く。


「満身創痍ね」

「すみません」

「一先ずは痛いところを教えてもらおうかな」


 一年生の時と変わらない笑顔を向けられ、私は傷を見せるかどうか悩んでしまった。階段から落ちたと言う傷をどうやって誤魔化せばいいんでしょうか?



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